ファッション

バロック村井社長が語る 新生「ザ シェルター トーキョー」の価値、原宿のこれから

 バロックジャパンリミテッドは、東京・原宿の旗艦店「ザ シェルター トーキョー(THE SHEL’TTER TOKYO以下、シェルター)」を3月3日にリニューアルオープンした。

 コロナ禍で失ったにぎわいを取り戻しつつあり、海外観光客の本格的な復活も期待される表参道・原宿エリア。リアル店舗に求められる役割も大きく変化する中、ラフォーレ原宿などと共に神宮前交差点に立つ「シェルター」は、どのような店舗に生まれ変わったのか。村井博之社長に改装の狙いを聞いた。

WWD:オープンまでの経緯は?

村井博之社長(以下、村井):当初は東京五輪の開催に合わせ、2020年7月にリニューアルオープンする予定だったが、コロナ禍によりおよそ2年半後ろ倒しになった。オリンピックを意識してスポーツやアスレジャーに絡めた商品、中国最大規模のスポーツブランドとのコラボレーションなどを仕込んでいたが、全て白紙にして再出発した。ここまでこぎつけられたことに、まずはほっとしている。

WWD:改装方針をどう転換したのか。

村井:コロナ禍を経てECやSNSなどデジタル上でモノを売り買いしたり、発信したりすることが当たり前になった。店舗は、「リアルでしかできない体験」「わざわざ足を運んでも手に入れたい価値」を研ぎ澄ませる必要がある。また業界を見渡しても、自社ブランドのみをセレクトした大型店に成功事例は少ない。これまでの枠組みにとらわれず、感度・鮮度の高い仕入れ商品やイベントでお客さまを呼び込まなくてはならない。

 改装以前に「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY以下、アズール)」を展開していた1階は、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」発のD2Cブランドやユーチューバー、ティックトッカーなどがプロデュースする商品を展開する。地下1階では、「マウジー(MOUSSY)」の中でも「シェルター」でしか手に入らないスーベニアライン“クラブ マウジー 303(CLUB MOUSSY 303)”を販売する。同階にはアートギャラリーのほか収録スタジオを設置し、店舗外壁の巨大なスクリーンを通じて、収録番組を街ゆく人々にも中継する。

WWD:単店での売上高にはこだわらない?

村井:広々とした店舗に商品ラックをぎっしりと並べ、売り場としての効率性を追いかけるのは時代遅れだ。陳列商品の数や面積でみれば、リニューアル前よりも減らした。ただ、中国をはじめとしたインバウンドのお客さまが増えれば、(売り上げなどの)数字面もついてくるはずだと考えている。

カリスマ販売員の接客を世界へ

WWD:2階では「アズール」を派生ラインを含めトータルタインアップする。

村井:ブランドは今年で15周年。これを契機に、改めてブランドの方向性をしっかり定めていく。地方消費が落ち込む中で、地方・郊外のSCに出店する「アズール」は、より優位性を高めなければ選ばれない。今後は日本人の体型にあったデザインやサイジング、百貨店ブランドなどにも負けない着心地や品質を実現し、海外のファストファッションと差別化する。デザイン性を高めた“プラス(PLUS)”や大人向けを意識した“クリー コンフォルト(CLIE CONFORTO)”などの派生ラインも、そういった考えに基づくものだ。

 1階に都内初のショップインショップを構えた、松本恵奈がキュレーションする「スタイルミキサー(STYLE MIXER)」はいいお手本になる。「アズール」と「マウジー」の中間程度の価格帯ながら程よいモード感でバランスがいい。既存店舗はどこも絶好調だ。店舗は郊外型SCが中心だが、都心でどの程度戦えるか試してみたい。「シェルター」はその実験にもなるだろう。

WWD:インバウンドの復活への期待値は。

村井:半年もすれば、原宿の街の様子はガラリと変わっているはずだ。来店客における海外観光客比率は、コロナ前には20%を超えていたが、(改装前の)旧正月の時期にはそれに近い数字まで戻ってきていた。これから中国のお客さまも戻ってくることを加味すれば、さらなる押し上げ効果が期待できる。

 店舗の役割は変わっても、当社の財産がカリスマ販売員をはじめとした“人”であることは変わらない。「シェルター」のオープンからしばらくは、当社が誇るカリスマ販売員を結集させ、世界中のお客さまに最高の接客を体験していただく。中国には「マウジー」をはじめとする300以上のリアル店舗があり、「シェルター」のオープンを大々的に宣伝する。東京に来ていただいたからには、一度は必ず立ち寄りたくなる場所を作っていく。

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