バケットハットやバラクラバとヒットが続いた顔周りの“ネクスト”アイテムに、もふもふのファーハットが急浮上してきました。90年代リバイバルの流れで、イギリスバンド、ジャミロクワイ(Jamiroquai)風のトール系ハットも復活。ボリューミーなハットは、抜群の小顔効果を発揮してくれます。ファーの風合いが愛らしさや朗らかなムードを印象付けてくれるのも、ファーハットならではのメリットです。
例えば「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」は、2022-23年秋冬コレクションでジャミロクワイ流ファッションを“リミックス”。メキシコのエスニック衣装とのマリアージュを提案しました。ファー特有のぬくもりはもちろん、重たくなりがちな真冬のコーディネートに華やかさが加わりました。今回は、さまざまなブランドの秋冬ルックから、ファーハットのスタイリングを読み解いていきます。
ドレッシーなスタイルに“ずれ感”を投入
人気が続くバケットハットやキャスケットはカジュアルな印象を持たれがちですが、ラグジュアリーブランドがファーハットで相次いで提案しているのは、アッパーな装いへの“1点投入”です。ドレッシーなウエアとの適度な“ずれ感”が、サプライズを呼び込みます。
「ヴェルサーチェ(VERSACE)」はピスタチオカラーのファーハットを、ニットのセットアップに合わせました。ほっそりしたIラインシルエットの優雅な装いに、もふもふしたファーハットをオン。クラウンが高いハットが視線を上に誘うので、全体をいっそう縦長に見せてくれます。
中央がこんもり盛り上がったシルエットがファーハットの従来の基本形でしたが、近ごろはそれとは異なるデザインも登場しています。中央部分の高さが低く、すげがさのようなハットはエスニックなムードを漂わせます。上品なドレス姿にムードチェンジを仕掛けるスタイリングに効果的です。2枚目の写真「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」は、パウダーピンクのワンピースにパープルのファーハットをプラス。クラウンが低く、笠が張り出した形のおかげで、顔がすっきり映る仕掛け。パテントレザーのサイハイブーツでつややかさも加え、センシュアルな装いに仕上げました。
視線はずしで肌見せをカムフラージュ
スタイリング面で、使い道やメリットが多いファーハット。視線を誘い込むので、別のスポットから目をそらす効果も期待できます。例えば、大胆な肌見せとの組み合わせは、おすすめしたい上手なファーハットの使い方。ヌーディーな印象を薄めるのに役立ちます。
顔周りを囲むような大きめのファーハットを迎えたのは、「ユハン ワン(YUHAN WANG)」。白のファーで愛らしいムードに。正面に入った深いスリットから生足がしっかりのぞく装いですが、主張の強いハットが視線を呼び込むカムフラージュ効果を発揮。ハットのボリュームが生きて、全体がコンパクトに見えるのも、このスタイリングのいいところです。
“Y2K”のトレンドが衰えを見せず、肌見せも勢いが続いています。服の面積が小さくなる分、別のスポットでインパクトを補わないと、肌が目立ち過ぎる心配も。特大のファーハットは、その点で格好のリリーフ役です。
2枚目の写真「アンブッシュ(AMBUSH)」のパンツルックは、デコルテとウエストでダブルの肌見せを仕掛けました。ほぼ水着スタイルに近い上半身のバランスを、巨大なファーハットが調節。ブラックで統一してゴージャスさを高めました。毛足が長いハットの異素材感が、装いに奥行きをもたらしています。
まったり“チル”なコーデに最適
リッチでゴージャスな雰囲気が持ち味のファーハットですが、別のテイストも用意されています。ファーのバケットハットはかさばりすぎず、マルチに操れる重宝アイテム。つばがフラットなマウンテンハットの形はジェンダーレスに取り入れやすく、着こなすムードとの相性を選びません。
「ニューエラ(NEW ERA)」は、ピンクのオーバーサイズジャケットにベージュのファーハットをオン。バケットハットのシルエットが、チルな雰囲気に。スエットパンツと色を合わせて、穏やかな見え具合に整いました。
真冬に多くなるダークトーンの装いに、ふんわりしたファーハットを差し色に迎えれば、全体のムードを軽やかに変えられます。かぶるだけのお手軽な“後付け”で済むのは、帽子ならではのよさです。
2枚目の写真「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」は、レザー仕立てのロングジレを主役に、モノトーンコーデでタフなムードを披露しました。マルチカラーのファーハットを盛り込んで、ゆるめのリラックスしたウエアにアクセントを添えています。差し色のツールとしても、ファーハットは目立つポジションなだけに効果は絶大。冬ルックのムードチェンジャーを任せられます。
ファーハットは、ボリュームやもふもふの質感に加え、シルエットや色の選択肢も多いので、着こなしのバリエーションを広げやすいアイテムです。寒さが厳しくなるこれからの季節、自分好みの装いに役立ててみませんか。