2023年2月20日号の「WWDJAPAN」はファッション業界の「お仕事図鑑」と題して、実際に業界で働く人に仕事内容やそこに至るまでのキャリアについて聞いた。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「セリーヌ(CELINE)」「フェンディ(FENDI)」といったブランドの親会社で、ファッションからビューティ、スピリッツ事業まで21の法人と41のメゾンを持つLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン ジャパン(LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton Japan)から、さまざまな職種を紹介。約8900人(2022年時点)のLVMH ジャパン社員の中から、好きから仕事を広げて活躍する11人のお仕事を紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年2月20日号からの抜粋です)

【MAKE UP FOR EVER】
メイクアップフォーエバー
デジタル&コンシューマー・エンゲージメント・スペシャリスト
【奥原真理子さんのキャリアパス】
早稲田大学社会科学部に入学しサークル「早稲田大学マーケティング研究会」に所属
▶︎大学在学中の2014年、エストニアの国立タルトゥ大学へ交換留学
▶︎大学卒業後17年にQVCジャパン入社、デジタル・マーケティング部に所属
▶︎20年4月に「メイクアップフォーエバー」を展開するエル・シー・エスに入社し現職
【デジタル&コンシューマー・エンゲージメント・スペシャリストの仕事とは】
売り上げアップと消費者体験向上のため、公式サイトやECサイトのコンテンツやキャンペーンの立案、企画実行・実装を行う。それにまつわるクリエイティブの手配や、場合によってはサイトの仕組みを変える業務も担う。企画立案は、デジタル上のあらゆる数字データの分析を基に行う。検索広告やSNS広告も担当する
デジタル時代のカスタマージャーニーを設計
奥原真理子さんは学生の頃から消費者心理学や行動経済学への関心が強く、卒業後はテレビ通販大手QVCジャパンに入社し、デジタルマーケティングの部署で主にプロモーションの仕事に従事した。「化粧品はマーケティングの対象として非常に面白い商材」との思いから3年後に転職した。奥原さんが入社するまでデジタル担当者は1人が兼任で担っていたが、専任担当者として引き継ぎ、「デジタルでお客さまと接するところは全て担当する気持ち」で職務にあたる。入社した2020年4月以降、自社ECサイトを整えるとともに、着任時は他社ECモールなどを含めて3サイトしかなかった販路を7サイトに増やし、22年のEC売り上げは19年比で約3倍に成長させた。
日々の仕事の主軸となるのは、デジタル上の数字の分析だ。ブランドの公式サイトに始まり他社ECからSNSまであらゆるデジタル上の数字を収集し商品が売れた理由、売れない原因を分析し、次の販売促進計画を立案する。ビジネスのプランニングから、他部署と連携したコンテンツの実装までを手掛ける。企画により関わる人は社内外で多岐にわたる。百貨店バイヤーや外部ECサイトの営業担当者から、社内のロジスティクス担当者や商品登録担当者、エンジニアやデザイナーまで密に連携する。
「大学で学んだマーケティング理論が現在の思考に役立っている。認知から購入までのステップなど座学で学ぶ基礎が非常に役立つ分野」と話す。仕事の醍醐味は、施策の成果を計測できる範囲が広いことだという。「例えば、実店舗では通り過ぎたお客さまが何回商品を見たかは分からないが、ウェブは何人がサイトに来て、何回ページを見て、何回クリックしたかまで分かる。膨大な情報を精査しなければならないが、データからお客さまの心理を読み取り仮説を立て施策を実行する。計画、実行、測定、対策のPDCAをどんどん回せるのがデジタルの面白いところ」と話す。
今後の展望については、「デジタルはARやAIなどのツールが日々進歩しており、企画立案において選択肢が増え複雑になっている。最近は、使用方法や仕上がりのイメージを伝える動画に注力している。最適な方法で商品の機能性の高さを伝え、ブランドの認知度向上につなげていきたい」と語った。