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猫狂いの最高峰? 猫に魅せられた文豪たち 【ニャンダフルなコスメたち】最終回

 狂ったように猫を溺愛する美容ライターが、猫と美容を強引に結びつける力技ビューティコラムVol.42。猫にちなんで、毎月2(ニャー)日と22(ニャーニャー)日の2(ニャー)回更新しています。昨年のスーパー猫の日には、猫の美に魅せられたアーティストたちの猫狂いエピソードをお届けしましたが、今年はその「文豪編」。文豪たちならではの審美眼とユーモラスな考察、そして圧倒的な筆力で語られる、愛と狂気に満ちた猫エピソードをご紹介します。

世界の文豪も骨抜きにした猫の魔性

 レオナルド・ダ・ヴィンチから宇野亜喜良まで、猫は古今東西、多くのアーティストたちから愛でられてきたが、それに負けない凄まじい熱量で、後世に名を残す文豪たちからも寵愛を受けてきた。

 アーティストも文豪も、猫が創作のインスピレーションソースとなっていることは同じだが、当然、表現の手段が違う。アーティストはその美しさや愛情を視覚的に伝えてくれるが、文豪たちは鋭い観察眼と圧倒的な筆致により、猫の何が愛おしく、どこに美を見出しているのかをより奥深く知ることができるのが面白い。その視点は、優しく温かくユーモラスで、ときに狂気を感じることもあるが、猫という存在が他のいかなる生き物とも違う特別な引力を持った魔性の生き物であることを、改めて思い知らされる。

 世界の猫好き文豪と言えば、『トム・ソーヤーの冒険』でおなじみのマーク・トウェインや、詩人・小説家・劇作家・映画監督と芸術分野で多大な影響を与えたジャン・コクトーが有名だが、相当数いるという。一人一人猫エピソードをお伝えしたいところだが、今回は日本の文豪に絞ってご紹介する(ちなみに、マーク・トウェインは一度に19匹もの猫と暮らしていたかなりの愛猫家。人間よりも猫といることを好み、抱っこしたり肩に乗せたりしているポートレートが数多く残る)。

紫式部も猫好きだった……かもしれない

 まずは、世界最古の長編小説で知られる『源氏物語』の作者・紫式部から。『源氏物語』の重要なシーンに猫が登場することから、「紫式部は猫好きだった」説があるという。

 猫が登場するのは、第三十四帖「若菜上」。太政大臣の息子・柏木が仲間と蹴鞠に興じているのを光源氏の正妻・女三の宮が御簾越しにこっそり覗いていたところ、2匹の猫が追いかけっこを始め、猫を繋いでいた紐が絡まって御簾が上がってしまい、柏木に姿を見られてしまうというハプニングが発生。柏木は女三の宮の美しさに恋心を募らせ、ついには密通するまでに・・・というエピソード。つまり、女三の宮と柏木が不倫に陥るきっかけとして子猫が描かれているのだ。

 猫が登場しただけで猫好きにするのは少々強引な気もするが、平安時代、猫は貴族たちのペットとして愛でられていたため、紫式部が猫をかわいがっていてもおかしくはない。宇多天皇も日本初の「猫日記」をつづっていたほどの愛猫家だったというし、インスピレーション源として役に立っていたというのは大いにありえる。何より、猫の無邪気さや可愛らしさ、そして「猫がやったことは仕方がない」というスタンスは、どれだけ時代を遡っても変わらないということがよくわかって興味深い。

愛おしい?ドン引き? 猫好き文豪、珍エピソードの数々

 お次は日本の文豪の中でもトップクラスの愛猫ぶりで知られる大佛次郎。生涯でともに暮らした猫の数は500匹を超え、家には常に10匹以上の猫がたむろしていたという。猫との付き合いは少年時代からで、遊んでいる最中に亡くなった猫のことを思い出しては、誰にも見つからないようにその墓へ行って土を撫でた・・・というほっこりエピソードも残されている。そのほかにも、お風呂の蓋の上で暖をとっている猫に遠慮して浴槽に入らず小桶の湯を浴び続けたり、猫が自由に出入りできるように障子には常に穴が開けられているため冬は寒い思いをしていたり、猫たちが喧嘩をしないように、食事の時は15の茶碗を並べてやったりと、とにかく猫ファーストな暮らしぶりで、生涯猫を愛し、愛され続けた。ちなみに、『鞍馬天狗』『パリ燃ゆ』『赤穂浪士』など数々の大作を遺してきたが、49歳のときに発表した童話『スイッチョねこ』が一世一代の傑作だと語っている。

