ファッション

“メタバーキン”訴訟、陪審員は「エルメス」を支持 NFTアート製作者は「壊れた司法制度」と徹底抗戦の構え

 「エルメス(HERMES)」の“バーキン(Birkin)”を模したNFTアート“メタバーキン(MetaBirkins)”の商標権侵害などを巡る裁判で、9人の陪審員は「エルメス」の主張を認め、 “メタバーキン”を製作・販売したメイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)に対して、計13万3000ドル(約1755万円)の損害賠償を命じた。

 ロスチャイルドは体調不良を理由に陪審評決が読み上げられる場には現れず、リモートで参加。陪審員は商標権侵害行為や商標の希釈化、サイバースクワッティング(cybersquatting、関係のない第三者がドメイン名を不正な目的で登録したりすること)があったことを認めた。ジェド・ラコフ(Jed Rakoff)裁判官は、「非常に丁寧かつ注意深く、すべての証言に耳を傾けていた」と陪審員を評価した。

 陪審評決の内容に対して、「エルメス」は、「『エルメス』はクリエーション、クラフツマンシップを有する真のメゾンであり、創業以来、アーティストの表現の自由を支援してきた。この紛争において、『エルメス』は消費者とブランドの価値を守るために行動せざるを得なかった」とコメントしている。ロスチャイルドは、「路上にいる9人に対してアートとは何かを尋ねてみてほしい。しかし、陪審員の判断が議論の余地のない真実となってしまった」「数十億ドル規模のラグジュアリーメゾン(である『エルメス』)は、アートやアーティストに対して“関心がある”と言いながら、自分たちにアートとは何か、アーティストとは誰かを選ぶ権利があると考えているようだ」「芸術の専門家が芸術について語ることを許さず、経済学者が芸術について語ることを許す、壊れた司法制度だ」と声明を発表。「今日起きたことは間違っている。われわれが戦い続けなければ同様のことが繰り返される」と述べ、控訴する方針だ。

 ロスチャイルドは「エルメス」の“バーキン”に類似したバッグをデジタル上で100個製作し、NFTマーケットプレイスの「オープンシー(OpenSea)」上で販売。訴状の中で「エルメス」は、ロスチャイルドが「一般名称である“メタ(meta)” を足すことで『エルメス』の“バーキン”という著名な商標を略奪し、一攫千金を狙っている」と述べている。これに対してロスチャイルドは、自身のインスタグラムアカウントで、問題となっているバッグはアートだと主張。「私は偽物のバーキンを作っているわけでも販売しているわけでもなく、ファーで覆われた想像上のバーキンを描いたアート作品を作ったにすぎない。アメリカ合衆国憲法修正第1条がアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)に『キャンベル(CAMPBELL)』のスープ缶を描いた作品を作って売る権利を認めているように、バーキンのバッグを描いた作品を作って売る権利を私に認めていると、私の弁護士は言っている」と述べていた。

 “メタバーキン”は当初、約450ドル(約5万9000円)相当で販売され、その後、一部のアイテムは数万ドル(約260万円以上)で転売されているという。

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