岡藤正広/伊藤忠商事会長CEO
PROFILE:(おかふじ・まさひろ)1949年12月12日生まれ、大阪府出身。74年東京大学経済学部卒業後、伊藤忠商事に入社。87年に「ジョルジオ アルマーニ」の独占輸入販売権を取得したのをはじめ、欧米の有名ブランドを次々に導入し「ブランドの伊藤忠」を確立させた。97年アパレル第三部長、99年繊維輸入事業部長、2002年ブランドマーケティング事業部長、04年4月常務執行役員繊維カンパニープレジデント、同年6月常務取締役、06年専務、09年副社長を経て、10年4月に社長に就任。18年4月から現職
伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOは1月某日、大阪市内で一部のメディアを招いた記者懇談会で、「業績も大事だが、働き方改革やSDGsなどいろんなところで『伊藤忠』の名前が出てくるようになった。それが学生からの人気につながっている。それが今の伊藤忠の強いところや」と語った。繊維出身で2010年4月に社長に、18年4月に会長CEOに就任した岡藤会長だが、同社のトップになって13年目。伊藤忠を名実ともに総合商社のトップに押し上げた辣腕CEOが、胸の内を語った。
伊藤忠商事の23年3月期の純利益の見通しは8000億円。ライバルの三菱商事は資源高の恩恵を受けて1兆300億円の見通しで遅れを取るものの、時価総額では伊藤忠が6兆5400億円(2月2日時点、株価4126円で計算)、三菱商事が6兆3700億円(同、株価4324円で計算)と今なおトップにある。
岡藤正広会長CEO(以下、岡藤):実は新年早々に米国に行って、うちの(鉢村剛)CFOが向こうで(著名投資家のウォーレン)バフェット氏に会ってるんや。(バフェット氏は)個人的にはいいところに目をつけたと思ってるで。常々言っているが、商社株は割安や。商社は歴史もあるし、この数年は安定的に利益も上げていて、配当も悪くない。にもかかわらず、時価総額で見ると、うちより高い会社はまだぎょうさんある。けど親御さんが「子どもの就職で働いてほしい会社は?」という観点で見ると、時価総額で負けてても商社が選ばれることが多いはずや。それが「就職したい会社ランキング」には出てくるんや。
伊藤忠は、「楽天」「ダイヤモンド」「マイナビ」などが実施する「就職人気ランキング」では常に商社1位であり、大半のメディアでは全業種でも1位をこの数年ずっとキープしてきた。その理由の一つが「働き方改革」の成功だ。懇談会では、ある女性の課長代行の1日のスケジュールを追った映像資料も公開した。映像資料の中で課長代行は、朝7時に東京・青山の東京本社に乳幼児である子どもとともに出勤し、本社のすぐ隣にある同社運営の託児所に預け、同社の提供する無料の朝食を受け取って業務を開始し、16時には子どもとともに退社、自宅ではMBA取得のためにオンライン授業も受ける。同社は2016年から厚生労働省で事務次官を務めた村木厚子氏が、非常勤取締役を務めている(村木氏は今年6月に退任予定)。
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