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資生堂2022年12月期はコア営業利益が88億円増 「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」がけん引

 資生堂の2022年12月期連結業績は、ロックダウンやダブルイレブン(独身の日)市場の鈍化が影響した中国事業の落ち込みを欧米事業やトラベルリテール事業でリカバリーしたほか、「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ナーズ(NARS)」やフレグランスが好調を維持し、売上高が前期比5.7%増の1兆673億円、コア営業利益(営業利益から非経常項目を除き算出)が同20.6%増の513億円、営業利益が53.7%減の465億円、純利益が27.1%減の342億円となった。

 事業別では日本事業の売上高は同8.2%減(実質0.3%増)の2375億円、コア営業損益は130億円の赤字(前期は64億円の黒字)だった。低価格帯が成長を継続したことに加え、9月に実施した「エリクシール(ELIXIR)」主力商品のリニューアルや「プリオール(PRIOR)」が後押し、下期は中価格帯市場が回復基調に転じた。また、「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ」のホリデーコレクション、「シセイドウ」“ビオパフォーマンス”シリーズの新美容液が成長に貢献し、シェアを拡大した。ECは、販売チャネルやブランドごとに提供していた会員サービスを1つに集約した新会員サービス「Beauty Key」の会員が目標を超えて順調に獲得できており、アプリやCRM(顧客関係管理)による購買に寄与した。これら好調要因はあるものの、上期のマイナスをカバーしきれなかった。

 中国事業の売上高は同6.0%減(実質9.8%減)の2582億円、コア営業損益は39億円の赤字(前期は40億円の黒字)だった。断続的なロックダウンに加え、物流にも影響があり苦戦したが、プレステージブランドへの戦略的投資を継続したことで「クレ・ド・ポー ボーテ」「シセイドウ」、「シセイドウ」の最高級ライン“フューチャーソリューション LX”が好調を維持。ECにおいては、中国最大のECの祭典「ダブルイレブン」の市場が減速した一方で、年間の売り上げは成長を実現した。

 そのほか、アジアパシフィック事業の売上高が同7.0%増(実質13.0%増)の680億円、米州事業が同13.6%増(実質8.8%増)の1379億円、欧州事業が同24.1%増の1170億円、トラベルリテール事業が同9.8%増(実質4.0%増)の1636億円、プロフェッショナル事業が同38.9%減の93億円、その他が同66.4%増(実質3.4%減)の642億円だった。

 23年12月期の連結業績予想は売上高が同6.3%減(実質11%増)の1兆円、コア営業利益が同16.9%増の600億円、純利益が同18.1%減の280億円を見込む。

 魚谷雅彦会長CEOは「21〜23年の経営戦略『WIN2023』において、この2年間は厳しい混迷の中、当社が生き残って再度成長するために、収益・技術・マーケティングの面から競争優位とされるスキンケアなどの領域で選択と集中を進めてきた。赤字や優先度を高くできない事業に関しては売却・撤退をし、事業規模2000億円を超える構造改革は、20年度に計画したものに関しては全てやりきった。欧米事業の収益は大きく改善したほか、スキンケアブランドの売り上げ比率は全体の70%を超え、今後の収益基盤が強くなった」と胸を張る。国内生産工場や西日本物流センターの建設を実現させ、IoT技術を導入しながら生産性を高めるなど、安定的に商品原価を下げていく目処が立ってきたという。

 一方で、日本事業の成長性回復の大幅な遅れを課題とした。「コロナ禍の影響が当初の予想よりも2年以上長引いた。マスク着用が定着化したことやインバウンド消費が大きく減少したことが大きな要因にはなっているが、日本事業の厳しい採算の状況が3年続くという中では、これらはもはや成長してないことへの言い訳になってしまうということを、私たち経営陣は強く認識している」と話す。

 今後、一気通貫の組織体制や販管費のコスト構造、組織のカルチャーなどを抜本的に見直し、「3年後の2025年には日本事業で500億円を超える収益を出し、そして社員がやりがいを感じるような健全な企業体質を実現するべく、既にさまざまな取り組みを始めている」と、23年から25年は抜本的な経営改革の3年と位置付け、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定した。

 同社の強みであるスキンケアにおいて、サンケア事業で日焼け止めブランド「アネッサ(ANESSA)」を「世界一にする」という。また、体内睡眠やストレスなど“体と肌の関係”の知見を深め、健康を高めるためのインナービューティー事業に注力する。さらに、メタバースなどを活用したプラットフォームを構築するなど「23年からは『守り』から『攻め』にシフトする」と述べた。

 ブランドのポートフォリオは「シセイドウ」「クレ・ド・ポー ボーテ」「ナーズ」「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」の4ブランドを全ての地域でグローバル最重点育成ブランドとする。アジアにおいては「エリクシール」「アネッサ」を主軸に地域拡大を行う。また、メンズ市場においては、スキンケアに加え、メイクアップで市場を開拓する。これらの成長に向けて、3カ年累計で1000億円を超えるマーケティング投資を行う。

 さらに、創業150周年の記念事業として、今秋、同社の創業の地である銀座に、次世代を担う人材開発の拠点「Shiseido Future University」をオープンし、魚谷会長CEOが初代学長を務める。サステナビリティ活動においては、プラスチック製容器を収集し、プラスチック製容器へ再生する循環型プロジェクト「ビューリング(BeauRing)」を立ち上げる。ポーラ・オルビスホールディングスが参画し、ともにプロジェクトを推進する。両社は今後、同プロジェクト以外でも「サステナブル領域でさまざまな協議を検討していく予定」としている。

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