「ゼニア(ZEGNA)」は、2023-24年秋冬コレクションをミラノで現地時間1月16日に発表した。今季は前シーズンに発表した“オアジカシミヤコレクション(Oasi Cashmere Collection)”の第2章と位置付けた。同コレクションは、アトリエや紡績工場、羊毛牧場と本社を構えるイタリア北西部の自然保護区“オアジ・ゼニア”から命名した、「ブランドの未来を示すコレクション」だという。
アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)=アーティスティック ディレクターは、プレビューで、「今季のコレクションは“カシミアのオアシス(The Oasi of Cashmere)と名付けた」と語る。「カシミア繊維を織り、生地へと変貌させ、職人の卓越した技術を駆使して革新的なカシミアニットを制作した。新たなカシミア生地を生み出した物語が一つのコレクションとなり、会場でゲストはファブリック製造の過程の一部を目撃することになる」と続けた。
サルトリ=アーティスティック ディレクターの言葉通り、ショー会場となった巨大倉庫の中へ入ると、カシミア繊維が空気室で浮遊するインスタレーションを設置。これは、繊維と繊維の間のたくさんの小さな隙間に空気を含ませ、カシミアの保温性と柔軟性を最大限に引き出す、工場で行われる重要なプロセスを再現したものだ。インスタレーションのスペースを抜けると、会場内は漆黒に染まった空間。その中で、オーラルイエローやワインレッド、シェードの異なるグレーのカラーパレットで構成したコレクションが美しく映える。
シャツもベルトもカシミア
「カシミアをアウターへ適用させるというアイデア」が今季の出発点だという。ダブルフェイスのジャケットやコート、ジャガード織りのチェスターコート、モヘアとカシミアでファーのような質感に仕上げたコートや、幾何学的なモチーフをあしらったダウンジャケットまで、幅広いバリエーションでカシミアの新たな可能性を示した。
ボリュームのあるトラウザーとブーツに、ショート丈や直線的なラインのジャケットで描く、すっきりとしたシルエットに焦点を当てている。ベースとなるボトムスを一着備えたら、ミニマルなカーディガンやセーターのレイヤードで、自分なりのスタイリングを拡張させていく提案だ。その中には、シャツとボトムス、ベルトまでカシミアで作った、米カリフォルニア発ニットウエアブランド「ジ エルダー ステイツマン(The Elder Statesman)」とのコラボレーションアイテムもあった。コラボプロジェクトは、2月にパリで発表予定だという。
素材に焦点を当てている分、これまでのようなスポーティーで快活なアイテムは少なくなったが、シューズとバッグのキャッチーさは際立った。このカシミアの実験的な取り組みを通して、コレクションのバリエーションはさらに広がっていく期待感がある。カシミア繊維から始まった服づくりのイノベーションは、まだ序章に過ぎないのだから。