エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)の2022年7〜12月期決算は売上高が前年同期比14.0%減の85億5000万ドル(約1兆1286億円)、営業利益が同48.3%減の12億1700万ドル(約1606億円)、純利益が同50.4%減の8億8700万ドル(約1170億円)の減収減益だった。また、10~12月期の売上高は同16.6%減の46億2000万ドル(約6098億円)、営業利益は同60.8%減の5億5600万ドル(約733億円)、純利益は同63.6%減の3億9700万ドル(約524億円)だった。23年6月の通期決算の売上高は前期比5〜7%落ち込む見込み。
同社は四半期が進むにつれて逆風が強まった要因として、中国本土における新型コロナウイルスに関する規制や新感染者数の増加を挙げた。これにより中国屈指のリゾート地であり政府主導で免税市場が拡大していた海南島への観光客が激減し、製品出荷も大幅に制限された。中国のその他の地域でも実店舗への客足が落ち込んだ。同時に、ドル高に加えインフレ圧力や景気後退への懸念により米国の一部の小売業者が在庫を抑制したこともマイナスに影響した。
カテゴリー別では、10〜12月期のスキンケアの売上高は同24.6%減(現地通貨ベースでは同20%減)の23億8200万ドル(約3144億円)、メイクアップが同8.6%減(同3%減)の12億6800万ドル(約1673億円)、フレグランスが同3.1%減(同3%増)の7億7500万ドル(約1023億円)、ヘアケアが同1.1%増(同4%増)の1億8200万ドル(約240億円)だった。スキンケアはコロナによる中国市場の停滞が大きく影響し、「エスティ ローダー」「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」「ドクター ジャルト+(DR.JART+)」「クリニーク(CLINIQUE)」が売り上げを落とした。一方で、若年層に人気の「ザ オーディナリー(THE ORDINARY)」は2ケタ成長を達成。「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」も“スージング クレンジング オイル”などのヒーロー製品がけん引し伸長した。
メイクアップも同様に中国市場が影響したが、他マーケットではメイクアップの習慣が徐々に戻っており、「M・A・C」は“スタジオ フィックス”シリーズのファンデーションなどヒーロー製品が伸び2ケタ成長し、「クリニーク」が90年代に大ブームとなり現在海外で人気が再燃している“オールモスト リップスティック”のブラックハニーが売り上げを底上げした。一方で、「エスティ ローダー」と「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」が伸び悩んだ。フレグランスは各地域で伸び、特に「エスティ ローダー」「ル ラボ(LE LABO)」「トム フォード ビューティ」がけん引した。ヘアケアは「ザ オーディナリー」がヘアケアラインを立ち上げたことに加え、「アヴェダ(AVEDA)」の成長が起因した。
地域別では、10〜12月期の米州の売上高は同5%減(現地通貨ベースでは同6%減)の12億3500万ドル(約1630億円)、欧州・中東・アフリカが同22.4%減(同18%減)の18億1600万ドル(約2397億円)、アジア太平洋地域が同17.5%減(同8%減)の15億7000万ドル(約2072億円)だった。
同社は昨年11月、これまでビューティ製品のライセンス契約を結んでいたトム フォード(TOM FORD)社を28億ドル(約3920億円)で買収することに合意したと発表した。これによりファッション事業も手にすることになった。ファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者(CEO)は会見で、「トム フォードのビューティ事業は今後数年で10億ドル (約1320億円)に達する見込みで、大きなポテンシャルを持っている」と述べた。買収は第4四半期に完了する予定だ。なお、今後のM&Aについてトレイシー・トーマス・トラヴィス(Tracey Thomas Travis)=エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼最高財務責任者は「われわれのM&Aの戦略は市場のホワイトスペースを見ること。中でも注目しているのはスキンケアやフレグランスだ」と語った。