1月21〜23日の3日間、フランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場で、下着、ラウンジウェア、水着、アクティブウエアを集積した世界最大級のトレードショー「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」と素材展「パリ アンテルフィリエール(PARIS INTERFILIER)」が開催された。リアルでの開催は3年ぶりで、420のブランドとメーカーが出展。99カ国から1万5285人が来場し、38%がフランス国内、62%がフランス国外からという構成だった。アジアからの来場者はコロナ禍前には戻らなかったものの、日本からは4つのD2Cブランドが「パリ国際ランジェリー展」に出展し、存在感を発揮した。世界的な舞台に挑んだ各デザイナーが同展で感じたことなどについて2回に分けて伝える。
「ケープラスワンパーセント」 3年間で様変わりしたサニタリーショーツ事情
サニタリーショーツを中心に展開する「ケープラスワンパーセント(以下、K+1%)」のスド=キョ=コ「K+1%」ディレクターは2020年に続き2度目の出展だった。スドは、「ヨーロッパにおいて、3年前とサニタリーショーツをめぐる消費者のリテラシーが大きく変わったことに驚いた」と言う。3年前、欧米ではナプキンやタンポンと併用するサニタリーショーツはほとんど存在せず、“サニタリーショーツとは何か”という説明から入る必要があった。それが日本同様、この3年間で吸水ショーツが一気に広がり、サニタリーショーツへの理解も高まった。その一方で、下着の展示会で、ブラジャーとサニタリーショーツだけでは実績に結びつきにくいという3年前の反省から、23年春夏より、ブラジャーにコーディネートできるボトムスを、サニタリーショーツ、ソング、普通のショーツの3タイプそろえた。ヨーロッパではシンプルなデザインの中にもセクシーさを求められるため、シアー素材を効果的に取り入れ、カラフルなカラーレンジで展開。22年夏に発売したウエアラインの“カドル”も展示。間口を広げたことで、ブランドの奥行きを見せられ、商談の幅も広がった。
スドは英語も堪能で商談は問題ないが、3年前に、日本人1人だとブースに入りにくいと感じたため、今回はイギリス出身の海外セールス担当もブースに立った。同ブランドは来年も出展予定。彼女は、「継続出展することで認知も高まり、それだけ体力のあるブランドだと認識してもらえる」と話す。また「ファッションブランド同様、日本のランジェリーブランドも世界に通用するはずだ。そのために、『パリ国際ランジェリー展』に参加し、チャレンジし続ける」と続けた。
「プントゥ」 ブランドの背景やデザイナー自身への質問が相次ぐ
初出展した京都発ブランド「プントゥ(PUNTOE)」。ゴムを極力使わないシルクランジェリーブランドとして14年に設立し、20年には環境に負担をかけないものづくりを目指して、植物染めのブランド「ニュアラ(NUALA)」をスタートした。両ブランドを手掛ける松本奈月デザイナーは「ブランドを始めた理由や設立の経緯、下着作りをどこで学んだかなど、ブランドの背景について熱心に聞かれた」と話す。製品および植物染めの原料を透明の筒に入れたハンガーに多くの人が興味を持った。松本は、「シルクの原産国や生産地を聞かれることが多く、政治的な見解から中国産シルクを使用していることに抵抗を感じる人もいた」と言う。
同ブランドは海外進出しようと動き出したところでコロナ禍に突入し、仕切り直しとなった。今回ビジネス感覚をつかみ、来年以降も継続して出展して足場を固める計画だ。
出展料2倍でも価値がある“エクスポーズド”エリア
「K+1%」と「プントゥ」がブースを設けたのは、「パリ国際ランジェリー展」内の“エクスポーズド(EXPOSED)”というエリア。このエリアはファッションウェブサイト「ザ シェイプ オブ ザ シーズン(THE SHAPE OF THE SEASON)」を主宰するマチュー・ピネ(Mattieu Pinet)がオーガナイズするエリアで、出展する前にピネによる審査があり、出展料は他スペースの約2倍だ。ただし、このエリアに出展することは、市場で最もクリエイティブなブランドとしてのお墨付きになり、来場者の注目度は一気に高まる。毎日開催されるファッションショーにも参加でき、トレンドフォーラムで紹介されるチャンスも増えることから、そのエリアに出展する価値は十分にある。