 谷崎潤一郎も猫愛の強い文豪として有名。「動物中で一番の縹緻好しは猫族類でせうね。(中略)どれが一番いゝかと云へば猫ですね。(中略)そこへ行くと猫の鼻は理想的です 長からず短らず、ほどよき調和を保って、眼と眼の間から、口もとへスーッとのびる線の美しさは何とも云へない。中でもペルシャ猫のが一等よろしい。あんなにキリッと引き締ったいゝ顔をした動物が他にあるでせうか」と、女性美やエロティシズムなどをテーマにしてきた谷崎らしい視点で賛美している。ただ、猫ならなんでも愛したわけではなかったようで、「日本の猫が嫌ひ」で、ペルシャ猫など「外國の好い猫」を好んでいたという。このあからさまな差別が引っかかるが、ともに暮らしたペルシャ猫「ペル」への溺愛ぶりは凄まじく、口移しで餌をやって志賀直哉を閉口させたり、亡くなった後に剥製にしてまで側においたりとドン引きエピソードも数多く残っている。

 そのほかにも、猫のために火鉢の熱さを調整してあげたていた室生犀星(実際に、室生と火鉢にあたっている猫の写真が遺されており、それが悶絶級に可愛い)、机の中に常に猫にあげる用の煮干しを常備していた三島由紀夫、新聞に載っていた子猫の切り抜きを書斎の引き出しにこっそり入れていた水木しげる(漫画家だが)などなど、本当に猫好きが多い。しかし、猫好き文豪たちの中には「偏屈じじい」だの「大変人」だのと作品の素晴らしさとは裏腹に人間性への評価が微妙な人も少なくないが、猫の前ではみんな乙女のように従順になるのはなぜだろうか。猫に「理想の女性」や「魔性」を見ているのか、単純に崇めたくなるほど美しいからなのか。興味は尽きない。

今年も続々登場! ルックスよし、つけてよしの最新猫コスメ

 今回も、猫愛あふれるビューティブランドからの新作アイテムをご紹介。猫型リップや石けんから猫の毛柄をイメージしたネイルで、猫の美にあやかろう。

 「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」からは、今年もニャンダフルなサマーコレクションがお目見え。注目は、猫のように気ままに色と煌めきで遊ぶアイシャドウ・チークが5色入ったプレイフルな“メイクアップ パレット”と、夏色をまとった猫型のUVリップ“リップスティック UV リミテッド”。デザイナー・ソフィーの愛猫ジプシーとロゴをグラフィカルにちりばめた、夏らしく爽やかなパッケージもキュート。


 猫好きな人へのギフトとしても人気の「9.kyuu」の石けん“ハコイリ12cats”に、2月9日生まれの《ミケ》が仲間入り。カラフルな三毛猫柄も、イランイランやラベンダー、パチュリをブレンドした甘く華やかな香りもすべて植物由来。美容洗顔石けんとしてはもちろん、ボディにもデリケートゾーンにも使えるほど肌に優しく、エコなのもGOOD。なお、売上金の一部は保護猫活動団体に寄付される。


 猫の美しさと可愛さを指先にのせて楽しむ、セルフジェルネイル。猫のしなやかさ、美しさ、強さ、可愛さを表現したリアル感のある猫柄と、トレンドカラーや柄を組み合わせたデザインが新鮮! ナチュラルにさりげなく猫ネイルを楽しむなら、透明感のある淡いベージュ×ブラウンの絶妙なマーブル模様で猫の優雅さを表現した「N Muted」、トレンド感も狙うなら、レトロなべっこう柄×パステルミントの「N Leon」を。

 全国の猫狂いの皆様に支えられてきたこちらの連載は、本日をもって一旦終了。これまで月2回更新してきましたが、今後は毎年猫の日(2月22日)の年一回、風物詩的に更新となりますので、しばしお別れです。1年8カ月、ご愛読いただきありがとうございました。また来年お会いしましょう!

出典
『猫』中央公論社
『大佛次郎と猫 500匹と暮らした文豪』小学館
『作家と猫』平凡社
歴史スター名鑑「紫式部は猫好き? 源氏物語にも猫を登場させていた!」
AERA dot.「谷崎潤一郎は口移しで餌、開高健は剥製に…文豪たちの溺愛“飼い猫”エピソード」

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