REPORT
「ラブ」を携え、新境地への第一歩を踏み出す
ファッション・ウイーク期間中にパリの主要百貨店やセレクトショップに足を運ぶと、必ずと言っていいほど「サカイ」が大きなフェースやコーナーで打ち出されている。世界からの期待が高まり続ける中で、阿部千登勢デザイナーは「ラブ」というメッセージを軽やかに表現した。
コレクションは、ブランドが得意とするオーセンティックウエアのハイブリッドスタイルを中心に構成。ランチコートやガンジャケット、ライダースなど、異なるフォームのアイテムを組み合わせたり、オーガンジーなどの素材でミリタリーウエアを仕立てたりすることで、新たな表情を見せることはもちろん、随所にベルトやドローコードを取り付け、シルエットで遊ぶ楽しみも用意した。また、これまではウエアに使用する柄を古着から抽出してきたが、新たな試みとして柄を一から制作。阿部デザイナーは「自分たちにとって新しい柄のあり方とは何かを考え、一から作ることにした」と語る。キーワードになった「ラブ ウィル セーブ ザ デイ」という言葉は、日本人カリグラファー、ミキタイプ(MIKITYPE)とのコラボで表現。例えば普通のレースがよく見るとそれぞれの文字を模していたり、ワッペンに「LOVE WILL」「SAVE THE DAY」の文字がのせられていたりと、さり気ない方法で登場した。
「大きなきっかけがあったわけではないけれど、デジタル化が進んでも、国が違っても結局大切なのは人と人の関係だと改めて思う。今回のカリグラフィーもその一つ。コレクション自体が『愛』を表現しているというよりは、そういった感覚をちりばめたシーズンになった。一つのやり方に固執せず、常にフレッシュな存在でありたい」と阿部デザイナー。大御所、若手問わず信じる人々と手を取り合い、「サカイ」は新たな境地を求め続けていく。