スペイン発ラグジュアリーファッション・ビューティ企業のプーチ(PUIG)はこのほど、中国大手EC企業のアリババ(ALIBABA)と協業しECサイト「Tモール(TMALL)」にフレグランスを“可視化”するサービス「セント ビジュアライザー(Scent Visualizer)」を本格導入した。 「セント ビジュアライザー」は1400種類に及ぶ香料の写真のデータベースを使って、消費者が香りを「見て」理解できるようにするもの。
「セント ビジュアライザー」はプーチが展開する香りに特化したデジタルプラットフォーム「ウィキパルファム(Wikiparfum)」と連動している。「ウィキパルファム」は、フレグランスや香りの原料に関するデータベースを提供するだけでなく、パーソナライズされたフレグランスの提案を行うショッピングツール。フレグランスの権威であり歴史家のマイケル・エドワーズ(Michael Edwards)が香りの分類やフレグランスのデータベースを作成し1984年に出版したガイドブック「フレグランスオブ ザ ワールド(Fragrance of the World)」とのコラボレーションにより開発された。
中国のフレグランス市場は近年伸びており、市場調査会社カンター(KANTAR)とエターナル フレグランス レポート2021によると、2015~20年の年平均成長率は約15%だった。今後5年以内に年平均成長率は22%になる見込みで、世界のフレグランス市場の約3倍の成長率となる。また、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の2022年のレポートによると、現在中国でフレグランスを使う習慣がある人は人口の約5%にとどまる。Tモールはニッチフレグランスを筆頭にフレグランス市場を戦略的な成長機会と見ている。
両社によると、中国におけるフレグランス市場形成には消費者の教育が重要になる。Tモールはすでに「セント ビジュアライザー」を25ブランドで試験導入しており、フレグランスに簡単な写真を付けるだけでブランドのオンライン流通取引総額は平均して5%増えたという。さらに、商品購入に至るまでのコンバージョン率や平均取引額も向上した。プーチは「(これまでオンラインでは分かりづらかった)香りが視覚化され分かりやすく比較できることで、消費者はより速く商品の購入を決めることができる」と分析している。カミラ・トーマス(Camila Tomas)=プーチ グローバル イノベーション&ニューテクノロジーズ バイス プレジデントは今回の協業について「われわれのフレグランスのノウハウと、デジタル技術をより幅広い消費者に届けることができて光栄だ。中国でフレグランスを楽しむ消費者を増やせるよう、長期のパートナーシップを考えている」とコメントした。
Tモールは近く、「セント ビジュアライザー」を搭載した香りの検索エンジン「フレグランス ファインダー(Fragrance Finder)」をスタートする予定。原料や調香師、気分によって特定の香りのブランドや商品を選ぶのに役立つツールとなっている。