よーじやグループ(京都市)は、ジェイアール京都伊勢丹の3階「キレイテラス」に新コンセプトの店舗を22日オープンした。観光客を中心ターゲットに据えてきたこれまでの戦略を見直し、「脱観光依存」を掲げて取り組む初の常設店となる。
新店舗は白とグレーを基調としたシンプルで飾らないデザインが特徴で、従来の京都らしい和のイメージから一新させた。取り扱い商品も、看板商品である"あぶらとり紙"だけでなく、日常使いのスキンケアアイテムを多数取りそろえた。地元客も含めた幅広い客層へのアプローチが目的だ。
よーじやは1904年に芸妓や歌舞伎役者向けの化粧道具を扱う行商として創業。1990年のあぶらとり紙ブームで全国的に有名になり、京都土産として観光客から圧倒的な支持を集めてきた。90年代に2店舗しかなかった直営店は、2000年代半ばには27店舗まで拡大。その後、右肩下がりの状態が続き、観光に依存しすぎる状況に危機感を抱いた創業家5代目の國枝昂社長(33)は、入社当初から観光業に依存しない経営を目標の一つに掲げてきた。新型コロナウイルスの感染拡大で、その思いを一層強くする。
「コロナ前のインバウンド比率は約4割、国内のお客さまを合わせると9割近くが観光客によるものだった。しかもコロナ禍でもECサイトの売り上げが全体の7%ぐらいまでしか伸びなかったのは、よーじやの商品がないと困る人がほとんどいなかったということ。観光客向けはこれまで通り大事にしつつ、それ以外の売り上げもしっかり取っていけるブランドに転換し、2回目以降も来店してもらえる店作りが必要だった」
店舗休業を余儀なくされ、売り上げが激減するなか、脱観光依存の取り組みを本格的にスタート。カフェ事業など地元客の来店を促す取り組みを進めた。
ただ、観光依存体質から脱却するには、顧客やディベロッパー、従業員の理解を得る必要がある。そこで、22年3月と同年7月~12月の2回にわたって、ジェイアール京都伊勢丹でポップアップイベントを開催した。和や京都らしさといったイメージよりも 、商品そのものの良さで選んでもらえるよう、商品の選定や季節感のあるディスプレイなどを工夫した。客層も40~50代が多かったこれまでと異なり、20~30代の獲得を狙った。その結果、3月には予算比195%、7~12月には同150%の売り上げを達成。若者も含め、幅広い年齢の客が訪れたという。「常設化してほしい」 「あぶらとり紙以外にも商品があることを知った」 という地元客の声が、新コンセプトの店舗を後押しした。
「イベントでは京都らしさを期待されることが多いのですが、実は売り上げ上位の商品はスキンケアアイテムで、京都らしさが売り上げにつながっているわけではない」とし、新店では日常使いできるブランドへの転換を目指している。
「よーじやというブランドやロゴが京都のものだという認識は定着していると自負している。京都に頼り切ったブランディングから京都を利用したブランディングに変えていく狙いがある」と國枝社長。例えば、「京好み あぶらとり紙」の文字が並ぶロゴデザインは、以前だと文字部分を切り離して使用できなかったが、いろんな場面で柔軟に対応できるよう、手鏡の部分だけを使用できるようにした。桜のシーズン向けに、キャラクターの通称〝よじこさん”には、桜の髪飾りが描かれている。
昨年は、地元客向けに手頃な価格で十割そばを食べられる蕎麦屋「10そば」を京都市内にオープン。國枝社長は「伝統や常識にとらわれずに、脱観光依存にチャレンジしていきたい」と意欲を見せる。