「グッチ(GUCCI)」とその親会社であるケリング(KERING)は1月28日、「グッチ」の新たなクリエイティブ・ディレクターとして、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のメンズ&ウィメンズのプレタポルテ・コレクションを統括するサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)=ファッション・ディレクターを任命した。2022年11月にアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)前クリエイティブ・ディレクターが退任して以降、誰がその後任となるのかは大きな注目を集め、さまざまな憶測が飛び交っていたが、今回の起用は予想外だったという業界関係者がほとんどではないだろうか。ここでは、デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターの任命に関するアナリストや専門家らの意見を紹介する。(この記事はWWDジャパン2023年2月13日号からの抜粋です)
デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターは、イタリア・ナポリで育ち、2005年に「プラダ(PRADA)」でキャリアをスタート。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」を経て、09年に「ヴァレンティノ」に入社。昇進を重ね、現在はピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)=クリエイティブ・ディレクターの右腕として活躍している。その職務を終え次第、「グッチ」に加わるという。
ラグジュアリー業界の人材リクルーターは、「デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターはメンズウエアでの経験が豊富で、ニットウエアについても造詣が深い。バランス感覚に優れ、粘り強く、商業的な面への目配りも利いている。仕事のプロセスは非常にクリアで体系的。(前任者とはタイプの異なる)同氏を起用するということは、『グッチ』は大胆な革新を求めているのではないか。その場合、デザインチームも大幅に刷新される可能性がある」と述べた。
こうした見方をする関係者も多いが、これはフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)とマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)=グッチ社長兼CEOが、「グッチ」を“真のラグジュアリーブランド”にするべく、ミケーレ前クリエイティブ・ディレクターにデザインの方向性の変更を求めたことが“決別”の要因となったのではないかと臆測されているからだろう。情報筋によれば、ピノー会長兼CEOはいわゆる“スターデザイナー”を全ての中心とするのではなく、クリエイティブ・ディレクターを頂点に置きつつも、その下にジュエリーやビューティなどいくつかのキーポジションを設けて責任範囲を分担させるなど、クリエイティブ部門をより組織化することを目指しているという。
アナリストらの見解は?
米投資銀行バーンスタイン(BERNSTEIN)のルカ・ソルカ(Luca Solca)=シニア・アナリストは、今回の人事を好感しているとコメント。「デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターには、『グッチ』のクリエイティブ部門のトップという大役を果たすために必要な人間性、野心、意欲が備わっている。同氏は世界中の視線が注がれる中、今後の『グッチ』にふさわしい、オリジナリティーあふれる魅力的な作品を発表しなければならないが、そのプレッシャーに負けることなく勇気を持って踏み出す必要がある。最近の『グッチ』は、“かつての『グッチ』を水で薄めたようだ”と酷評されることもあった。よりタイムレスなブランドとなるには、『グッチ』らしさを強く打ち出し、顧客を呼び戻さなければならない」と分析した。
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