ロレアル(L’OREAL)の2022年12月期決算は売上高が前期比10.9%増の382億6000万ユーロ(約5兆4329億円)、営業利益は同21.0%増の74億5690万ユーロ(約1兆588億円)、純利益が同22.6%増の60億5410万ユーロ(約8596億円)だった。サロンヘアケアなどを擁するプロフェッショナルプロダクツ事業が好調だったほか中国本土、インド、ブラジルが大きく成長し、市場予想を上回る2ケタの伸びを記録した。
事業部別では、サロン向けヘアケア商材を展開するプロフェッショナルプロダクツ事業本部の売上高が同10.1%増の44億7680万ユーロ(約6357億円)で、中国本土とインド、ブラジルが大きく成長した。サロンやECなど全てのチャネルで伸長し、オムニチャネル戦略の成功を裏付けた。ブランドでは10億ユーロ(約1420億円)の大台に乗った「ケラスターゼ(KERASTASE)」と「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」の 金属ストレスに着目したライン“セリエ エキスパート(SERIE EXPERT)”が成長に大きく寄与した。
コンシューマープロダクツ事業本部は同8.3%増の140億2130万ユーロ(約1兆9910億円)と過去20年で最も高い伸びを記録した。北米と欧州が好調に推移するとともに、中南米とSAPMENA-SSA(南アジア太平洋、中東、北アフリカ、サハラ以南のアフリカ地域)の成長が大幅に加速。メキシコ、インド、ブラジルなどの成長により中国の厳しい市場環境を補い、全ての主要ブランドが市場を上回る業績を達成した。メイクアップは「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」のリップ“SPステイ ヴィニルインク”や「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」のファンデーション“ベアウィズミー”が、スキンケアは「ガルニエ(GARNIER)」の美容液“ビタミンC ブライトニング セラム”が貢献した。
コンシューマープロダクツ事業本部の売り上げを昨年度上回り、同社最大のカテゴリーとなったリュクス事業本部は、22年も力強い成長を続け売上高は同10.2%増の146億3810万ユーロ(約2兆786億円)を記録した。ラグジュアリー市場で最も速く成長するフレグランスを強化し、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」の“リブレ(LIBRE)”や「ランコム(LANCOME)」の“ラヴィエベル(LA VIE EST BELLE)”、「アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」の“アクア ディ ジオ(ACQUA DI GIO)”などの世界的ベストセラーが売り上げをけん引した。スキンケアは最先端の研究を取り入れた「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」や「ランコム」の製品や「タカミ(TAKAMI)」を含む近年の買収の成功により市場の3倍の速度で成長。特に下半期の中国市場の大幅な減速など不安定な環境の中、グローバル市場でシェアを拡大。北アジアでポジションが大きく向上した。
ドクターズコスメなど皮膚科学研究に基づく化粧品を扱うアクティブコスメティックス事業本部はここ数年で規模を倍増させており、22年も同21.9%増の51億2450万ユーロ(約7276億円)と大きく伸長した。同事業本部は北米とSAPMENA-SSA、中国本土で顕著な成果を上げ、全ての地域で2ケタ成長を達成した。中でも最大のブランドである「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」と「セラヴィ(CERAVE)」が同程度の成長率で貢献。「ラ ロッシュ ポゼ」は保湿バーム“シカプラスト”とニキビケアの“エファクラ”シリーズを柱に日焼け止めの画期的なイノベーションにより勢いを持続させた。
地域別ではヨーロッパが同11.6%増の114億3670万ユーロ(約1兆6240億円)、北米が10.4%増の101億6400万ユーロ(約1兆4432億円)、北アジアが同6.6%増の113億2140万ユーロ(約1兆6076億円)、SAPMENA-SSAが22.4%増の29億6240万ユーロ(約4206億円)、ラテンアメリカが同18.6%増の23億7600万ユーロ(約3373億円)だった。ヨーロッパはフレグランス、メイクアップ、UVケアがコロナ禍前の水準を上回る伸びを示し、グループ最大の成長要因となった。太平洋地域では主にフレグランスとスキンケアカテゴリーが成長をけん引。「ラ ロッシュ ポゼ」と「セラヴィ」の成長が顕著だった。中国本土ではコロナ禍の制限の影響を受けたがEC売り上げを2ケタ伸ばしたほか、日本と韓国でも2ケタ成長を記録した。東南アジアでは「メイベリン ニューヨーク」と「ガルニエ」が好調だった。インドはプロフェッショナルプロダクツ事業本部とコンシューマープロダクツ事業本部が全カテゴリーで売り上げが拡大した。ラテンアメリカはメキシコでスキンケアが、ブラジルでコンシューマープロダクツ事業とリュクス事業が大きく成長した。
ニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)最高経営責任者(CEO)は声明で、「イノベーションにおけるリーダーシップ、魅力的なブランド、オペレーションの俊敏性、チームの多大なコミットメントにより目覚ましい業績を達成することができた。事業部と地域間のバランスの取れた成長は、当社の多極化モデルの妥当性を改めて証明するものだ。戦略的に権限を集中・分散させ、強い起業家精神を有するこのモデルは、現在の環境において理想的だ。われわれは現在の不確実性を考慮しつつ将来に対する野心を持ち続け、2023年も市場を上回るパフォーマンスを続けることに自信を持っている」と述べた。