「エルメス(HERMES)」の“バーキン(Birkin)”を模したNFTアート“メタバーキン(MetaBirkins)”の商標権侵害などを巡る裁判の中で、「エルメス」は“メタバーキン”がブランドのNFT計画に悪影響を与えたと主張し、その計画の一部を明かした。
“H LAB”と呼ばれる「エルメス」のイノベーションラボの責任者であるマクシミリアン・ムーラン(Maximilien Moulin)によると、同社は2019年12月からNFTの調査を開始し、製品の認証やプライベートイベントおよび限定サービスへのアクセス、ゲームの中で使用するハンドバッグをはじめとするバーチャルアイテムなどに使用する可能性を探っていたという。またムーランは、21年10月には “バーキン”のレプリカをデジタル上で作成し、プロトタイプとして社内で共有したが外部には一度も公開しなかったことや、話す馬のNFTアートも開発中だったことを証言した。さらに、“メタバーキン”が「エルメス」のNFT計画をどのように妨害したかについて、「人々を混乱させる可能性がある」と述べた。
メイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)は「エルメス」の“バーキン”に類似したバッグをデジタル上で100個製作し、NFTマーケットプレイスの「オープンシー(OpenSea)」上で販売。訴状の中で「エルメス」は、ロスチャイルドが「一般名称である“メタ(meta)” を足すことで『エルメス』の“バーキン”という著名な商標を略奪し、一攫千金を狙っている」と述べている。これに対してロスチャイルドは、自身のインスタグラムアカウントで、問題となっているバッグはアートだと主張。「私は偽物のバーキンを作っているわけでも販売しているわけでもなく、ファーで覆われた想像上のバーキンを描いたアート作品を作ったにすぎない。アメリカ合衆国憲法修正第1条がアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)に『キャンベル(CAMPBELL)』のスープ缶を描いた作品を作って売る権利を認めているように、バーキンのバッグを描いた作品を作って売る権利を私に認めていると、私の弁護士は言っている」と述べている。
“メタバーキン”は当初、約450ドル(約5万9000円)相当で販売され、その後、一部のアイテムは数万ドル(約260万円以上)で転売されているという。
本件訴訟は、近日中にも判決が出る見通しだ。