食品を始めとした物価上昇や、それに伴う景気の不透明感が連日報道されているが、全国の百貨店に高額品の販売動向を取材すると、まるでパラレルワールドかのような状況が浮かび上がってくる。国内富裕層に支えられ、高額品売り上げは引き続き絶好調。コロナ禍前の2019年の水準も大きく上回っているという声が大多数だ。入国制限緩和により、22年10月以降は訪日外国人客も急増しており、今後は富裕層を中心とした国内客と訪日客への対応をいかに両立させるかがカギとなる。(この記事は「WWDJAPAN」2023年2月27日号別冊付録の定期購読者特典「ビジネスリポート」からの抜粋です。「ビジネスリポート」にはより詳しい情報も掲載しています)
コロナ禍によって免税売り上げは一旦大幅に落ち込んだものの、国内の富裕層や若年層が百貨店の高額品消費を支えているという構図は、今季(22年7〜12月)の調査でも変わっていない。年末にかけては、3年ぶりに行動制限がなかったことでクリスマス商戦も盛況。その結果、コロナ禍前の19年7〜12月に対しても、多くの百貨店が高額品で2ケタ増を達成した。なかには19年に対し、売り上げが2〜4倍だったという店舗もある。
10月以降は訪日外国人客が急増しており、円安も後押しして免税売り上げが回復。それも今季の高額品売り上げに貢献した。例えば高島屋(15店累計)では、特選・宝飾の7〜12月の免税売り上げが、過去最高だった19年同期に対して50%増の着地だった。松屋銀座本店も、7〜12月の特選の免税売り上げが19年実績を超えている。
ただし、免税売り上げの回復は百貨店にとって悩みのタネにもなりつつある。現状では中国本土からの訪日客はまだ少なく、「香港や台湾、韓国、タイを始めとした東南アジアの富裕層が中心。それゆえ客単価が高い」(高島屋)。今後マス層を含めて訪日客が増え続ければ、“爆買い”が話題となった15〜18年のように店頭の大混雑が予想される。それにより、コロナ期間に関係性を深めた国内富裕層への対応が手薄になっては本末転倒だ。
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