「スープストック トーキョー(SOUPSTOCK TOKYO)」やネクタイブランドの「ジラフ(GIRAFFE)」、デッドストックや規格外品の蚤の市「パス ザ バトン マーケット」などで知られるスマイルズの社長が交代した。同社は野崎亙前スマイルズ チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)が取締役社長兼CCOに、遠山正道・創業者兼社長は代表取締役に就任。野崎社長は、11年にスマイルズ入社。すべての事業のブランディングやクリエイティブの統括、事業開発などを率いてきた。
同社は2000年に創業。上記ブランド以外にもファミリーレストラン「100本のスプーン」や海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」などを手掛けるほか、外部のコンサルティングやプロデュース業も行っている。年商は11億3100万円(2022年3月期)で、ここ数年はコンサル・プロデュース業を強化しており、21年の売り上げ前年比は69%増、22年は45%増と売り上げを伸ばしている。創業23年を機に社長交代した意図や背景を遠山代表と野崎社長兼CCOに聞いた。
スマイルズでは一担当、今まで以上に幅広く活動
WWD:社長交代の意図は?
遠山正道代表(以下、遠山):ここ数年タイミングを見計らっていた。実質、何年も野崎社長が中心で運営してくれており、私もアート関連のプラットフォーム「チェーンミュージアム(THE CHAIN MUSEUM以下、TCM)」の社長をしながら、一担当者的にプロジェクトに関わっていたため、実際あまり変化がない。
WWD:野崎前CCOが社長に立候補したようだが?
遠山:“自分ごと”として、一番いいパターンだと思う。責任を持って自分でやるというのがスマイルズらしい。
WWD:代表になった感想は?
遠山:ますます忙しくなっている。TCMでは一担当者としてプロジェクトに参画しているので打ち合わせなどが多い。それに加えて昨年、個人会社「とおい山(株)」を設立した。同社では、企業などを対象に、利益の追求だけでなく、その存在意義や文化的価値、従業員の幸福などを見つめ直して軌道修正していくようなコンサルティング活動をしていきたい。また、アートや執筆などの作家活動も行うつもりだ。今年の年賀状にも書いた「ピクニック紀」は、ピクニックのように目的や勝敗のないことをどう価値として捉えられるということや、資本主義が成熟した今後、世の中に必要とされるであろう自分で幸福を導き出す人物像などについて考察したもので、本などにまとめられたらと思っている。これまで手掛けてきたことをベースに、今まで以上にいろいろなことをやっていきたい。
WWD:会長ではなく代表という肩書きにした理由は?
遠山:“会長”という肩書きだと、現場との距離感を感じるので、代表(代表取締役)にした。
WWD:今後の代表としてのスマイルズへの関わり方は?
遠山:各社員の主体性(自分ごと)に任せて、各自仕事を進めてもらっているので、今までとあまり変わらない。スマイルズの経営について口出しするつもりはなく、むしろ今後は、一担当者としてプロジェクトに関わればと思っている。
WWD:今後のスマイルズに期待することは?
遠山:個人性を存分に生かしながら、チームだからこそできる価値づくりも含めて、さまざまな活動を掛け合わせながらユニークネスを持って活動してほしい。
WWD:スマイルズ以外の活動とのバランスをどのように取っていくか?
遠山:基本、スマイルズについては任せているので、あまり意識せず、さまざまなチャレンジをしていきたい。
一人一人が“自分らしさ”を出しながら期待値を超えられる企業に
WWD:社長に立候補したそうだが、そのタイミングおよび理由、目的は?
野崎亙社長兼CCO(以下、野崎):ここ数年間、社長という気持ちで働いてきた。スマイルズとしてクリエイティブの価値提供ができるようになり、主業として成立するようになったので、今後は、コンサルティングやプロデュース業を主軸にしていくという意思も込めて、このタイミングで立候補した。
WWD:遠山代表とのリレーションはどのように取っていくか?
野崎:飲み仲間(笑)。
WWD:スマイルズを新社長として再定義するとしたら?
野崎:スマイルズは意志そのもの。独自のやり方で世の中の体温を上げていくという意志は今までも、これからも変わらない。「スープストック トーキョー」などの実業を中心としていたが、その知見を生かしてクリエイティブという手段を用いながら価値提供している。意志さえ変わらなければ、形に縛られることなく、手段は変化してもいいと考える。
WWD:スマイルズが今面している課題は?
野崎:実業もコンサルも全てビジネス的な手段なので、もっと高度なレベルでそれらを有機的に融合していくこと。
WWD:社長として達成したいことは?
野崎:“船頭多くして船山へ登れる”はずだと考える。スマイルズは、得意なこと、性格、価値観、全てが全然違う集団だ。全員の役割範囲が明確ではないので、年齢、性別、上下関係なくそれぞれの"自分らしさ"を出し合いながら、一人の力を超えて皆で見たことのない景色を見に行ければと思っている。想像つかないことを実現できるのが理想。いい意味で期待値をスタッフ皆が超えてくれたらいい。それが私の新しい創造性をかきたててくれると思う。
WWD:スマイルズとして、新たにチャレンジしたいことは?
野崎:今までしたことないことなら、ほぼ全てやってみたい。経験したことのない業界のプロデュースや業態も手掛けたい。それがわれわれの可能性を押し広げてくれる唯一の手段で、船で山を登るための大事なプロセスだと思っている。