「コーチ」の2023年秋冬コレクションがニューヨーク現地時間の2月13日にパーク・アヴェニュー・アーモリーで行われた。デザイナーのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)の親密な空間の中でショーを行いたいという思いから、ショーはごく限られた関係者を招いて同会場の歴史やクラシックな雰囲気が感じられるレセプションルームで行われた。
ショーのオープニングを飾ったのは、胸にリンゴとNYの文字がデザインされたロングニットのドレス。所々がほつれ、古着のような風合いを出している。コレクションノートには「『コーチ』のブランドの核ともなるヘリテージを新しい世代のレンズを通して再考する」と書かれている。“循環をキーワードに再定義されたクラフツマンシップ”というテーマも加わり、サステナビリティという新たな時代のレンズを通してブランドを次のステップへと昇華させている。コレクションをひも解いていくと再利用素材やリサイクル素材の使用の多さにも気がつくだろう。
ショーの前半はトレンチコートやクロップドジャケットとロングスカートのセットアップなど、「コーチ」ならではの上質なレザーを惜しげもなく使ったルックが目立った。それらのルックはクラシックなアーモリーの会場とマッチし、洗練された品のあるブランドイメージを醸し出している。得意とするレザーでは今回初めてレザーの切れ端から生まれたアウターウエアを発表。どこか古着のようなムードを纏う愛着の出るデザインに仕上がっている。コーディネートで合わせられたシューズは、役目を終えた「コーチ」のバッグをアッパーに再利用したものだ。
レザーのアウターやセットアップも印象的だったが、ボリューム感のあるシアリングシリーズはすぐにでも買いたくなるアイテムが次々と登場した。グレートーンのシアリングコートや一際目を引いたメタリックイエローのコートは表面に古着のようにくたびれたような加工が施され、変わらない価値のアイテムがこれからも愛され続けていくことを証明しているかのようだった。ビッグシルエットも懐かしさを感じさせる。ジュエリーが埋め込まれたシアリングコートは「コーチ」のクラフツマンシップが感じられるラグジュアリーな仕上がりだ。
重厚感のあるレザーやシアリングシリーズと対照的に、軽やかなシルクシフォンのドレスはログウッドやベニバナ、マリーゴールドなど天然染めしたカラフルながらも優しい色味が新鮮だ。パターンカットで出た切れ端を装飾に使うなど、廃棄物を最小限に抑えたデザインになっている。
ショーでコーディネートされたバッグの2個持ちも可愛らしいアクセントとなっていた。特に目立った“コーチ シェイプ”のミニバッグはウサギやバナナ、魚やリンゴなど、心躍るデザインばかり。オーバーサイズのバッグと合わせるなど、クラフツマンシップを活かしながら遊び心も加えている。今回モデルはストリートキャスティングされ、さまざまな個性のモデルたちが登場し、ジェンダーレスなスタイルも時代を反映させるとともに、さまざまな人々の個性やコミュニティが混在するニューヨークという街を表しているようだ。