世界で最も人気があり売れている時計ブランド「ロレックス(ROLEX)」が12月1日、時計業界を驚かせる歴史的な重大発表を行った。認定中古プログラムを導入し、1905年の創業以来これまで関与してこなかった中古時計ビジネスに参入したのだ。同時にロレックス本社ともっとも関係が親密で、スイスを訪れる日本の時計愛好家にはおなじみの老舗時計販売店「ブヘラ(BUCHERER)」が、地元スイスを含めヨーロッパ6カ国(ドイツとオーストリア、フランス、デンマーク、イギリス)で展開するブティックで、3年以上前に販売され、「ロレックス」の正規アフターサービスを受けてメンテナンスされ、2年間の国際保証が付いた認定中古(Certified Pre-Owned、以下CPOと略す)プログラムに基づく「ロレックス」の時計の販売を開始した。なお「3年以上前に販売されたモデル」という条件は、「購入後は2年間は転売禁止」という販売ルールに基づいて決められたものだろう。
認定中古ウオッチは認定中古車同様に、メーカー自身が純正の整備を行って新品同様の状態に戻し、その品質を一定期間保証する中古時計。超高級スポーツウオッチブランド「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」を筆頭に、需要と供給のギャップが大きい時計ブランドがこのプログラム(システム)を導入し始めている。SDGsへの取り組みにもなるため、導入を秘かに検討している高級時計ブランドも少なくない。
だが人気も売り上げも世界No.1の「ロレックス」がいきなり導入したことに、ここ数年、新品が供給不足なこともあり価格が高騰する一方の中古の「ロレックス」を主な商材として史上空前の利益を上げてきた中古時計業者たちはショックを隠せない。「ロレックス」はこれまで中古市場に自ら関与したことはなかった。それだけに中古時計業者たちにとっていちばんの「飯の種」である中古「ロレックス」でこの先、これまでのような利益を上げることが難しくなると危惧しているのだ。
では、なぜ「ロレックス」は認定中古プログラムを導入したのか。それには2つの理由が考えられる。ひとつは2年間の国際保証付きのCPO「ロレックス」を「限りなく新品に近い中古」として位置付け、需要と供給の大きなギャップを埋め、市場のニーズを満たすため。そしてもうひとつの理由が、まさに中古時計販売業者が危惧するように、品質や値付けに問題・疑問のある中古「ロレックス」ビジネスの現状を参入することで改善し、ブランドのイメージや価値を守るためだ。
需要過多と問題や疑問のある中古ビジネスで、「ロレックス」は常に「いわれのない中傷」を受けてきた。「『ロレックス』は意図的に生産数を少なくしている」という根拠のないデマがネットで拡散されたり、「毎日正規販売店に通えば購入しやすい」という噂を聞いて“「ロレックス」マラソン”を行う人々が出現したり。人気の新品モデルは「転売ヤー」の標的になって異常な高値で転売され、それを知った投機目的の購入者が増えて購入はさらに難しくなり、中古モデルの価格が異常な高値になるなど、好ましくない状況が続いてきた。
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