ファッション

アダストリアが最大ブランド「グローバルワーク」で新業態 「ユニクロ」「無印良品」とガチンコ勝負

 アダストリアは今春、同社最大のブランドである「グローバルワーク(GLOBAL WORK以下、既存業態)」から派生した新業態として、20〜40代のファミリー層を主対象とした「グローバルワーク・スマイルシードストア(GLOBAL WORK SMILE SEED STORE以下、新業態)」を立ち上げる。コロナ禍以降定着した地元消費、足元消費といった消費行動に対応すべく、「お客さまにとってより身近な立地に出店する」と太田訓アダストリア執行役員グローバルワーク営業本部長。地域密着型ショッピングセンター(NSC)やGMS(総合スーパー)、ロードサイド独立店舗など、アダストリアとして従来出店してこなかった立地を想定しており、「今後5年で150店舗を目指す」。売り上げ目標は非公開。

 3月17日に、東京・八王子の商業施設イーアス高尾に、24日に千葉・船橋のイオンモール船橋に出店。今春はこれら2店以外にも出店予定で、実店舗に先駆けて自社EC「ドットエスティ(.ST)」では15日に販売を開始する。実店舗の想定売り場面積は約330平方メートル。

 既存業態はお出かけ需要などオンシーン向け商品を強みとするが、新業態ではオフシーンに特化したベーシックな日常着をそろえる。商品はウィメンズ55%、メンズ30%、キッズ15%で構成し、既存業態に対しソックス(税込330円)やパック入りの肌着(1100円)、ブラカップ付きキャミソール(1980円)などを拡大。ルームウエア類も充実する。自社内に生産機能を持って商社を通さず生産できる背景や、アダストリアとして近年強化しているオリジナル素材の開発力を生かし、質を追求した商品を値頃感のある価格で提供。価格は既存業態に対し7掛けで、アウターはシャツが1790〜2970円、ボトムスは1980〜3960円。

セミセルフ式販売で「接客は極力行わない」

 店舗運営は「接客を極力行わない」セミセルフ式販売を基本とし、1店舗あたりのスタッフは社員2人とパート、アルバイト数人とする。「既存業態では売上規模によっては社員が5〜6人というケースもある。社員2人というのは既存業態ではミニマム。全商品にPOPをつけて接客を必要とする場面を減らし、陳列も素材群ごとに行って分かりやすさを追求する。レジカウンター、試着室、ストックルームの導線も効率に配慮した。商品の品出しも、ストックルームではなくレジでできるようにしている」。これにより、年々深刻化している販売員の採用難にも対応する。

 既存業態は2月末で国内205店、海外13店を運営している。新業態はアダストリアとしては新しい立地環境への挑戦となるが、同じ立地には「ユニクロ(UNIQLO)」「無印良品」「ファッションセンターしまむら」「ハニーズ(HONEY’S)」といった強力なライバルがひしめく。ベーシックな日常着という新業態のコンセプトは、中でも「ユニクロ」「無印良品」と重なる部分は大きい。「(それら2ブランドはあらゆる世代を対象にしているが)新業態は20〜40代を主対象に、ベーシックウエアであってもシルエットなどでファッション性を追求していく」点が差別化ポイントだ。

 そうは言っても、「ユニクロ」もシーズンごとにシルエットや仕様、素材などを見直して定番品を細かくアップデートしているし、今まさに衣料品改革真っ最中の「無印良品」も、定番品の基本パターンの見直しや既存のブランドイメージに捕われない商品開発に力を入れている。競合にはない“らしさ”の追求が問われるが、その点では会員数1500万人に育った「ドットエスティ」のデータを生かしたMDが武器になりそうだ。「『ユニクロ』は国内だけでも800店ある。(既存業態と新業態を合わせた『グローバルワーク』として)まだまだ出店余地はある」と期待する。

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