東急百貨店がテナントとして運営する渋谷スクランブルスクエア6階ビューティフロア「プラスクビューティー」が若年層を取り込み好調だ。2019年11月の同館開業時に立ち上げメンバーの1人として携わり、現在は化粧品担当バイヤーとして東急百貨店全店を管轄するのが水田宜延=東急百貨店ファッション雑貨事業部 ビューティー・自主MD部ビューティー担当だ。「前職は靴小売」「接客が好き」という水田バイヤーが語る仕事の醍醐味とは?
WWD:前職の靴業界から百貨店への転職理由は?
水田宜延=東急百貨店ファッション雑貨事業部 ビューティー・自主MD部ビューティー担当(以下、水田):新卒で靴小売に入社し路面店の店長や新規店舗立ち上げなども経験しやりがいも感じていました。27歳の時に職場の環境が変わることになり、それまでも接客が好きだったので、百貨店だったら一人一人のお客さまともう少しゆっくり話ができるのではと思い、百貨店業界への転職を決めました。最初の配属は東横店婦人靴売り場に。百貨店では前職の売り場の1日の予算を1人のお客さまが購入する日もあって全く違う環境でしたね。入社から3年ほどを靴売り場で過ごし、15年8月に同じ店舗の化粧品売り場に異動しました。
WWD:化粧品売り場へは希望して?
水田:実はそうではなくて(笑)。なので、最初は不安の方が大きかったです。ただ、仕事内容はお客さまに直接販売するのではなく、ブランドの美容部員や営業担当者とのやり取り、人気商品の発売日には行列ができるのでその整理など売り場の運営がメインなので、化粧品に詳しくなかったですがなんとかやっていけました。少しずつトレンドも勉強しながら約2年半、化粧品売り場にいました。心掛けていたのは、美容部員の人たちが気軽に話しかけやすい環境や雰囲気を作り。ちょっとしたことでも相談してもらえるように普段から雑談も積極的にしていました。例えば売り場の引き出しが歪んでいるとか細かいことを改善するだけで接客がスムーズになり売り上げが上がるんですよね。
WWD:その後、どのように現在のバイヤー職に就いた?
水田:その後、婦人靴売り場に戻り半年後に再び化粧品売り場へ。婦人靴と化粧品、隣接する売り場を行き来することに。でもさすがに半年で化粧品売り場に戻ったときは、美容部員たちに「送別品を返してください」と言われました(笑)。その後化粧品売り場で1年、同店舗の食品・酒売り場で9カ月を経て、19年5月に化粧品のアシスタントバイヤーとして本社に異動。昨年2月から化粧品バイヤーとして渋谷ヒカリエ シンクス、渋谷スクランブルスクエア「プラスクビューティー」、東急百貨店吉祥寺店、同たまプラーザ店、同札幌店を管轄しています。
WWD:百貨店のキャリアパスとしては、さまざまな売り場を経験してバイヤーになることが多い?
水田:人によって全く違い、店舗間や本社を短いスパンで渡り歩く人もいれば、同じ店舗にずっといたり、1つの売り場を長年担当したりする人もいます。百貨店の中で服飾雑貨は花形といわれることが多いですが、当社は「東急フードショー」という大きな看板があって、同業他社より食品の売り上げが全体に占める割合が大きい。なので、食品売り場を経験できたのは良かったし、最近は化粧品でもインナーケアとしてサプリメントやハチミツなどの食品を扱うことも増えてきているので、食品売り場を経験している強みを生かしていきたいです。
渋谷スクランブルスクエア「プラスク ビューティー」立ち上げに参画
WWD:19年5月にアシスタントバイヤーとして本部に異動して最初の仕事は?
水田:本部に異動した年の11月に渋谷スクランブルスクエア「プラスク ビューティー」がオープンしたんですが、その立ち上げメンバーとして関わりました。オープンまでの5カ月は店頭で配布する媒体の制作とそれに関わる限定品の準備などがメインの仕事でした。40ブランド全てにオープン限定施策をお願いしたのでその調整がなかなか大変でした。この時の化粧品売り場の立ち上げメンバーは現在、事業開発担当、ウエルネスカテゴリーのリーダーなど違う担当に就いていますが、化粧品を熟知しているメンバーと連携できるのが心強いですね。
WWD:渋スク「プラスクビューティー」の特徴は?
水田:開業直後にコロナ禍に入り、若者から徐々に外に出始めたため、観光スポットとして足を運ぶ10〜20代が多いです。そのため韓国コスメやジェンダーレスコスメの打ち出しに対しての反応が非常に良いです。来店客の4割が男性というのも他店より多いですし、カップルの来店も多いです。当初、6階のみでコスメ売り場を展開していましたが、昨年9月からは5階の雑貨フロア「プラスク グッズ」にコームなど美容ツール系、韓国コスメ、フレグランスを扱うコスメゾーンを拡充しています。
WWD:「渋谷を大人も楽しめる街へ」のコンセプトは今後どうなる?
水田:「プラスク」はそういう状況ですが、渋谷ヒカリエ シンクスはもう一回り上の30代、40代の仕事帰りのお客さまが多く来店しています。両方に出店しているブランドが複数ありますが、両方でしっかり売り上げを取れているところを見ると、結果的に良い棲み分けができていると思います。
WWD:注目しているブランドは?
水田:資生堂の自然派コスメ「バウム(BAUM)」。最初の出店は伊勢丹新宿本店メンズ館で、渋谷スクランブルスクエア「プラスク ビューティー」は2店舗目。カウンターを作った店舗としては初だったかと思います。サステナブルな商品設計やデザインなど館の客層にマッチしているし、ジェンダーレスコスメやメンズコスメは売り上げの規模としてはまだ小さいけれど今後を考えるとどんどん取り組んでいかなければいけないところだと思います。
WWD:今後やりたいことは?
水田:これまでも藤井明子さんや三上大進さんなどをゲストに招いたイベントを行いましたが、お客さまを集められるインフルエンサーを呼んで大型イベントを仕掛けていきたいですね。また、「バウム」でハンドマッサージの体験を行いましたが、本格的にタッチアップができるようになったので体験のイベントも増やしていきたい。コスメはイベントなど仕込んだ施策に対してお客さまの反応が分かりやすく返ってくるのが醍醐味。わくわく感や高揚感を伝えやすいですし、施策が跳ねた時は行列ができるなどの反響があるのでやりがいがあります。