ファッション

LAで“アンチ・ファッション・ウイーク”開催 主催者は「今後は他の都市にも広げたい」

 ロサンゼルスのダウンタウンでこのほど、アンチ・ファッション・ウイーク(Anti Fashion Week)が開かれた。サステナブルなブランドだけを集めて開かれたというイベントは、ファッションショーの終了後、ランウエイに現れたアイテムをすぐに購入できる“シー・ナウ・バイ・ナウ(See Now Buy Now)”も行い、盛り上がった。会場は色とりどりの生花で彩られ、参加者一人ひとりに合わせて花束が作られ、“アンチ”を名乗りつつも終始和やかなムードに包まれた。とは言え投げかけるメッセージは、ファッション業界による環境破壊、過剰なプロデュースや消費、短期間で使い捨てるマーケティング戦略への警鐘が含まれている。イベントの開催について、ファウンダーのエリザ・C・グレイ(Eliza C. Gray)に聞いた。

 彼女はこれまで、ブランディングやeコマースのコンサルティングをはじめ、ウェブやパッケージデザイン、ストアのディスプレイなどを通して、ラグジュアリーブランドをメインにさまざまな形でファッション業界の最先端と携わってきた。その際、ローカルブランドはクラフトショーやフリーマーケットでしか見かけることができず、ウェブやインスタグラムでいちいち検索していたそう。「そこでローカルのラグジュアリーなハンドクラフトだけを集めたプラットフォームを作ろうと、昨年に準備を始めたの」と笑顔で話す。

 行動力のある彼女は、さっそく友人で共同創始者のジュリア・V・カプラー(Julia V Kappler)とともに、わずか8カ月の準備期間でイベントを実現させた。「彼女はデザインや建築業界でのキャリアがあり、ヨーロッパのアパレルブランドにも精通している才女。数年前に自身のサステナブルなストリートブランド『デボーク(DEVOKE)』も立ち上げ、その経験をフルに活かしてくれたの」。

 初回は、LAを拠点とする17ブランドが参加。ブランドのセレクトは、実際に目で見て、手で触り、試着するなど、五感をフルに使って丁寧に行った。「最近当たり前の、ネットでリサーチして、メールで商談するという人間味のないコミュニケーションを避けて、オフィスに出向いて、相手の目を見て、話し合い、一歩一歩確実に進めたわ」。結果、参加ブランドとのコンセンサスが取りやすく、全体のまとまりも生まれたという。

 会場を見渡すと、アパレルやジュエリーだけでなくライフスタイル系のブランドなど豊富なセレクトが印象的だ。いくつかのブランドを紹介しよう。

 ユニセックスのアパレルブランド「ライアン・アンド・リース(RHYAN & RHYSE)」。デザイナーのフィリップ・ライアンチャイク・オコンマ(Phillip RyanChike Okonma)によるアーティスティックな発想から誕生したブランドは。かつての洋服をリサイクルして新たな目的を与える“リパーパス”により作られるため、リミテッドや一点モノがほとんどで希少性は高い。ジュエリーデザイナー、クリスティーナ・ベイダー(Kristina Bader)によるラグジュアリー・ジュエリーブランド「サオティ・ジュエリー(SA’OTI JEWELRY)」は、デザイナーによるハンドクラフトでオーダーメイドも人気という。「サオティ」とはアラビア語で「マイ・ボイス」という意味だそう。

 キャンドルをメインに扱う「サン・ムーン・ライジング(SUN MOON RISING)」は、コロナ禍初期の2020年に誕生。デザイナーのアシュリー・シモーネ(Ashley Simone)が“愛と光“を注ぎ込ぎ、一つ一つ手作りしている。メッセージを焼印した香木のパロサントも人気だ。

 参加ブランドの一つには、LA在住の日本人デザイナー、タカコ・サイトウが手がける「サイ(SAI)」も。オーガニックコットンを使用したアイテムやハンドクラフトによるニットが特徴だ。日本人らしい繊細さや手先の器用さが光り、好評を博していた。当日は、各ブランドがブースを構え商品を展示。ファッションショーでは、会場中が湧いた。

 「イベント終了後からすぐに参加者や参加ブランド側からの反響があったことが何よりも嬉しかったわ」とファウンダーのエリザ。今後は、LAだけでなく他の都市にも広げたい意向だ。ちなみに彼女はプリントマガジン「ヘニマガジン(HENI MAGAZINE)」も発行している。これまで発行してきた3号はすべて完売したそう。ここには、環境問題を含めサステナブルな情報が詰まっている。

TEXT:MOMO TAKAHASHI

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