黒河内真衣子が手掛ける「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」は1月19日、東京・北青山に旗艦店をオープンする。ラグジュアリーブランドのショップが立ち並ぶ表参道からすぐの立地だが、1本路地を入るだけで青山店が入る建物の周辺はずいぶんと静か。建築家の柳原照弘や左官や植木の職人らと意見を出し合い、「一枚の生地を織り上げるように、素材を1つ1つ組み合わせて店を作っていった」と黒河内が話す空間は、ブランドの世界観や黒河内の美意識をじっくり体感できる場所になっている。
もともと住居だったというレンガの外壁の建物の1、2階がショップとなっており、面積は2フロアで約100平方メートル。1階はストックやスタッフルームとして使用し、売り場は2階だ。1階奥にある箱庭をガラス越しに眺めつつ階段を登ると、そこに広がっているのは黄みがかった白の空間。住居の名残もどことなく感じる店内は、壁やガラスで空間が仕切られていて、全景は見渡せない。
回遊するように店の中に迷い込む
内装を手掛けるにあたり、柳原が黒河内に最初に提案したのは巻き貝というコンセプト。「来店されたお客さまが回遊し、店に迷い込むといった感覚の、いい緊張感のある店を作りたかった」(黒河内)という。店の中央にあるガラスで仕切られた試着室は、リラックスできるよう広めの作りで、中からカーテンで目隠しできる。ラックや陳列棚にはケヤキを使用。数百年から数千年、地中や海中に埋まっていたという、“神代欅(じんだいけやき)”と呼ばれる木材を使用しており、独特の灰みがかった色合いがポイントだ。
産地の職人と組んで、伝統的な手仕事やクラフトといった要素をモダンに表現するのが「マメ クロゴウチ」の服作り。店作りの考え方も共通している。壁や天井、階段は、全てサンゴなどが蓄積した沖縄の石灰石の左官仕上げで、白い中にところどころ混じっているのは大分産の竹の破片だ。通常、漆喰にはワラを混ぜることが多いが、竹をインスピレーション源にした2023年春夏のパリでのランウエイショーに招待した左官職人から、ワラではなく竹を混ぜて、よりクリーンなムードに仕上げるという提案があったのだという。何度も試作を重ね、服を陳列したときに最も美しく見える漆喰の質感や色合いを追求した。
故郷の原風景を感じさせる空間
「職人さんたちと何度もキャッチボールを交わしながら、1つ1つ考えて店を作っていくことができた。その分、2022年内に完成予定だったはずのスケジュールが押してしまったけれど」と黒河内。コミュニケーションの中で職人たちに伝えたのは、具体的にどんな空間を作りたいかといったイメージだけでなく、「故郷の長野の原風景」だ。「長野で見て育った建物や窓には歪みがあり、都会のコンクリート建築のように真っ直ぐではなかったことや、土間や土壁に感じるノスタルジーを伝えた」。箱庭の植栽は、佐賀の植木職人と共に山に入って、長野の里山を思わせる木々を探したという。
20年3月に、世田谷・羽根木のアトリエそばに直営店をオープンしているが、コレクションライン、シーズンを超えて提案する黒一色の“マメ クロゴウチ ベーシックス”のライン、人気のバッグやアクセサリーといったブランドの全てがそろうのは青山店のみ。待望の旗艦店オープンに、開店前からSNSを中心にファンが盛り上がっている。
■「Mame Kurogouchi Aoyama」
場所:東京都港区北青山3-8-3
営業日:毎週木、金、土、日曜
営業時間:13〜20時