ファッション
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ

国内ユニクロ事業の賃上げ報道から生産性について考える【齊藤孝浩のファッション業界のミカタVol.46】

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 企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はファーストリテイリングの賃上げのニュースから生産性について解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年2月13日号からの抜粋です)

 そもそも従業員はみんな賃上げしてほしいと思っていますよね。でも企業としては、ない袖は振れないじゃないですか。そして、その原資になるのは、やはり生産性。一人の人がどれだけ売って、どれだけ粗利を稼ぐか。その粗利という原資がないと人件費は払えません。ということで、今回は生産性と労働分配率について見ていきましょう。

 実は、各企業が一人当たりどれぐらい稼いでいるかという数字が、決算書の中にあります。ファーストリテイリングであれば、ファクトブックの中の「国内ユニクロ事業 主要経営指標」に、「一人当たり売上高」が掲載されています。大手上場3社の数字も有価証券報告書に掲載されていますので、国内ユニクロ事業(以下、ユニクロ)と比較してみましょう。ユニクロは一人あたり年間3000万円弱を売っています。しまむらは、なんと一人3800万円売っています。

 ただ、原資になるのは売り上げではなく、粗利ですから、一人当たりがどれぐらい粗利を稼いでるのかが重要です。一人当たりの売上高は、ユニクロよりしまむらの方が高いですが、粗利率が低いので、一人あたりの粗利高では、ユニクロが逆転します。

 これらは年間の話なので、それを実務ベースで考えるために、一人1時間当たりにしたのが「人時売上高」で、粗利率をかければ「人時生産性」です。一人当たりの売上高・粗利高を法定労働時間、つまり2000時間で割ると求められます。すると、やっぱりユニクロの生産性は高いんですよね。

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