お正月の風物詩である箱根駅伝は、昨今選手が履くランニングシューズも話題を集めています。「WWDJAPAN」スタッフの、ごくたまに走る程度なのにシューズの知識は豊富なスポーツ担当の美濃島匡記者と、ランニング・コミュニティーに所属し、ロードから山道までを走る津田一馬ソーシャルエディターの二人も、ランニングシューズは常に注目するアイテム。そこで、今回は若手記者に最近手に入れたランニングシューズを持ち寄ってもらいました。スペック重視の美濃島記者と、デザインの良さは譲れない津田ソーシャルエディターの観点の違いにも注目です。
美濃島:「ナイキ」の“エア ズーム アルファフライ ネクスト % 2”
美濃島:「ナイキ(NIKE)」のカーボン入りシューズはぐんぐんと前に進み、自分で走っている感覚がない。かつてランニングシューズは薄ければ薄いほどいいと言われていたけど、2017、8年頃に初代“ヴェイパーフライ(VAPERFLY)”を発表して、プレートを包み込む厚いフォームを入れた厚底シューズが市場を席巻し始めた。今では厚底シューズを履いた選手が記録を塗り替えまくっています。
津田:これまでのランニングシューズ界の常識を覆して、各社が厚底シューズで競争するきっかけを作ったのは「ナイキ」ですよね。僕は初代のモデルしか履いたことないですけど、例えて言うなら電動自転車のように勝手に脚が進むんですよね。技術はすごいけれど、脚が鍛えられていないと逆に疲れてしまうし、トレーニングにならない点は人によってはネックになるかもしれません。
美濃島:“エア ズーム アルファフライ ネクスト % 2(NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT% 2)”は“ヴェイパーフライ”から派生したシリーズの最新作。勝手に足が進む感覚は変わらずあるけど、以前のモデルよりはコントロールがしやすくなっていて、津田さんが感じたデメリットもずいぶん改善されていますよ。アッパーはエンジニアードメッシュという耐久性の高いニットアッパーで、負担がかかる箇所は編み方を変化させるなど、長く使える工夫もあります。ただ、ソックスタイプでタイトな作りなので、サイズ選びには注意かも。箱根駅伝に向けた限定の“駅伝パック(EKIDEN PACK)”はトンボに着想した緑っぽいカラーが特徴で“ヴェイパー フライ”と併せて箱根駅伝に出場する選手には人気のはずです。
津田:「ナイキ」は毎年、箱根駅伝のタイミングに合わせてかっこいいビジュアルも出していますよね。このシューズはデザインもいい。普段、身につけるものは完全に黒志向の美濃島さんが白を選ぶのも珍しい。
美濃島:普段は黒ばかり着ているし、走る時のウエアも黒なので、ランニングシューズくらいは黒以外を選びたい気持ちがあって(笑)。このモデルはアッパーが白だけど、ソールは少しクリーム色っぽくなっていて、エアポケットの赤いカラーも効いています。今日持ってきた中で一番デザインが気に入っているシューズです。
津田:「ナイキ」“エア ズーム ペガサス 39 By You”
津田:「ナイキ」の“エア ズーム ペガサス(AIR ZOOM PEGASUS)“は毎年アップデートされていて、これは39代目のモデル。色や素材を自分でカスタムできるサービス“ナイキ バイ ユー(NIKE BY YOU)”で作りました。「ナイキ」のシューズはブラックソールのものが少ないので、色合いにこだわってオレンジとブラックで作ってみました。
近年、“ナイキ バイ ユー”でトグルタイプを出し始めたので、試しに採用してみたら、シューレースがほどけるストレスもないし、安定感もアップする。今度から選べるなら全てトグルタイプにしようと思ったくらい気に入っていますね。黒ベースに黒字なので分かりづらいですが、僕が所属しているランチームの名前が入っているのが隠れこだわりポイントです。
