ビームスは、創業当初から掲げてきた“カルチャーショップ”としてのアイデンティティーに立ち返り、アート・カルチャー領域をあらためて強化する。新プロジェクト「ビームス カルチャート(BEAMS CULTUART)」を昨年12月に発足し、カルチャー・アート領域を扱う既存レーベルを先鋭化させると同時に、新領域や新規事業の開発に力を入れる。
「ビームス カルチャート」は、「トーキョー カルチャー by ビームス(TOKYO CULTUART by BEAMS)」や「ビームス レコーズ(BEAMS RECORDS)」「ビー ギャラリー(B GALLERY)」など、これまで同分野を扱っていた7つのレーベルおよびプロジェクトの傘となるポジションに位置付く。ビームス クリエイティブ・ビジネスプロデュース部に所属し、同プロジェクトの指揮を執る佐藤尊彦担当は、「各レーベルの特色をより濃く出していくことがミッションの1つだ。一方で、コンセプトに沿わなければこぼれてしまう案件も出てくるだろう。バイヤー個人のアイデアを最大化させるために、ゆくゆくは各バイヤーがレーベルをまたいで企画ができるような“フリーバイヤー制度”を構築していきたい」という。好調のBtoB事業においても、リソースを横断的に活用していく。
海外マーケットも見据え、“カルチャーショップ”としての存在感をグローバルに発信していく。子会社のある台湾の桃園市では、「ビームス カルチャート」として初のポップアップストアを開いた。4月30日までの期間、アートを題材に扱うTシャツ専門レーベル「ビームス T」や「マンガート ビームス(MANGART BEAMS)」によるアニメ「呪術廻戦」とのコラボコレクションなどを束ね、日本の文化を紹介している。
昨年12月には、「メタサムライ(MetaSamurai)」とコラボした初のNFT商品を発表した。NFTやメタバースは注目領域の一つだが、それ以外にも「今まで未着手の表現領域にあらためて視野を広げていく」と佐藤担当。既存レーベルではアーティストの関連雑貨の開発などファッションに軸足を置いていたが、今後はアート作品そのものを扱うプロジェクトへと発展させる。2月にはアートフェア「EASTEAST」にブースを出展し、「ビームス カルチャート」がキュレーションした作品を見せる。
佐藤担当は、「今アート関係者の人たちに、ビームスがどのように関わればアート業界にとって良いと思うかなどをヒアリングしている。アートを文化として根付かせるためには、経済的な自立が不可欠だ。既存レーベルを束ねたのも、各レーベルの業績を相互補完的に機能させるという理由もある。ファッションの文脈でビームスがそうしてきたように、アート業界の経済圏、エコシステム全体を支えられるポジションを目指したい」と意気込む。