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渋谷の「東急本店」が55年の歴史に幕 別れを惜しむ大勢の人

 東急百貨店は31日、渋谷本店(東急本店)の営業を終了し、55年3カ月の営業に幕を閉じた。平日にもかかわらず別れを惜しむ人が殺到した。目の前の交差点から建物をスマホやカメラで撮影する人の姿も絶えなかった。東急百貨店は20年に東急東横店を閉めており、創業地である渋谷から「東急百貨店」の屋号は消える。渋谷で残る百貨店は、西武渋谷店の1店舗になる。

 「55年間ありがとうございました」。19時過ぎ、正面入り口前の閉店セレモニーで稲葉満宏本店長があいさつすると、店舗前の路上を埋め尽くした人々から拍手と「ありがとう」の声が上がった。シャッターが降りても、人の波はなかなか引かず、記念撮影する人たちの姿が多く見られた。

 中目黒から来たという70代の夫婦は「近いので40年以上も東横店と本店を利用してきた。惣菜から洋服まで、良いものがほしいときは東急。お中元もお歳暮も東急。なのに東横店に続き本店まで閉店とは本当に残念だ」と肩を落とした。

 1967年に開業した同店は、日本屈指の高級住宅地である松濤が足元にある。渋谷の喧騒から離れた立地で落ち着いて買い物できるため、中高年や富裕層の客層も多かった。外商に強いことで知られ、売上高に占める外商の割合は40%にもなる。稲葉満宏店長は「お客さまからの心配する声があるは事実。だが(渋谷駅付近に点在する)当社運営の別の売り場でこれまで通り、お客さまに商品を提供し、また商品に限らず東急グループとの連携で商品以外の分野でも関係を深めていきたい」と話す。

 東急本店(売り場面積3万5000平方メートル)は姿を消すものの、同社が運営する売り場は渋谷駅界隈に点在する。渋谷ヒカリエ内のシンクス(同1万6000平方メートル)、渋谷スクランブルスクエア内の化粧品・服飾雑貨・食品(5000平方メートル)、東急フードショー(6000平方メートル)がそれだ。東急本店の閉店に伴い、シンクスに「パテックフィリップ」「カルティエ」「ピアジェ」などの宝飾・時計売り場、化粧品売り場、外商向けサロンなどをシンクスに3月から順次移転する。人気のワイン売り場は3月に開く松濤の路面店へ引っ越す。

 東急本店の跡地には、東急、LVMH系のLキャタルトン、東急百貨店の3社による再開発プロジェクト「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」が進められる。27年の竣工時には地上36階・地下4階の高層ビルに生まれ変わり、ラグジュアリーホテル「ザ・ハウス・コレクティブ」が日本に初進出するほか、商業施設やレジデンスが入る。商業施設に東急百貨店が入るのか、別の業態になるのかは発表されていない。

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