フランス東部・アルザス地方の「ミュルーズ染織美術館」は、約600万点の染織資料のアーカイブを所蔵する、世界でも類を見ない美術館だ。世界的なメゾンのデザイナーをはじめとして、各国のクリエーターたちがインスピレーションを求めてここに足を運ぶ。
所蔵するアーカイブはアレンジ自由
着想から新たなデザインを作り出す
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同美術館は1857年創立。古くから良質な水資源を生かして織物産業が発達したミュルーズは、プリントや流行の発信拠点として名を馳せた。その後「ミュルーズ染織美術館」は150年以上にわたり、世界中の優れた染織資料を収集し続けてきた。
だが、同美術館が世界のクリエーターの注目の的となっている理由は、その歴史の深さだけでは語れない。所蔵する染織資料は、全てアレンジ自由。デザイナーたちは膨大なアーカイブを着想源とするのみならず、そこに何かを足したり、掛け合わせたりして、全く新しいデザインを生み出すことができる。染織資料のアレンジにおいて、制約はほとんどない。「ライセンス商品のアプルーバルを取得する過程においても、(美術館の対応は)柔軟で寛大。むしろ、大胆にアレンジを加えるくらいが喜ばれる」と豊島の担当者は明かす。
3シーズン継続の「スタイリング/」
スタッズでエッジィにアレンジ
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日本では、ライフスタイル提案商社の豊島が2013年から同美術館のサブライセンシーとしてアパレル・服飾雑貨を生産・販売する権利を保有している。同社と協業し、「ミュルーズ染織美術館」のアーカイブデザインを使ったカプセルコレクションを継続的に展開しているブランドの一つが、マッシュスタイルラボの「スタイリング/(STYLING/)」だ。コレクション第3弾となる23年春夏は、シーズンテーマの“ボーホースタイル”を「ミュルーズ染織美術館」のシグニチャーであるペイズリー柄で表現。フラワーモチーフにスタッズを散らばせ、ブランドらしくエッジィにアレンジした。
高感度な顧客にこそ刺さる
毎シーズン収集する顧客も
スタイリストの白幡啓がディレクションする同ブランドは、主に30代以上の大人の女性に向け、マニッシュでエレガントなスタイルを提案する。高感度な顧客を抱えるからこそ、他のブランドにはないデザインが求められている。白幡ディレクターは「ミュルーズ染織美術館」について、「安心感のある柄のバリエーションはもちろん、私たちではたどりつかないようなインスピレーションを与えてくれる。そこに、自分たちならではのオリジナリティーを加えることもできる」と魅力を語る。「ブランドの顧客さまには、毎回『ミュルーズ染織美術館』のシリーズを楽しみにして、コレクションされている方も多い」。
過去を蓄積するだけでなく
新しいストーリーを紡ぐ
アレンジされた新たなデザインは、再び美術館に所蔵され、未来へと受け継がれていく。「私たちが作り出したデザインが、またどこかで誰かの手によってリアレンジされる。そんな未来を楽しみにしたい」と白幡ディレクター。
長い歴史と伝統がありながら、それに縛られることはない。常に“今”を生きるデザイナーのクリエーションを尊重する精神が、「ミュルーズ染織美術館」には脈々と流れ続けている。過去を蓄積するばかりでなく、デザイナーのクリエーションからまた新たなストーリーが紡がれていく。この循環こそが、「ミュルーズ染織美術館」の価値の源泉であり、世界中のクリエーターを魅了し続ける理由だ。
豊島 営業企画室
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