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メイクアップはお客さまにとって“楽しい体験”になる【二刀流美容師:アソート】

 ヘアだけでなく、メイクアップもこなす美容師を“二刀流美容師”としてピックアップする連載企画。インスタグラムによる集客が主流となった今、ヘアスタイル投稿だけでなく、メイク投稿もできるとサロンユーザーの関心をより引き付けられるため、注目度が増している。第1回は「アソート トウキョウ(ASSORT TOKYO)」のタカ・オザワトップスタイリストに、 メイクを始めたきっかけや、美容師がメイクもやることのメリットを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):キャリアのスタートは?

タカ・オザワ(以下、タカ):1996年に日本で美容師としてキャリアをスタートし、サロンワークを行いつつ、ヘアプロダクツメーカーのレッドケン ジャパン(REDKEN JAPAN)のヘアカラー講師として全国を回った。2002年にカナダ・トロントへわたってカラーリストとして活動し、06年にメイクアップアーティストとしても活動するようになった。

WWD:メイクを始めた理由は?

タカ:トロントで働き始めて5年くらい経ったときに、念願だったNY行きのチャンスが来た。NYのトップサロンの1つ「カトラー サロン(CUTLER SALON)」がソーホーにインターナショナルのサロンをオープンするため、オープニングスタッフを募集した。当時のアメリカでアーティストビザを取得できる条件は、5人くらいの著名人からの推薦レターと、雑誌に載った証拠100ページ分くらいを用意すること。でも、用意できなかった。なぜ用意できなかったか……。その理由を自分なりに分析してみたところ、トロントでカラーリストとして働くことに慣れ、“俺はノースアメリカで1番うまい”などと思い上がっていた自分に気付いた。カラーリストを目指したときに抱いていた、“人をきれいにしたい”という初心を忘れていた。そこで全てをリセットし、カナダでメイクの勉強を始めた。

WWD:メイクはどのように勉強した?

タカ:カナダでメイクを覚えたときに、たくさん数をこなして早く上達したかったけれど、メイクアップアーティストの仕事はそれほど多くはなかった。そんなときに、知人から「ヘアサロンで自分の顧客にメイクをすれば?」というアドバイスをもらい、それ以来、サロンのお客さまに必ずメイクをするようになった。NYではさらに、他のカラーリストのお客さまにも「今日これから出かけますか?メイクさせてください」などと声をかけ、カラーリングに合わせたメイクをしていた。

WWD:メイクは喜んでもらえた?

タカ:喜んでもらえていることは、お客さまを見ていれば分かる。ヘアをやっているとき、お客さまは普通に背もたれにもたれて座っているけれど、メイクのときは大半が鏡の近くまで乗り出してくる。さらに、施術を終えたときの言葉も変わってきた。ヘアだけのときは「ありがとう!」だったけれど、メイクをするようになってからは「楽しかった!ありがとう!」になった。つまり、体験型に変わったということだと思う。

WWD:2019年に帰国したのは?

タカ:日本の美容師に“美容師がメイクもやることのメリット”を伝えたいと思い帰国した。ちょうどコロナ禍と重なってしまい思うような活動はできなかったが、ヘアサロンや美容学校のメイク講師を務める中で、いくつかの課題を見つけることができた。1つは、アシスタントはよく勉強会に参加してくれるが、スタイリスト、トップスタイリストとなるにつれて、なかなか参加してくれなくなること。サロンのシステム的に仕方のない面もあるが、課題だと感じた。もう1つは、練習に時間がかかる割に、マネタイズのやり方が分からないこと。結婚式などのメイクは有料メニューとして確立しているが、私が取り入れてほしいのはデイリーなメイク提案。まずは集客&お客さまとの信頼関係構築のためのツールとして活用し、いずれはプラスオンメニューとしていくのがいいと思う。

WWD:「アソート」ではどのようにメイクを提案している?

タカ:ヘアの施術中にメイクの話をし、悩みを聞くなどして「それだったら、こうしたほうがいいかもしれない」とか「前髪作ったからメイクはこうした方がいいよ」などと振る。それから「後でちょっとやってみてもいい?」と提案する感じ。カラー施術でファンデーションが取れてしまったときに、「メイク直ししましょうか?」と提案することもある。短時間でお客さまに喜んでもらうのに1番いいのが、くまを消してあげるタッチアップ。普段使っているファンデーションの下に、赤めのベースをしくだけで、驚くほどきれいに消える。そういったことを続けると「タカさんはメイクもしてくれる」と認識されるので、お出掛けの前に来店してくれるようになる。ただ、私でも新客には提案しない。まずヘアで満足してもらうことが最重要で、信頼を得てから提案するのもポイントだ。

WWD:最近の活動は?

タカ:ようやく海外に行けるようになり、約3年ぶりにカナダ・トロントでサロンワークをしてきた。その中でニューヨークにも行き、ニューヨーク・コレクションの「ショウタヒヤマ(SHOTAHIYAMA)」のリードメイクアップアーティストを務めてきた。オフィシャルではなくゲリラ的に行ったショーで、地下鉄の駅のスロープをランウェイに見立て、そこからモデルが出てくるというもの。雲をイメージしたメイクを施すなど、独創的なショーになったと思う。

WWD:最後に改めて、美容師がメイクもやることのメリットは?

タカ:デザイン提案の引き出しが増える。メイクの勉強をすることは、色の勉強をすること。例えばヘアカラーにおいても、ただ「かわいい」「似合うから」だけでなく、どうしてこの色を選んだのか、肌やメイクとの関係性から説明できるようになる。

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