みなさん、こんにちは。2023-24年秋冬シーズンのコレクション・サーキットはいよいよパリへ!ロンドンやミラノを見る限り、今年は復活した中国人セレブとファンの存在感が再び増して、パリも「アチチのチ」なくらい熱量の高いシーズンになりそうです。そこで「WWDJAPAN」の編集長&欧州通信員が花の都パリから、華やかなだけじゃない(!?)ドタバタ日記をお送りします。初日は、日本人ブランドと、早くも2人登場のBLACKPINKでスタートです!
10:30 CFCL
本日朝一番のブランドは、高橋悠介さん率いる「CFCL」。日本のアパレルでは初めてのBコープを取得したり、取り扱い店舗での実績も好調だったりと、波に乗っています。
そんなブランドですが、実は私、これまでちゃんとコレクションを見たことありませんでした。半年前はシャルル・ド・ゴール空港からの移動でプレゼンテーションに間に合わず、それより前は「WWDJAPAN」の編集統括兼サステナブル・ディレクターの向に半ば“おまかせ“していた感があります。正直に言えば、「CFCL」が得意としていて、実際デザイン性で支持されている「編み地を切り替えることで、腰回りが急速に膨らむワンピース」のシルエットが、ちょっと“唐突“に思え食指が伸びなかったという本音もありました。ただ、23年春夏コレクションの透け感があるニットは、とても洗練されていて素直に素敵に思えていました。今回、ブランドにとって初めてのショー形式での発表は、「CFCL」をちゃんと知る良い機会です。
「とらや」のおまんじゅうをいただき、頭に糖分をバッチリ送り込んで拝見したショーは、やっぱり透け感のあるニットの美しさが印象的でした。透け感のあるハイゲージニットで生み出すペプラムのようなボリュームは、それが肩口にあっても袖口にあっても、軽やかかつエレガント。色では、鮮やかなイエローのストンと落ちるニットドレスがフレッシュな印象です。一方、急速に広がるペプラムのような曲線はやっぱり今なおちょっと唐突に思えるし、起毛感あるニットはボリュームのせいか少し重たく見えました。「CFCL」には、なるべくフレッシュなムードの中で、創意工夫を追求してほしいな。肩のラインが円弧を描くリブニットも、クロップド丈や鮮やかなカラーパレット、もう少しハイゲージな素材の進化系が楽しみです。
11:20 「トモ コイズミ」
続いては、ミラノでのショーを終えたばかりの「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の展示会へ。デザイナーのトモくんはもちろん、ショーに登場したモデルのKEISHANもパリ入りしています。
常々鮮やかな色と軽やかなシフォンで夢の世界に誘ってくれるブランドですが、今回は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のクチュールライン“アルタ・モーダ“のアーカイブがオプティミスティック(楽観的)なムードを盛り上げます。シチリアの太陽の光をいっぱいに浴びたような生地を贅沢に使ったドレス達は、もはや“ご陽気“。こんな時代だからこそ、必要なムードです。
11:40 寄り道の「アー・ペー・セー」
「トモ コイズミ」の展示会の後は、隣にある「アー・ペー・セー(A.P.C.)」のセカンドハンドショップへ。ブランドが「アー・ペー・セー」の商品を買い取ってクーポンを発行し、メンテナンスした古着を販売しているショップです。買取額はデザイン問わず商品ごとに一律だそうで商品もニットなら大体70ユーロ(約1万円)など明朗会計。デザインが廃れないブランドだから、需要は高そうです。
13:00 「マメ クロゴウチ」
本日はジャパニーズ・デーのパリ・コレクション。お次は「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」です。同じテーマに1年間向き合い続けるブランドは、23年春夏コレクション同様、竹かごや竹にまつわる文化にフォーカス。しかし、そのアプローチは大きく異なります。
