イギリスでは、1929年に誕生して83年に操業を停止したバタシー発電所が、10年間の修復作業を経て2022年に複合商業施設として生まれ変わった。テムズ川の南に位置する、ハイエンドとハイストリートをミックスした新たなショッピングスポットの誕生だ。アール・デコ様式を取り入れた1950年代のタービンホールの中に100のショップやバー、レストランなどが入っている。百貨店は入らず、店舗をカテゴリーごとに分類もしていない。あらゆるニーズに対応できるよう、さまざまな価格帯の店舗を招いた。
施設には今後、254戸のレジデンスやオフィススペース、2つのスクリーンを持つ映画館も入る予定だ。施設主は、マレーシアの投資持株会社のサイム・ダービー(Sime Darby Bhd)とエスピー・セテイア(S P Setia Bhd)、そして同国最大の従業員積立基金制度を有するEPFの3社からなるコンソーシアム。3社は90億ポンド(1兆4000億円)を費やし、東京ドーム40個分以上の施設を再開発した。
最大のテナントは、「アップル(APPLE)」。このほか施設のグランドオープンには約60のショップが入居した。「ユニクロ(UNIQLO)」や「ザラ(ZARA)」が多くのスペースを占め、ナイキ「(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」「イソップ(AESOP)」「ル ラボ(LE LABO)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「マルベリー(MULBERRY)」「ルルレモン(LELELEMON)」のほか、地元の個人経営の店も40以上が子ども服やホームウエア、アート作品などを販売する。これらのショップは、大小の店舗が隣接。レストランも同様で、高級店とリーズナブルな店とが混在しており、来年にはフードホールがオープン予定だ。
同発電所は、最盛期にはロンドンの石炭火力発電の5分の1を担い、現在もその名を残した地下鉄の駅がある。最終的には、2万5千人もの人々が施設を利用する見込みだ。ロンドン中心部では最大級の商業施設で、200億ポンド(3兆1200億円)の経済インパクトを生み出すと推定されている。
15年に始まった計画は、イギリスのEU離脱は大きな問題にならなかったものの、コロナ禍による打撃は大きかった。それでも20年から21年にかけて膨大な数の契約を結んだという。ロックダウンの期間は、人々がバタシー周辺を再訪していたという。