1月21〜23日の3日間、フランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場で、下着、ラウンジウェア、水着、アクティブウェアを集積した世界最大級のトレードショー「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」と素材展「パリ アンテルフィリエール(PARIS INTERFILIER)」が開催された。リアルでの開催は3年ぶりで、420のブランドとメーカーが出展。99カ国から1万5285人が来場し、38%がフランス国内、62%がフランス国外からという構成だった。アジアからの来場者はコロナ禍前には戻らなかったものの、日本からは4つのD2Cブランドが「パリ国際ランジェリー展」に出展し、存在感を発揮した。世界的な舞台に挑んだ各デザイナーが同展で感じたことなどについて2回に分けて伝える。前編では、「ケープラスワンパーセント」と「プントゥ」を紹介している。
「マイミア」 ポジショニングを再確認した“第2章の始まり”
初出展となった「マイミア(MAIMIA)」は、2019年に「上海アンテルフィリエール」で開催された設立10年未満のクリエイティブなブランドに贈られる「ヤングレーベルアワード」受賞の副賞として、今回出展を果たした。受賞はまだブランド設立から約1年半のとき。当初、20年7月展に出展予定だったが、コロナ禍で延期となった。その間に松屋銀座と西武渋谷店に常設店を構えるまでに成長し、ほぼ一人で運営していたブランドも6人のチームとなった。
神成舞「マイミア」代表兼デザイナーは、「今回の出展で作り手と顧客が似たような生活を送る日本と違い、海外にはさまざまなライフスタイルが存在することを実感した」と話す。多くの人がブースを訪れ、生の声を聞きリサーチを重ねたことで、グローバルに販売する上で、ポジショニングを見つめ直すいい機会になった。「これが“第2章の始まり”になる」と神成。現在、7件の商談が進んでおり、今後も海外への挑戦は続ける予定だ。パリにこだわるのではなく、米ニューヨークとロサンゼルスで開催されているランジェリー展「カーブ(CURVE)」への出展も検討しており、国の助成金の活用や他ブランドとのブースを共有するなどして出展する可能性もある。「日本のクールなイメージを、ランジェリーを通して伝えたい」と、その思いは熱い。
「ナギサ パリ」 出展で共鳴し合える存在との出合い
同じく初出展となった「ナギサ パリ(NAGISA PARIS)」を手掛ける佐野なぎさデザイナーは、17年に自身のブランド設立と同時に渡仏し、現在はパリ在住だ。パリでランジェリーデザイナーとして活動しているが、ポップアップショップなどアウトプットするのは日本。佐野は「パリにいる意味があるのかというジレンマがあった」と話す。顧客の要望に応えるために洋服やアクセサリーも展開しているが、ランジェリーデザイナーとしての原点に立ち返りたいという思いから、ファッションではなく、ランジェリー展への出展に踏み切った。出展するにあたり、主催社の担当者がアトリエ兼自宅に来て、今後のブランドの方向性も含め相談にのってくれたという。
今展では、イギリスの下着・水着の専門店「アンジェラ ナイト ランジェリー(ANGELA KNIGHT LINGERIE)」での取引が決まったほか、ショーツブランド「ラ シャット ドゥ フランセーズ(LA CHATTE DE FRANCAISE)」とのコラボも進行している。「万人受けするブランドではないが、出展すれば共鳴し合える存在に出会える」と自信を見せる。今後も、毎年ではなくても、無理のない範囲で出展するようだ。
“横のつながりができたこと”に確かな手応え
今回出展した4ブランドが共通して口にしたのは“横のつながりができたこと”への充実感だった。「ナギサ パリ」の佐野が「出展者はライバルというより同志」と言うように、日本のブランド同士はもちろんのこと、海外ブランドとの交流も活発だった。「ケープラスワンパーセント」のスドは、「横のつながりが刺激や勉強になり、モチベーションにもなる。情報を共有することで世界の情報が入ってくる」と収穫を語った。「マイミア」の神成は「小さなブランドだが、商談に直結しない大手素材メーカーとも交流が持てた」と話す。
一度出展して取引先が決まるほど海外進出は簡単ではない。それでも、それぞれ確かな手応えを感じている。日本のランジェリー業界に新風を吹き込んでくれることを期待したい。