23年春夏は、言うなれば“ド直球“な竹細工と洋服の融合でした。一方、23-24年秋冬は、中国から工芸として伝来した竹細工が日本では日用品として独自の進化を遂げた歴史や、中が空洞だからこそしなやかな竹本来の魅力に着目。例えば編み込みの様子を染めや、リボンのような生地を組紐のように重ねることで表現したミリタリーやアウトドアムードの洋服が続きます。完成したスタイルは、落ち葉で埋め尽くされた公園での散歩という情景が思い浮かびそうな、日常生活に馴染むようなデイウエア。なのにダーツ使いで、しなやかに女性の曲線美も表現します。
私は、こちらの方が圧倒的に好き!ほっこりしつつも軽やか、リラックスムードも漂うのにしなやか。そんな気持ちでショー会場を後にしました。
15:00 「ディオール」
さぁ、初日最初のヤマ場到来です。こちらの日記、メンズからウィメンズのミラノまでドタバタ感も漂わせながらお送りしているので、パリでもそのテンションを受け継ごうと思いますが、毎回この「ディオール(DIOR)」は、ファッションショー自体はとっても優雅なのに、その舞台裏は超ドタバタなんです。
理由は、まずはこの人!そして、来場するセレブ!日本ではSNSチームが、(現地時間は23時のハズなのに)私たちがパパラッチする写真や動画、セレブのコメントを待ち構えています(苦笑。若干恐)。事前につかんだ情報では、今回もBLACKPINKのJISOOの来場は間違いなし。そこで同僚の藪野通信員には日本からのセレブへの突撃をお願いして、私はJISOOまっしぐら!であります。一応、前回JISOOの撮影には大成功を収めておりまして、「いけるっしょ」くらいの感覚でありました。
ところがJISOO様、、今回は入り口でほとんど止まってくれません(涙)。最初に撮った動画はコチラ。確かにアップはあるけれど、日本のSNS担当からは「ナイスファイトです!」とのコメントが返ってきました。ん〜、これはクオリティに納得していらっしゃいませんね(笑)?
ということで改めて、広い特設テントの中で、一番ゴミゴミしてそうな場所に突撃!すると、もう一人のビッグゲストのシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)とJISOO様が、なんとご歓談中じゃあ〜りませんか!そこでスマホを持った手を天高く伸ばし、撮影したのがこちらの動画。そして、撮影してトリミングしたのがコチラの写真。大成功でありました。これで本日のビッグミッションの1つ、コンプリートであります。
肝心のショーは、強さを感じさせるクリエイションでした。ブラックを基調にレッドやグリーン、イエローもちょっぴりダークトーンだったり、反対にルビーやエメラルド、トパーズイエローのように潔いビビッドカラーだったり。多くのウエアにはシワ加工を施し、アビエイタージャケットのようなレザーブルゾンを合わせたルックも登場します。
一方で、それが逞しさや荒々しさにつながらないのは、儚さも併せ持っているからでしょう。1947年に発表したニュー・ルックのスカート、裾に向かって急速に広がるコロールライン(花冠)のスカートにこだわった今季は、そのスカートこそがエレガンスや可愛らしさ、夢のような儚さを醸し出しました。そこにのせたフローラルモチーフは、抽象画のようにおぼろげで、その曖昧さはやはり儚さにつながっています。クラシカルな千鳥格子のジャケットには、パフスリーブや曲線的なウエストライン。今季は、相反するものの対比が顕著です。
バッグやシューズは、冠婚葬祭から日常使いまで幅広く使えそうだから「売れそう」な安定感さえ漂うスモールサイズのハンドバッグや、バックストラップのパンプス、今季目立っているロンググローブなど。ちょっぴりセンシュアル(官能的)に正統派のスタイルを描く、今季のトレンドを牽引している印象でした。
16:00 「パーム エンジェルス」
お次は、一足早く「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」のプレビューへ。デザイナーのフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)から、日曜日のファッションショーに先駆けて最新コレクションの概要を聞きました。もちろん、詳細は話せません(笑)。一言だけ言えるとしたら、なかなかな新基軸です。お楽しみに!
