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ユニクロ岡﨑CFOが賃金アップの狙いを語る 「好循環を作れば、報酬はもっと上げられる」

 「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」「セオリー(THEORY)」などを手掛けるファーストリテイリングの岡﨑健取締役グループ上席執行役員最高財務責任者(CFO)が2022年9〜11月期決算説明会に登壇し、先日発表した賃金引上げについて、その背景や狙いを語った。(以下「 」内は全て岡﨑取締役の発言)

 「ファーストリテイリングは今期(23年8月期)、中国大陸の業績が(コロナ禍で)一時的に落ち込んだ中でも、東南アジア、北米、ヨーロッパと収益の柱が多様化し、成果が着実に表れてきている。これらの収益の柱をさらに強固にするため、グローバルヘッドクオーターの変革と出店を加速する。既に米国のグローバルヘッドクオーターは商品作りの機能を中心に稼働しており、そこで開発した商品を23年秋冬から本格的に展開していく。出店や改装の面では、秋をめどにグローバル旗艦店であるパリ・オペラ店をリニューアルオープンし、欧州の主要都市を中心に続々と出店していく。北米も来期は出店数がさらに増える計画だ」

 「こうした成長戦略を実行し、成果を出していくために、 人材育成や人材への投資も強化している。地域間での人材異動をさらに活発化させ、優秀な人材がグローバルで活躍できる機会を増やし、各国・各地域の経営幹部を担える人材を育成していく。また、世界水準での競争力と成長力を強化するため、世界各地で報酬テーブルの水準見直しを行ってきたが、日本についても報酬テーブルを今回大幅に改訂した。一人ひとりの報酬は、成長意欲と成果に応じて、数%から最大で40%上昇する。既に実施したパート・アルバイトの時給アップも含め、一連の報酬改訂により、日本の各事業とグローバルヘッドクオーターの人件費の総額は前年に比べて15%程度増加する見込みだ」

 「店舗・本部ともに世界で通用する働き方ができる人材に対し、成長できる機会を提供すると同時に、報酬で報いていく。これと同時に働き方が変化し、フラットで機動性が高い組織構造、全員がお客さま視点で課題を発見し、提起し合って、解決策を実行していける風土作りを進める。従業員一人ひとりの成長が企業の競争力の強化につながり、その結果としてさらに従業員に報いることができる企業経営を目指していきたい。この取り組みは、事業成長と経営効率の向上に大きなインパクトがあると考えており、一時的に人件費は上昇する見込みだが、早期に販売管理費率も改善させていきたいと考えている」

 アナリストやメディアからの質疑応答でも、報酬アップについての質問が相次いだ。それに対する岡崎取締役の回答は以下。

 「今回の人件費の投資の増加は2段階になっていて、1段階はまず店舗のパート・アルバイト社員の時給を上げること。これは既に第1四半期で実施し業績の中にも含んでいる。続いて、本部の社員や店舗にいる正社員の構想が固まったので発表した。経費率は多少悪化しているが、海外事業の好調もあって吸収できる。利益を出していけるため、業績予想を変更する必要はないと考えている」

 「社員皆が自分たちの能力を発揮しやすい環境を会社が作っていくことは非常に重要だ。そのために、店舗のオペレーション効率の改善に向けた投資も行ってきている。そこで生まれた時間をお客さまとの接点に使うことで、 売り上げを伸ばして、より価値に共鳴していいただけるような商売にし、共感していただき、さらに売り上を伸ばして生産性を上げていこうとしている。一人ひとりのスタッフのポテンシャルを最大に発揮し、売り上げを高め、効率を改善するための仕組みをずっと作ってきて、それが整ったところで報酬テーブルも変えた。会社の経費効率は大きく変わっていくだろう」

 「同時に、収益の柱を全世界で多様化し、グローバルに(各国・地域を)伸ばしていこうとしている。その際、東京の社員も各国に出張に行って、日本発のブランドとして日本で培ったノウハウをしっかりと伝えていかなければいけない。グローバルのメンバーにも東京に来てもらい、人材交流を進める。これを実行していくためには、グローバルに通用する形で社員を評価をして報いていくことが必要だ。この仕組みを整えないことには、グローバルに強化はしていけないと判断した」

 「(働き方の精度を高め)在庫を“適時・適量を適切な店舗に持つ”ことや、店舗のスタッフがしっかりお客さまに向き合い、商品の価値をお届けすることができれば、不必要な値引きは減り、過剰に在庫が積まれることもなくなる。それができる店舗は、運営効率も経費効率も非常に高い。在庫管理を個店単位、SKUベースで行い、必要なタイミングで必要なものを各店が持ち、お客さまにおすすめしていくことを徹底する。そのためには個店経営を追求するしかない。いわゆるチェーンストア的に全社一斉で本社がコントロールするのには限界がある。一つひとつの店舗がその地域のお客さまと向き合いながら、自分で考え、自店に必要だと思う商品を仕入れ、適切な売り場を作り、商品の良さをお客さまにしっかり伝える。こういう店になっていけば、利益率の改善なんていくらでもできる余地がある。本部の人間もそれをサポートするために仕事をしている。何よりも店舗のスタッフが主役で、彼らがそういう仕事ができるような動機付けをしていく」

 「同じ商品でも、それをどう着るかはお客さまによって違う。まずはスタッフが各商品の良さがどこなのか、素材や仕様についてもちゃんと理解していることが大切だ。デジタル販促やテレビCMなどを通し、さまざまなことをお客さまにお伝えしているが、まずはそのメッセージを店舗のスタッフが理解し、同じようにお客さまに伝えていくことが最低限としてできなければいけない。さらにレベルの高いスタッフは、お客さまの趣味や好みを察しておすすめする。彼らがそうした仕事に集中して時間を使える状況や環境を作っていかなければならない」

 「今回の賃金引き上げのポイントは、社員がグローバルに活躍し、グローバルに通用する世界基準の質の高い仕事をしていくということ。グローバルブランドとして、どこに行っても勝てるクオリティーの仕事をしていくということだ。店舗を出店している各国の報酬水準を横並びで常に見ていると、従来から母国市場である日本の水準がなかなか上げられていないという思いがあった。日本国内において世界水準の仕事をお願いしているのであれば、日本の報酬も世界水準にしていこうと考えた。ただし、今回の報酬テーブルの改訂で既に世界水準になったわけでも、世界トップになったわけでもない。まずはこれで社員皆に頑張ってもらって、売り上げを高め、利益も上げれば、もっともっと報酬は上げていける余地がある。その結果、世界水準になっていける。今回は日本の賃金を引き上げたが、他国でも同様に1年間で上げてきた。一旦これで売り上げ成長、利益向上に挑戦し、一人ひとりの生産性を高める。これがうまくいけばさらに報酬を上げることができる。そういった好循環を目指す。当然、離職率は下がるはずだし、下がらなければいけない。採用の応募者数も増えてほしいし、従業員の満足度ややりがいなどもしっかり見ていくと同時に、企業の業績の向上とのバランスを考慮しながら進めていきたい」

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