毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年1月16日号からの抜粋です)
本橋:円安や国際情勢不安もあり、ファッション業界で国内に製造を戻しているという声が聞こえてきていました。以前から日本のモノ作りに焦点を当てたいと思っていたので、いいタイミングだと思い特集を企画しました。
新関:取材では何が印象的でしたか?
本橋:TSIホールディングスの自社工場で働く21歳と24歳の縫製士が技能五輪の金賞と銅賞を取ったというので取材しました。下積みはそこそこに、もう一人でジャケットなどを縫っているそう。「クリエイティブでやりがいがある仕事だ」とすごく生き生きしていて、いい意味でびっくりしました。大手資本の工場では、若い芽を育てるための仕組み作りが進んでいます。
新関:「マメ クロゴウチ」など一部のブランドは産地や工場の人たちについて積極的に発信していますが、ブランド側がもっと裏側を語ってもいいですよね。
本橋:今回取材した「カネタ織物」は僕の実家の隣町の静岡県掛川市にあり、デザイナーズブランドからの依頼でイチから生地を作っています。ただ僕も存在を知ったのは最近でした。技術はすごいのに、発信下手なところは多いです。
新関:モノ作りの背景を、誰がどこで発信するかというのは大事ですよね。私は日本製の化粧品がどうやったら海外で売れるのかを、中国市場のマーケッターに取材したのですが、「“メード・イン・ジャパン”で売れるムードではない」とバッサリ。「高級志向のものが売れているから、“日本の良いもの”というポジションをブレずにキープすることが大事」と聞いて、納得しました。高品質であることは必須で、そこにメッセージや語れる開発ストーリーが必要なんですよね。
本橋:「いかに売るか」の発想は、ビューティ業界から学ぶところが大きいです。調べてみると、日本の繊維輸出はテキスタイルや糸が大半で、衣料品の割合が11%しかないんです。海外を目指すブランドを育てることも課題です。しかし、まずこの特集で、日本の産地や工場と手を携え、モノ作りを継承しようと奮闘するブランドがあることを伝えたい。同時に、若い人にモノを作る仕事に就くことにポジティブなイメージを持ってもらえたらうれしいです。