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グッバイ津田沼パルコ 45年に渡り営業、地元との結びつき深く

 千葉県船橋市にある津田沼パルコが今日2月28日、45年の歴史に幕を下ろした。津田沼はかつて、パルコの他にイトーヨーカドーとダイエーの日本一の店舗があり、マルイ、高島屋といった百貨店も出店。「津田沼戦争」と呼ばれた流通企業による激しい戦いの舞台だったが、これでイトーヨーカ堂以外はすべて撤退することになる。

 津田沼パルコは1977年7月に開業。店舗面積こそ4万8000㎡と「パルコ」の中でも最大規模の面積を持つ一方で、取扱高は93億円(22年2月期)にとどまっていた。売り上げの減少に歯止めがかからず、閉館を2年前にアナウンス。以来、地元の商店街などと一体になり、さまざまな閉館セレモニーを行ってきた。

 最終日には、ペデストリアンデッキでつながるJR津田沼駅のホームの看板の一つを「津田沼パルコ駅」に変えた。SNSでバズった上にホームに人が殺到し、午後3時には中断したものの、地元の駅や行政との深い結び付きがなければ実現自体が難しい。1992年にパルコに入社、98年から2年間津田沼店に勤務し、その後札幌や名古屋、広島などの勤務を経て18年から津田沼パルコ店長を務めてきた野口香苗店長は、「地元の商店街を筆頭に、2つの市の行政まで、全国に店舗のあるパルコの中でも、地元ととのつながりが一番の店舗だった」と振り返る。

 最終日ということもあって、多くの人が訪れた。電車で10分ほどの北習志野エリアに住むという50代の女性は「20代のころは津田沼付近で働いていたこともあってよく来ていた」と話す。すぐ近所に住んでいて親と小学生の男児とともに来ていた40代の女性は「高校生の頃はよく『ヒステリックグラマー』なんかを買いに来ていた。いまは子どもが本が好きなので、毎週のように本屋に買いに来ていた。なくなるなんて寂しい」。2人とも船橋で出身で、いまは習志野市で一緒に暮らしているという20代のカップルは、韓国料理の「ジャンモ」に毎月のように2人で食べに来ていたという。女性は「家の近所で、昔から家族でよくパルコには来ていた。特別な場所というより、日常の中にあった。なくなると言われても、実感がわかない」と語る。

  4階に入居するメンズセレクトショップ「ハイストリート」の販売員として1987年から津田沼パルコに勤務してきた山岸昭宏氏は「一番の思い出を選ぶことなどできない。バブル期の絶頂期に入社したが、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と大変なことの連続だった。一度は転勤や引っ越してしまっても、また戻ってきてくれた顧客もいる。結婚相手もこの津田沼パルコで見つけた。ららぽーとTOKYO-BAYにもお店があるので、顧客にはそちらを案内しているが、人生の思い出の多くが詰まった場所だった」と振り返る。

 一方、パルコの経営幹部も姿を見せた。千葉県出身で、高校生の頃によく地下でカラオケをしたというパルコの牧山浩三社長は「津田沼パルコには勤務経験こそないけど、馴染みのある場所だった。取引先の皆様にも地元の皆様にも感謝しかないね」。なお牧山社長自身が、津田沼パルコと同じ2月28日付で社長を退任する。2008年〜2011年にパルコ社長を務め、、昨年までJフロント リテイリングの執行役常務を務めた平野秀一氏は「20代のころに本部で、当時西友棟とパルコ棟に分かれていた館の統合作業をしたし、渋谷パルコにあった自由の女神を屋上に移設したこともあった。本当に多くのことがあり、多くの人に支えられた45年だった」と語った。

 午後9時には、JR津田沼駅とつながるペデストリアンデッキに向けて、壁面にレーザー光線でメッセージを照射すると、多くの人がひと目見ようと集まり、最後の別れを惜しんだ。

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