コーセーの2022年12月期連結業績は、中国の不振をハイプレステージブランドと欧米展開の「タルト(TARTE)」がカバーし、売上高が前年比7.5%増の2891億円だった。利益面では「タルト」の原価率が上昇したものの、前年における「ファシオ(FASIO)」と「レ・メルヴェイユーズ ラデュレ(LES MERVEILLEUSES LADUREE)」(21年販売終了)の廃棄増加の反動が減ったことで全体の原価率は概ね低下。販管費の抑制効果もあり、営業利益が同41.1%増の221億円、経常利益が同28.8%増283億円、純利益が同68.6%増の187億円となった。前期から決算月を3月から12月に変更し、9カ月(4~12月)の変則決算となるため、前年同期比は前年の比較対象期間に組み替えて算出。
主力の化粧品事業は、売上高が同7.9%増の2349億円、営業利益が同28.5%増の254億円だった。欧米で展開する「タルト」は、TikTokのプロモーションが奏功し、主力商品や新商品の売れ行きが好調。コロナ前の19年の水準に回復した。ブランド別ではハイプレステージの「コスメデコルテ(DECORTE)」「アルビオン(ALBION)」が中国(トラベルリテール事業除く)と韓国で苦戦したが、日本では好調を継続。「ジルスチュアート(JILLSTUART)」「アディクション(ADDICTION)」も実績を押し上げた。プレステージの主力ブランド「雪肌精」は下半期から回復基調に転じた。
コスメタリー事業の売上高は6.2%増の522億円、営業利益は同182%増の11億円だった。ヘアケアブランド「ビオリス(BIOLISS)」が苦戦したが、フェイスマスクブランド「クリアターン(CLEAR TURN)」、メイクアップブランドの「ヴィセ(VISEE)」、ヘアケアブランドの「スティーブンノル ニューヨーク(STEPHEN KNOLL NEW YORK)」が好調に推移した。第2四半期以降、化粧品市場の回復基調に伴って売り上げが伸長し、上半期の赤字を挽回した。その他の事業の売上高は同6.3%減の19億円、営業利益は同36.9%増の10億円だった。ホテルやゴルフ場向けアメニティー商品の販売やOEM生産の受注が減少した影響があったものの、売上原価率が低下したことで営業利益を押し上げた。
地域別では、日本は主要なプレステージのスキンケアブランドが苦戦したものの、百貨店・専門店チャネルにおけるハイプレステージやメイクアップブランドの業績が回復した結果、売上高が同7.3%増の1630億円だった。アジアは、中国が経済活動の抑制で苦戦したが、免税市場で盛り返し、売上高が同0.5%増の807億円だった。北米は、「タルト」が底堅い個人消費で円安効果もあり、売上高が同22.7%増の401億円の増収増益だった。
2023年は「攻めに転じる」シーズンと捉え、各ブランドで100億円規模の投資を行い、グローバル展開を加速する。「コスメデコルテ」は、“リポソーム”シリーズの認知拡大とハイプレステージブランドとしての地位確立を図る。小林一俊コーセー社長は、「『コスメデコルテ』は国内よりも海外の売り上げ比率が高いが、大半を占める中国では、乳液“プリム ラテ”を中心に中価格帯製品が動いており、高価格帯の“リポソーム”“AQ”“ミリオリティ”の認知度が低い。一過性で終わらせないためにも中国市場に偏らずに、ハイプレステージとしての知名度を高めながら、欧米の大型免税店と組むなど、欧米におけるプレゼンスを高めていく。そして外資系ラグジュアリーコスメと戦えるブランドとして、今期は今までにない投資を行う。将来的に売上高1000億円を目指す」と意欲を燃やす。
「雪肌精」は、グローバル広告契約を締結した米MLB「ロサンゼルス・エンゼルス(LosAngels Angels)」の大谷翔平選手を起用したプロモーションに注力。ジェンダーレスブランドとしての認知向上を図り、幅広い世代に訴求する。また、リゾートホテルを運営するアマン(AMAN)とのパートナーシップを進め、「グローバルでコーセーの存在感を高める」。
コスメタリー事業では、ヘアケアブランド「ジュレーム(JE LAIME)」の“リラックス”シリーズを3月に刷新し、苦戦していたヘアカテゴリーの売り上げ回復を目指す。また、累計販売本数700万本を突破した化粧崩れしにくくなるフィックスミスト“メイク キープ ミストEX”はシリーズ化し、3月に発売するフェイスパウダーでカテゴリーのシェア拡大を狙う。
23年12月期は、円安影響の反動や米国の景気減速を受け、売上高が前期比5.5%増の3050億円、営業利益が同5.1%減の210億円、経常利益が同28.5%減の203億円、純利益が同29.1%減の133億円を見込む。