ニューヨーク・ファッション・ウィークの最終日となる2月15日(ニューヨーク時間)、実質的にはトリを務める形で「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」の2023-24年秋冬コレクションが発表された。ショーの前日、ブライアントパークにあるオフィスに招かれた際、マイケル・コースは今回のコレクションについて「強さと芯がある、私のミューズでもある女性にインスパイアされた。その中にはもちろん、スポーツ選手でフェミニストでもあった私の母もいる」と語ってくれた。「かつて住んでいたグリニッジビレッジは、ボヘミアンカルチャーを語る上で重要な場所。私に影響を与えたミューズたちや私の過去の経験からもインスパイアされたコレクションだ」。コレクションのムードボードの中にはオノ・ヨーコ(Yoko Ono)やティナ・ターナー(Tina Turner)、ジェーン・フォンダ(Jane Fonda)、グロリア・スタイネム(Gloria Steinem. フロントローでコレクションを鑑賞)の姿があり、中央には実母の写真が確認できた。今シーズンは、70年代のヴィンテージボヘミアンを現代風に解釈したアーバンボヘミアンのスタイルに焦点を当てた。
ショーに登場したのはフリンジやスエード、フレアパンツなど、いわゆる70年代のボヘミアンルックのディテールを落とし込んだ、キャメルカラーやブラウン、グレー、ブラックといったシックなワントーンコーディネート。時折ダークトーンでまとめたレオパードプリントが差し込まれている。イタリアンヘリンボーンのシンプルなコートには、今回のコレクションでキーアクセントとして使用したワイドなヒップスラングベルトをコーディネートし、スタイリング全体を引き締めている。自身を“カシミア アディクト”と称するマイケル・コースはカシミアも多用。カシミアフランネルのフリンジスカートや、ダブルフェイスのカシミアコート、軽やかなシフォンジャージーとカシミアのコンビネーションドレスもエレガントだ。ワントーンでまとめたコーディネートに差し込まれる大ぶりの鉱物を使ったネックレスも存在感を放っていた。
コレクションの中で注目してもらいたいポイントとして挙げたのが、歩くたびにエレガントに揺れるフリンジやパンツの裾など、ボヘミアンの要素を取り入れた動きのあるディテールだ。スエードレザーのフリンジミニドレスやニットフリンジのスカート、ショールやクラッチバッグにもフリンジを用いた他、後半に登場したスパンコールが光るフレアジャージーのパンツもモデルの動きに合わせて優雅に揺れた。ボヘミアンズたちがドレスアップして夜の街に繰り出す光景を思い浮かべたが、色使いや素材使い、コレクションから醸し出されるエレガントさに包まれると、これはマイケル・コースのレンズを通してモダンに昇華されたボヘミアンスタイルだと腑に落ちる。
「私は自分の服を着ている女性を見るのが好き。だからファッションショーでも奇抜な服は出さず、リアルなものを好む。タイムレスで長く着てもらえるものを作りたい。タイムレスとは奇抜さではなく、記憶に残るもの」。顧客は3世代にもまたがるという「マイケル・コース」は、タイムレスなデザインを生み出し続けている。「ファッションショーでも、若いモデルだけを起用するのは好きではない」との言葉通り、スーパーモデルのリヤ・ケベデ(Liya Kebede. 1978年生まれ)もランウエイを闊歩した。エレガントで華やかなボヘミアンスタイルはタイムレスなものだろう。