三井不動産は7日、東京駅八重洲口東側エリアの複合型商業施設「東京ミッドタウン八重洲」のオープン(3月10日)に先駆け、館内を報道関係者に公開した。4層からなる商業エリア(地下1階〜地上3階)は、日本のブランドを中心とした構成。最上層40〜45階には「ブルガリホテル東京」(4月4日開業予定)、地下2階には羽田空港などから発着するバスターミナルを備えるなど、復活が見込まれる海外観光客の取り込みを強く意識した設計となっている。
日本ブランドを世界へ発信
約5500平方メートル(店舗面積)の商業エリア全57ショップのうち、初出店が6店舗、東京初出店が11店舗。商業エリアのみで年間売上高70億円、来場者1000万人を目指す。内覧会の前に行われた記者会見で菰田正信・三井不動産社長は「ジャパンプレゼンテーションフィールドとして、日本のブランドを世界に発信する場所にしたい」と語った。
その考えを最も色濃く表現するのが “ジャパン・ラグジュアリー”をコンセプトにした1階。伝統技術や素材などを駆使した、「日本のクラフトマンシップを体現するブランド」(菰田社長)を集積した。西陣織の老舗・細尾(京都、細尾真孝社長)は、東京初となるショールーム&ストア「ホソオ トーキョー(HOSOO TOKYO)」を出店。西陣の伝統織物を使ったテキスタイルや家具、小物などを展示販売する。高橋悠介デザイナー手掛ける「CFCL」はMMA Inc.が設計した静謐な空間に、代表アイテムのニットをそろえた。三陽商会は、同社の高級コートブランドの「サンヨーコート(SANYO COAT)」と高級紳士靴の「三陽山長」が並び立つ新業態「三陽山長 粋(すい)」を出店し、モノ作りをアピールする。ビューティでは、竹や昆布などの日本由来の原料を使った機能的なスキンケアやフレングランスを提案する新鋭ブランド「アーレス(AHRES)」が目玉だ。
また菰田社長は東京ミッドタウン(六本木)、東京ミッドタウン日比谷との違いとして「都心生活者やインバウンド、ビジネスマン、地方の方など多様なお客さまの利用が想定される」ことを挙げた。「単に『都心らしい店』をそろえるのではなく、どんな気分で、何を欲しているお客さまに対しても満足いただける施設を目指した」。2階はスポーツやアート、食などを絡めた新しいライフスタイルを提案する。立ち飲みの飲食店や物販、休憩スペース、アートギャラリーが境目なくつながる空間設計により、回遊性を高めた。物販では「雑誌を編集するように」季節やテーマにより雑貨やコスメの仕入れを変化させるセレクトショップ「エディトリアル(EDITORIAL)」、東京をホームタウンとする14のスポーツチームの関連グッズを販売する「トーキョーユナイト(TOKYO UNITE)」などが出店する。
エリア一体でシナジー創出 「ミッドタウン」の開発は継続視野
商業ゾーン以外では、オフィス(7〜38階)、小学校、認定こども園、産学共同のアカデミックスペースなどが入居し、都心生活者の「働く・遊ぶ・暮らす」のニーズに応える。三井不動産は、東京ミッドタウン八重洲に隣接する区画で「八重洲一丁目東地区プロジェクト」(2025年度竣工予定)「八重洲二丁目中地区プロジェクト」(28年度竣工予定)と題した2つの開発案件を進めており、ここにはレジデンスや劇場、インターナショナルスクールなどが加わる計画。同社が多くの不動産を持つ日本橋地区とともに、エリア一体で魅力創出を進める。
また菰田社長は、これで3件目となった「ミッドタウン」の今後の開発計画についても言及。「八重洲はミッドタウンの集大成ではなく、これからも進化を続ける。地権者との折り合いがつけば、4つ、5つと(ミッドタウンの)開発を続けていきたい」と語った。