ファッション

ロシアによる侵攻開始から1年 ウクライナ人デザイナーがファッションショーを通じて平和への支援を呼びかけ

 2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から1年がたった。しかし、いまだに現地では激しい戦闘が続き、多くの被害や犠牲者を生んでいる。そんな中、首都キーウで開かれていたウクライナ・ファッションウイーク(以下、UFW)は先シーズンに続き、2023-24年秋冬シーズンも現地開催を断念。ヨーロッパ各地のファッション・ウイークの協力により、今も国内にスタジオや生産拠点を構えてクリエイションを続けるブランドに発表の機会を提供している。

 UFWは今季、新たにロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)とパートナーシップを締結。LFW最終日の2月21日に、3ブランドが合同ショーを開催した。会場に入ると、座席にはウクライナ国旗のハンカチが入った封筒があり、封筒にはデザイナーたちのメッセージが綴られていた。「私たちは懸命に創造する。コレクションを生み出すことは、私たちの戦争への抵抗だ。今日、私たちはかつてないほど、生きるための創造性を必要としている」から始まるメッセージには、彼らの切実な思いが感じられる。

 トップバッターの「クセニアシュナイダー(KSENIASCHNAIDER)」は、喜びに満ちた世界への逃避から着想。デッドストックのネクタイをはぎ合わせたスカートやジャケットをはじめ、アップサイクルの手法や環境に配慮した素材を生かし、カラフルで遊び心あふれるコレクションを見せた。また、「アディダス(ADIDAS)」とのコラボによるトラックスーツやブラトップ、スニーカーも登場した。

 3年ぶりのランウエイショーとなる「パスカル(PASKAL)」は、「Out of Cocoon(繭の外へ)」と題したコレクションを披露した。中心となるのは、ガーリー&センシュアルなドレスやスカートスタイル。得意のレーザーカットを駆使した蝶モチーフのパーツが、モデルの動きに合わせて羽ばたくように揺れるのが印象的だ。

 ミュージシャンやダンサーの衣装も手掛ける「フロロフ(FROLOV)」は、設立10周年ということもあり、自身のアーカイブや思い出に着目。コルセットやランジェリーの要素を取り入れたセンシュアルなスタイルを中心に、ハートモチーフのカットアウトやスワロフスキー・クリスタルの刺しゅう、手編みのセーターなどブランドを象徴する要素をミックスした。

 フィナーレには、3人のデザイナーが、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領が立ち上げたウクライナ支援のためのイニシアチブ「ユナイテッド24(UNITED24)」のロゴ入り国旗を掲げながらランウエイに登場。今も空襲のサイレンが鳴り響く祖国が自由と平和を取り戻すための継続的な支援を呼びかけた。

 また、ウクライナブランドの支援を続けるベルリン・ファッション・ウイークでは1月、先シーズンに続き、「ボブコヴァ(BOBKOVA)」が祖国の平和と再生への願いを込め、女性の強さを描いた23-24年秋冬コレクションをお披露目。新たにコンセプチュアルなアイデアが持ち味の「ジュウス(DZHUS)」も、パッカブルなデザインやファスナーによって大胆に変形する新作を発表した。さらにパリ・ファッション・ウイークにも参加している「リトコフスカ(LITKOVSKA)」は、23年春夏のショーを再現。ベルリンのクロイツベルク地区にある第二次世界大戦時のバンカー(えんぺい壕)を改修した美術館で、ウクライナ人女性コーラス隊がアカペラで春と新たな始まりへの希望を歌う中、テーラリングと伝統的なクラフトをミックスしたコレクションを披露した。

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