ビジネス
連載 進化する幸せ産業

高級レトルトカレーがアツい! 名店の味で“ごほうびごはん”【ウィズコロナで進化する幸せ産業】

“安くて手軽”から“ごほうびごはん”に
なった人気店のグルメレトルトカレー

 コロナ禍でテイクアウトや冷凍食品の需要が高まり、最近はレトルトカレーの定義も大幅に変わったらしい。中には通常の外食より高額な商品もあり、“自宅でごちそう”が当たり前になった。各人気店は、競うようにグルメレトルトカレーをリリースしている。行列のできる人気店の名物カレーだって、レトルトならば自宅ですぐ再現できる。

 コロナ前と比較して、一番変化したのは価格帯だ。今では1000円前後の高級なカレーも珍しくなく、ギフト用としての需要に加え、今は自宅用に購入する人が多いという。素材やスパイスの質や量が格段にアップしたと、素人でも実感できる。例えば札幌の人気店、奥芝商店のスープカレーは、皮付きのニンジンやなすなどの野菜がゴロゴロ、骨付きのチキンまで入っている豪華版だ。毎朝2000匹の甘海老から取ったエビだしスープも濃厚。その旨味をさらに生かす辛味の素が付き、スパイシーさも好みに合わせて調整できる。

 都内各地に展開する「もうやんカレー」は、厳選した8種以上の大量の野菜やフルーツ、スパイスが溶け込んだヘルシーなカレー。ビーフのかたまり肉も入っている。しかも、小麦不使用のグルテンフリーで、化学調味料も不使用、増粘材などに頼っていない。2日以上かけて煮込んでいる。このクオリティーを保つには、一般的なレトルトカレーの価格ではコストが見合わず、「カレーのソースを作る食材の原価は、通常のカレーの3倍」ともうやん。厳選という言葉通り、野菜の質も高く、スパイスもオリジナルで原価が高い。それらを惜しげもなく鍋に投入する。

 創業者の辻智太郎社長は、実は私の中学時代の同級生。スポーツ関連の会社で働き、パーソナルトレーナー時代に健康食を極めようと試行錯誤を繰り返し、この野菜やスパイスたっぷりのカレーにいきついたと聞く。彼の実家は、地元荻窪の老舗健康食品会社。今ではお兄さんが継ぎ、日本を代表する航空会社の抗アレルギー機内食を提供するなど、食物アレルギー対応食品を広めている。

 おいしさはもちろん、健康食としての質にも妥協しない。今までさまざまなメーカーから打診され、「もうやんカレー」のレトルト化を試みてきたが、忠実に再現するにはコスト面で見合わず、断念してきたそうだ。高価でも質を良く、というグルメレトルトカレーが一般的になった今、1食600円の通販でのレトルトカレーの販売が実現した。

 本格的なタイ料理で人気の「マンゴツリー」の提案はユニークだ。店でも1、2を争う人気のグリーンカレーのレトルトを、この冬リリース。そのカレーに合うライスヌードルもセットで販売するのだ。確かにグリーンカレーに日本のお米は似合わない。ジャスミンライスを炊く時間がなくても、つるんとしたヌードルと合わせることでカレーが引き立つ。ちょっと食欲がないときや飲んだときの締めに、グリーンカレーとそうめんの組み合わせも合うと知ったのだが、これもクセになる。今まで「『急いでいるから』『安くて手軽だから』と、とりあえず食べていたレトルトカレー」は、“とっておきごはん”として丁寧に味わうごほうびになった。

スーパーやコンビニで購入できる
大手食品会社のシリーズにも注目

 名店のグルメレトルトカレーは、日常をバージョンアップしてくれる。「ククレカレー」でおなじみのハウス食品のレトルトカレーにも、「選ばれし人気店」シリーズや「ジャパンメニューアワード(JAPAN MENU AWARD)」など、実在店舗のカレーを再現したシリーズがある。いずれも食べログの百名店やグルメコミュニティー「サラ(SARAH)」で評価された、日本各地の人気店のメニュー。これが身近なスーパーやコンビニで、しかも300円前後で購入できるのだから驚きだ。しかも、レトルトパックを箱ごとに温められるレンジ加熱対応パウチを採用。湯煎と比べ、レンジ調理で時間を短縮することで、CO2排出量を80%削減でき、地球環境にも優しいという。

 興味深いのは、それぞれのシリーズにブランドサイトがあり、シェフの開発秘話や審査員のコメントなどの情報をチェックできること。中でも、選ばれし人気店のサイトに掲載された記事は要チェックだ。インタビュー形式の開発秘話は読みごたえがあり、シェフが提案するアレンジアイデアなどの有益な情報も得られる。そのメニューへのこだわり、レトルト化までの苦労などを知ると、ありがたみも増す。実は、私もこのシリーズでカレーのおいしさに目覚め、地方出張の際には、実店舗まで足を運んだこともある。その味を知って、また自宅でごちそうカレーを再現する——そのサイクルにすっかりハマってしまった。

 カレーはコーヒーやお酒同様、趣味のジャンルのひとつだ。スパイス好きが集まると、情報交換に熱くなり、どれほどその思いが強いかを競うようなところがある。趣味の領域なら、自宅でも最良のものを求めるだろう。自宅時間を充実させる付加価値には、その対価を惜しまない層が増えている。グルメレトルトカレーは日常を上質にしてくれる。

 レトルトカレーならば、札幌と埼玉と神戸の名店が競う一皿を、食卓を囲んでシェアしながら食べ比べてみることだって可能だ。このティスティング会は盛り上がるので、ぜひ試してほしい。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

疾走するアシックス 5年間で売上高1.8倍の理由

「WWDJAPAN」11月4日号は、アシックスを特集します。2024年度の売上高はコロナ前の19年度と比べて約1.8倍の見通し。時価総額も2兆円を突破して、まさに疾走という言葉がぴったりの好業績です。売上高の8割以上を海外で稼ぐグローバル企業の同社は、主力であるランニングシューズに加えて、近年はファッションスニーカーの「オニツカタイガー」、“ゲルカヤノ14”が爆発的ヒットを記録したスポーツスタイル…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。