美濃島:ひもが細いのもスタイリッシュでいいですね。ひもの先にもひっかけられるフックがついていて、ピラピラしませんね。
津田:機能的には普段のジョギングに適したモデルだけど、前回より安定感が増して初心者でも使いやすくなっています。地面を踏んで走っている感覚も損なわれていないのもいい。ポイントの練習やある程度の負荷をかけたランニングなど、エリートランナーのレース以外ならどんなシーンにもマッチします。初心者にとっても使いやすく、エリートランナーからも好評みたいですね。「ナイキ」で今出ている中で、一番人を選ばないシューズかもしれません。
美濃島:「アディダス」“アディゼロ アディオス プロ3”
美濃島:「アディダス(ADIDAS)」の“アディゼロ アディオス プロ3(ADIZERO ADIOS PRO 3)”のポイントは、カーボンがプレートじゃなくて5本指に沿っているところ。「より足に連動する」とうたっている通り、走っていても足とシューズが有機的に連携している感覚があるんですよね。あと、かかと部分が折り返せるところが地味にいいですね。ここが当たると本当に靴擦れするので。
津田:これはいいですね。エリートランナーの人はソックスさえ邪魔だとくるぶし丈のソックスを選ぶ人も多いですし、結構気になりますもんね。僕は「アディダス」のランニングシューズを人生で一回も履いたことがないので、履いてみたくなりました。
美濃島:去年の箱根駅伝で、一番履いている人数が多かったのが「ナイキ」で、その次が「アディダス」なんです。これと、もう一つ“アディゼロ タクミ セン(ADIZERO TAKUMI SEN)”というシリーズが人気ですね。
津田:デザインも渋くてかっこいい。カーボンをあえて見せているデザインも面白いですね。しかも「アディダス」だから3本線という、遊びを効かせるデザインがしゃれていますね。
美濃島:デザイン面では「ナイキ」が圧倒的だと言わることもありますが、これもかっこいいですよね。私服だと蛍光色にも抵抗があるけど、ランニングシューズだとかっこよく履けるというのも醍醐味です。
津田「サロモン」“パルサー トレイル プロ フォー シエル”
津田:これは自然の中を走るためのトレイルランニングシューズで、「サロモン(SALOMON)」と「シエル(CIELE)」というカナダのエクストリームスポーツ向けのキャップを作っているブランドとのコラボですね。このモデルはトレイルランニングシューズにしてはかなりデザイン性が高くて、私服で履いてもいいなと思って買いました。トレイルランニングシューズではかなり珍しく、発売した日に完売したお店もあったらしいですよ。ファッション好きな身としては山やスポーツのシーンでもおしゃれをサボりたくないので、キャップと色を合わせてこれを履いています。
機能性でいうと、初心者とエリートランナーの中間の層に向けたモデルだと思います。これはタンがアッパーと一体化してソックス状になっているタイプで足首にピッタリフィットするのでサポート感もあり、推進力も重視しているバランスのいいモデルなので、そこまでガチ勢ではない僕は重宝していますね。さらに「サロモン」のひもは絞るタイプで、ひもをシュータンに収納できるようになっています。走っている時にシューレースが気にならないので快適ですね。
美濃島:「シエル」はキャップを結構見かけます。トレイルランニングシューズのソールもこれくらい厚いのが多いですか?
津田:これは厚底な方ですね。しっかりとしたクッションと適度な弾みを感じることができます。最近はトレイルランニングシューズも厚底のものが増えてきている気がしますが、石や根っこなどから足底を守ってくれる反面、着地が不安定になるので膝や足首に負荷がかかりやすくなるという点もありますね。
美濃島:トレイルとロードでシューズを選ぶ時にチェックするポイントは変わるんですか?
