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花王2022年12月期は営業利益が334億円減、計画と大きく乖離

 花王の2022年12月期連結決算(国際会計基準)は、原材料価格高騰や中国・欧米の景気減速の影響を大きく受け、売上高が前期比9.3%増(実質3.7%増)の1兆5510億円、営業利益が同23.3%減の1100億円、純利益が同21.5%減の860億円だった。なお、長谷部佳宏・代表取締役社長執行役員は連結業績と業績予想の差異を受け、23年4月から3か月間、自身の月額基本報酬30%の自主返納を申し出た。

 事業別ではコンシューマープロダクツ事業(化粧品事業、ヘルス&ビューティケア事業、ライフケア事業、ハイジーン&リビングケア事業を総称)の売上高は、同4.3%増(実質0.2%減)の1兆1933億円、営業利益は同70.4%減(332億円減)の793億円だった。コアブランドへの集中投資やデジタル化の推進、戦略的な値上げなど積極的に実施したが、米国の物流混乱や世界的なインフレによる低価格品への移行などの影響を受けた。

 化粧品事業はメイク事業の構造改革を順調に進め、売上高は同5.1%増(実質0.8%増)の2515億円、営業利益は同188%増(66億円増)の141億円だった。

 日本では市場が徐々に回復する中、「カネボウ(KANEBO)」や「ケイト(KATE)」などG11(11のグローバル戦略ブランド)に集中的に投資したところ、G11の売り上げが2ケタ増と伸長し、売り上げ・シェアが前期を上回った。特に「ケイト」は“リップモンスター”が好調を維持し、メイク市場全体でブランドシェアNo.1を継続した。

 中国では都市封鎖や市場の冷え込みに加え、ローカルメーカーの台頭や流通チャネルの変化などの影響を大きく受け、売り上げは前期を下回った。欧州では、インフレによる景気減速が影響し、売り上げは前期並みだったが、「センサイ(SENSAI)」や「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」のシェアが伸長した。

 へルス&ビューティケア事業(スキンケア、ヘアケア・パーソナルヘルス製品を展開)は、スキンケア製品が好調だったもののヘアケア製品やパーソナルヘルス製品が苦戦し、売上高は同4.2%増(実質1.8%減)の3695億円、営業利益は同69.6%減(151億円減)の346億円だった。

 スキンケア製品においては、日本は猛暑の影響でUVケア製品などのシーズン品の売り上げが好調だった。タイでは忌避剤ローション“ビオレガード モスブロックセラム”に大きな反響が集まった。ヘアケア製品は、欧米で「オリベ(ORIBE)」のECが伸長し好調を維持した。一方で、国内ではマス向け製品の競争環境が激化し、前期を下回った。パーソナルヘルス製品は、「めぐりズム」が順調に推移したが、入浴剤が前期を下回った。

 23年12月期は、3つの方針として、1.市況に依存しない強い事業体質に変える、2.戦略事業の強化とグローバル拡大、3.変化を先取りする急進事業を実益化するに基づいた戦略を実行する。1は戦略的値上げや高付加価値・高収益商品の比率アップを図る。2はヘアケアやサニタリー(生理用品)、パーソナルヘルス事業のマーケティングを大改革するとともにD2Cを本格始動する。3はポジティブリサイクル(廃PET活用道路)やドローン用アジュバント(超減農薬)や、デジタル・ライフ・プラットフォーム事業(RNA検査事業化)を推し進める。

 さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を駆使してあらゆる分野の改革を進めるとともに、投資効率を最大化するための事業別ROIC(資本効率性)を導入して事業ポートフォリオ改革を進め、EVA経営の深化を図る。

 連結業績予想は、売上高が同1.9%増(実質2.3%増)の1兆5800億円、営業利益が同9.0%増の1200億円、純利益が同2.3%増の880億円を見込む。化粧品事業は同4.6%増(実質)の2640億円、ヘルス&ビューティケア事業は同5.0%増(実質)の3870億円を予想する。


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