17:35 「アンリアレイジ」
「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のショー会場は、パリの中心部にあるシアター。今回は、2015-16年秋冬シーズンに発表した「紫外線で色が浮かぶ服」の進化版を発表しました。詳しくは「百聞は一見にしかず」で、動画を見ていただくのが一番早く、わかりやすいと思います(笑)。15-16年秋冬シーズンをご存知の方は、いかがですか?ずいぶんアプデしましたよねぇ。まず色はあっという間に変わるし、色の濃さも前回より深く鮮やか。そしてフェイクファーやレースなど、紫外線で色が変わる染料はさまざまな素材にのせられるようです。そして、白から別の色になるだけでなく、ある色が別の色になるという進化も!BGMの「威風堂々」のように森永邦彦デザイナーも自信満々なアップデートだったことが伺えます。願わくば、肝心の洋服も進化して欲しいところ。もちろん”らしさ”はあるのですが、特にジャケットは、もっと美しいパターンやカッティングだったら、色の変化がもっとドラマチックに感じられたかもしれません。
18:15 「アライア」
お次は、「アライア(ALAIA)」の展示会。欧州通信員の薮野記者が、デザイナーのピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)の自宅に招かれて拝見したコレクションが一堂に並んでいます。印象的なのは、バックスタイル。ピーターは、「出会った時同様、わかれる時の印象も大事」と後ろ姿にこだわっているそうです。
19:00 「ギャラリー・ラファイエット」
ちょうどシャンゼリゼ通りの近くだったので、「ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)」をチェック。滞在時間はわずか15分でしたが、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」と「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のスペースがやたらと大きかった印象です。売り上げと連動しているので、こうした売り場面積は「WWDJAPAN」記者ならチェックであります。
20:20 「サンローラン」
さぁ、本日のラストは「サンローラン(SAINT LAURENT)」。こちらにもBLACKPINKのROSE来場確定情報が飛び込んでいます。しかも今回は、私一人。おぅ……、プレッシャーです。
パパラッチに大事なのは、心の余裕と全体像の把握です(多分)。ということでショーが始まる予定時刻の20:00よりも40分も前に来場。何気ない顔でスタッフの傍らを通り抜けて、本来ならばゲストがウロウロすべきじゃないフォトコールエリアに辿り着き、ROSEの撮影にベストなポジションをゲットしました。そこは、フォトコールエリアのちょっと上にある階段を登り切ったところ。階段を上がるためにペースダウンするROSEをじっくり撮影できるだろうという企みです(笑)。
「サンローラン」アンバサダーのKing Gnuの常田大希さん
「サンローラン」アンバサダーの水原希子さん
「エミリー、パリへ行く」のシルヴィ役を務めたフィリピーヌ・ルロワ・ボリュー
ここからは忍耐勝負です。待つこと30分、気温は3度。私もなかなかツラいものがありますが、「サンローラン」の23年春夏コレクションを身に纏い体の半分を露出しているセレブの皆さんも「お疲れ様です!」なカンジです。ベスポジは、King Gnuの常田大希さんや水原希子さんという、日本代表アンバサダー2人が来場した時だけ一瞬離れてバッチリ撮影。「エミリー、パリへ行く」のシルヴィ役を務めたフィリピーヌ・ルロワ・ボリュー(Philippine Leroy Beaulieu)をパパラッチしても、律儀にベスポジに戻ってROSEを待ち構えます。すると、ついに係員に「ゲストがここで、何やってるワケ?」とイエローカード。ROSEはもうちょっとで来そうだけど、怒られ続けるとショー会場に戻れなくなるかも?20:00が近づくにつれて不安がますます募っていくと、ついに「ドア、閉めるよ」の最終通告です(泣)。
後ろ髪ひかれる思いでフォトエリアを離れ、それでも未練たっぷりでショー会場の入り口でスマホを待ち構えていると、ついに降臨!ながら、ソッコー目の前を通過!その間、推定3秒(泣)!こうして撮影したのが、こちらの動画です。我ながら、あっという間過ぎますね。
肝心のコレクションは、メンズ同様「(特に日本人には)難しいなぁ」というアイテムの連打が目立ちますが、だからこそ唯一無二の世界観。スーパーパワーショルダーのジャケット&トレーンを引くほど生地を贅沢に使ったボウタイブラウス、ラップのミニスカートで単純に「めちゃくちゃカッコいい!」コレクションに仕上がっていることは間違いありません。そして、そんな確固たる世界観を構築しているからこそ、世界では絶好調の「サンローラン」。日本人にはちょっと難しいイメージもありますが、常田さんや希子ちゃんを通して、この世界観が日本にも、もっともっと浸透すればと願ってやみません。
ということで、本日の業務は以上で終了!ちなみに本日のスタイルは、「オーバーコート(OVERCOAT)」のコート&ジャケット、それにシャツと、「マルニ(MARNI)」のスカート、「ディオール(DIOR)」のスニーカーでございました。それではみなさん、また明日!