津田:僕はフルマラソンを走らないので、ロードシューズは履いていて不快感がなければOK。基本的には機能よりも見た目のかっこよさを重視しちゃいます。一方で、トレイルシューズは雨でぬかるんだ道でも滑ってしまうと怪我につながるので、グリップ力を重視しますね。
美濃島:「ニューバランス」“フューエルセル レベル V3”
美濃島:これは“フューエルセル(FUEL CELL)”という高反発のミッドソール素材を使ったシリーズで、カーボンプレートが入っていないモデル。だけど反発力が高く、安定感もあるので、初心者でも走りやすいはず。アウトソールはかなりフラットに見えるけど、意外とグリップ力もある。ただ、ソールがかなり柔らかいから、クッション性がある一方で、走っていて沈む感覚があるんですよね。
津田:確かにソールはかなり柔らかいですね。
美濃島:フカフカする履き心地は、好みによって印象が分かれるかも。個人的には、この一つ前の“フューエルセル レベル ブイ2 ”の方が、ソールが薄く接地感覚があったので好みでした。でも安定感はこっちの方があります。
津田:デザインは昔の「アシックス(ASICS)」みたいですね。
美濃島:レトロなカラーリングが愛くるしいですよね。
津田:「トポ アスレティック」“テラベンチャー3”
津田:これは「トポ アスレティック(TOPO ATHLETIC、以下トポ)」というアメリカのブランドのトレイルランニングシューズ“テラベンチャー3(TERRAVENTURE 3)”です。「トポ」はトレイルランニングシューズを中心に有名になってきたブランドで、日本に上陸したのは3年くらい前。最近はレースで履いている人も増えてきているので、注目のブランドです。
美濃島:どんなブランドなのですか?
津田:「トポ」は裸足に近い履き心地のシューズを展開しているブランドで、つま先からかかとまでの高低差が少ないロードロップな作りになっています。僕はトレイルランニングシューズなら、ロードロップなものが好き。道が平坦じゃないから足裏感覚が分かった方が安全だし、山を走っている感があって楽しいんですよ。あと、幅が広くて甲が高めなので日本人の足に合うと思います。僕は長距離を走ると足が痛くなることが多いのですが、「トポ」なら山道を40キロくらい走っても、全く痛くならない。
美濃島:デザインはミリタリーっぽい雰囲気もあって、私服にも合いそうですね。
津田:そうなんです。高尾山に走りに行く時は、シューズ2足を持って行くのが面倒なので、私服に合わせてそのまま行くこともあります。軍パンとも相性がいいんですよ。他のシューズもミニマムなデザインで、アッパーは単色でロゴの色をアクセントにしたものが多いですね。
美濃島:ソールはビブラム(VIBRAM)なんですね!引かれます。
津田:ビブラム製ソールは「ゴアテックス(GORE-TEX)」みたいなブランド感がありますよね。「トポ」は基本ビブラム製の“メガグリップ(MEGAGRIP)”を使っているので、濡れた岩の上を走ってもグリップが強くて滑らないし、丈夫です。僕は私服で履いているブーツにも、ビブラム製ソールで裏張りしています。
美濃島:「ミズノ」“ウエーブ ライダー 25”
美濃島:「ミズノ(MIZUNO)」は、一般ランナーの間で根強い人気があります。「ミズノ」“ウエーブ ライダー 25”は独自のウェーブ構造に形成した樹脂素材を使っていて、推進力がありながら誰でも履きやすいモデルだと思います。クッション性もほどよく、地面を感じながら走れるので、安心感もありますね。あと、日本のメーカーだからやっぱりフィット感がいい。毎日履くならこういうモデルと思わせてくれます。
津田:僕も、“ウエーブ ライダー 10”をライフスタイルシューズとして復刻したものを持っています。“ウェーブ ライダー 25”はアッパーのクッション感も包み込まれる感じがあっていいですね。話がそれるけど、やっぱりモデルごとに履き心地が全然違うから、“目隠し効きランニングシューズ”企画とかやったら面白そう。アウトソールはカモ柄になっているんですね。
美濃島:これは25周年モデルということでデザインが少し入っているけど、それでもアウトソールくらい。あくまでスポーツというスタンスも「ミズノ」らしいです。控えめだけど玄人好みな感じで、地に足つけたシューズですね。ランニングだけに。
津田:……う、うまい!