タフで動きやすいカーゴパンツが、春夏の本命ボトムスに急浮上してきました。既に有力ブランドのランウエイでは続々と登場済みですが、これまでと違うのはストリート感や武骨さをやわらげているところ。目印の張り出しポケットは残しつつ、ソフトな印象に仕立て直しています。着こなしもフェミニンなトップスと合わせて、テイストミックスに仕上げるコーディネートが新鮮です。
たとえば、「ステラ マッカートニー(STELLA MCCARTNEY)」のホワイト系カーゴパンツは、穏やかな見え具合。両袖をゆるっと遊ばせたニットトップスと合わせることで、さらに優しげなムードに。メッセージ入りのコンパクトなトップスとのボリュームコントラストが、めりはりを生んでいます。今回は、カーゴパンツの進化系をピックアップ。エレガント系とデニム素材、アートプリントの3タイプに注目しました。
シャイニーなサテン系カーゴで
目指すは“エレカゴ”
カーゴパンツを今年仕様ではきこなすには、従来のストリート要素を薄めるアレンジが肝心です。印象を変えやすいのは、ドレッシーな雰囲気をまとわせるスタイリング。表面にメタリックなサテン系のつやめきを帯びたカーゴパンツは、アッパーな“エレガントカーゴ(エレカゴ)”のムードを呼び込んでくれます。
グリッターが復活する今年の流れを先取りしたのは、「フェンディ(FENDI)」の新顔カーゴ。シャイニーな質感がリュクスさを感じさせるパンツは、クラス感たっぷり。アイコンの張り出しポケットは備えながらも、見慣れたカーゴとはまるで別物のようです。グリーンの厚底スニーカーと合わせて、主役感をアップ。反対にニットトップスはコンパクトにまとめて、ボリュームのめりはりを強めました。裾の隙間からチラ肌見せを仕掛けて、ヌーディーさも漂わせています。
2枚目の写真「ヴェルサーチェ(VERSACE)」は、妖艶なムードでカーゴルックを包みました。トレンドのパープルで全体をまとめて、あでやかな装いに。布をふんだんに使ったドレーピーなシルエットなので、原型がカーゴだとはほとんどわからないほど。こういう思い切ったトランスフォームが“ドレッシーカーゴ”の流儀。プリント柄をあしらったロングワンピースをまとってフェミニンさもプラスし、さらにテーラードジャケットを重ねて、重層的なジェンダーミックスに仕上げました。
デニムカーゴは別ムードのトップスで
“ずれ感”を演出
カーゴパンツはワークウエアに起源を持つ点で、デニムウエアとは親戚のような間柄です。もちろん相性も抜群ですが、型どおりの見え具合を遠ざけるには、ひとさじのアレンジが欠かせません。職人の手仕事が光るクラシックなトップスとのコーディネートは、デニムカーゴとの“ずれ感”が際立ちます。
ユーズド感強めのデニム生地でカーゴパンツを仕立てたのは、「ジバンシィ(GIVENCHY)」。味わい深いダメージ加工にも手仕事技を注ぎ込みました。パートナーに選んだのは、ツイード素材のジャケット。さらに、ヴィクトリアン風のフリル使いで飾り立てたブラウスを添えて、ロマンティックなたたずまいに。上半身のクラシカルさとパンツのストリート感が響き合って、極上のミックステイストが生まれました。
2枚目の写真「ディーゼル(DIESEL)」は、過剰なまでにポケットを増殖。大小さまざまな張り出しポケットが、パンツにリズムを生んでいます。デニムカーゴにボリュームがある分、トップスはブラトップ風のコンパクトなデザインで、“引き算”のバランスに。新トレンドの“ランジェリーを街で着る”にもマッチした提案です。小ぶりでありながら、細部まで凝ったトップスのおかげで、程よくセンシュアルな雰囲気に。ボトムスのタフ感と交じり合って、複雑なフレーバーを醸し出しています。
プリント柄で脱・ストリート
取り入れたいのは、チアフルな総柄
カーゴパンツは無地のベーシックカラーというイメージが強いだけに、カラフルなモチーフは、従来の印象を変える絶好のアイデア。艶やかな花柄は、表情をガラリと一新させてくれます。フェミニンなムードを呼び込むうえでも、チアフルな総柄は効果的です。
「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は、ややぼかしをかけたような花柄でセットアップを彩りました。膝上の張り出しポケットがなければ、カーゴパンツとはわからないほどロマンティック。ボリュームもゆったりしていて、リラックスしたムードが漂います。マニッシュなカーゴパンツをファンタジーなムードでまとう好例です。
2枚目の写真「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」は、カモフラージュ柄でカーゴパンツを染め上げました。軍パンを起源とするカーゴだけに、迷彩柄がうまくなじんでいます。アイコンの張り出しポケットは高い位置に左右非対称で配して、動きをプラス。トップスはランジェリー風のキャミソールを合わせて、パンツの武骨さをやわらげました。足元にはヒールサンダルを迎えて、全体にヌーディーかつフェミニンな印象に整えています。
カーゴパンツはこれまでカジュアルなボトムスというイメージがありましたが、バリエーションが広がり、着こなしの選択肢も多様になってきました。勢いの続く“センシュアル”や“Y2K”などのトレンドアイテムと引き合わせれば、こなれた雰囲気をまとえます。もともとミリタリーユニフォームやワークウエアとして着用されていたため、動きやすさや心地よさは格別。アクティブに動きたい春夏は、頼もしいカーゴパンツを着こなしのレパートリーに加えて損はないでしょう。