ファッション

エコバッグが世界的ヒット 売上高36%増の成長を続ける「スーザン べル」

 

 リップストップ・ナイロンのエコバッグ「スーザン べル(SUZAN BIJL)」をご存知だろうか。鮮やかな色の組み合わせとシンプルなデザインが人気となり、現在、世界22カ国350拠点で販売されている。2000年に創業し、14年に地元オランダ・ロッテルダムに1号店をオープン。この年地元オランダでのビジネスが拡大した。ここから「スーザン ベル」の躍進が始まる。世界的なサステナビリティ意識の高まりに加えて、各国の政府がレジ袋の使用を控える姿勢を見せたことから、15年からは毎年平均前年比36%増をマーク。19~20年にオンラインプロセスに投資したことが奏功し、20~22年は新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けず、ブランド最大の成長を遂げた。

 そもそも「自分のためにデザインしたことがきっかけだった」と創業者のスーザン・べル。キッチンに溜っていくショッピングバッグを減らしたかったというシンプルな理由だった。使い捨てビニール袋のデザインを生かしつつ、サイドの折り目を深くすることでボリュームを出し、鮮やかな色を組み合わせた。ポップな色合わせと実用性が受けてオランダのミュージアムショップなどで扱われるようになり、ポール・スミス(PAUL SMITH)やユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)のバイヤーに見出されて、世界中に販路が広がった。定番商品“ニューショッピングバッグ(The New Shopping Bag)”のデザインは20年変わらない。

 デザインアプローチは「まず実用的で機能的であること、その次にサステブルかどうかを考えている」とスーザン。商品のバリエーションは少しずつ増えているが「毎年、新しいデザインを提案するようなことはしない。いいものはいいから」。シーズンに合わせて生産するが、シーズン中に売り切ることを目指している。在庫は最小限に抑え、セールはしない。取引先にもセールをしないように伝えている。生地はシーズンを超えて活用し、端切れは“ニューポーチ”やファスナーなどの小さいパーツや修理のために用いる。17年からは無償で修理を行っている。

地球に対する責任の探求が始まる

 かつてレザーを使用した商品も提案していたというが「廃棄物の削減と地球に対する責任を探求する過程で使用を廃止した。その代わりにリップストップ・ナイロンのみにフォーカスした。とても丈夫で軽く、使い勝手がいいうえ品質が均一だから」。素材を限定することで無駄を省き、環境負荷を低減するために注力できるようになった。

 「この10年の私たちの目標はサプライチェーン全体を通してブルーサイン認証(繊維産業の中でも特に化学物質を用いる分野で、環境、労働、消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証)を受けること」とスーザン。16年からはブルーサイン認証を得たリップストップ・ナイロンに変更しているが、鮮やかな色の保持のためのポリウレタンコーティングや、一部のバッグで施している防水コーティング(熱可塑性エラストマーコーティング)を施しているため、全工程でブルーサイン認証は受けていない。

 「以前ブルーサイン認証を得た工場の水性のコーティングを試したが、安定した品質が保証できなかったため、ブルーサイン認証を得ていない油性に戻さざるを得なかった。現在、中国のパートナーとともに、油性のコーティングでのブルーサイン認証取得を目指して取り組んでいる。彼らは生産工程の透明性が高く、環境への負荷を軽減するためにどう改善できるかを常に探究している」とスーザン。素材を限定してバリエーションを増やす方法で、小さな企業ながら一つ一つの工程を丁寧に見直すことを可能にしている。「長期的な目標は、オランダに近いところで生産すること。これはサプライチェーンを変えることになるため、段階的に進めていくことになる。地球での生活を向上させるために必要な目標」とスーザン。

 1人で始めたビジネスも、現在35人のスタッフを抱えるまでに成長した。支持を集める理由をスーザンはこう分析する。「どんな年齢もジェンダーにもフィットする。リピート顧客やファンがいて、友人や家族にも私たちの製品を紹介してくれている。何より、使い勝手がよくて実用的、そして特別な色に個性を感じてくれていて、自分の個性とマッチしていると思い入れを持ってくれている人が多い」。いわゆる実用的で丈夫なエコバッグとして選ばれるだけでなく、日常使いもできるデザイン性の高さが支持を集めている。
 
 現在、さまざまなプログラムの提供に取り組み始めた。「映画上映、音楽パフォーマンス、レクチャーなど、私たちが興味を持っているテーマで、皆さんのインスピレーションになるような機会を提供したいと考えている。私たちのブランドを通じて自然、健康、居住環境の観点から地球環境に対して責任を持ってもらうことが目標」とスーザン。製品の提供だけではなく、体験を通じて価値観の共有を目指している。

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