ファッション

東京最後の「ヨーク」やホラーな「テンダーパーソン」、格闘ゲーム風プレゼンまで 東コレ全ショーを総力リポート!3日目

 3月13日に2023-24年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が開幕しました。18日までの6日間で、全58ブランドがコレクションを披露します。ここでは、取材チームの記者2人を中心に、全43ブランドのファッションショーをリポート。3日目は、苦しみと向き合った渾身の「テンダーパーソン(TENDER PERSON)」や、最後の東京と決めた「ヨーク(YOKE)」、レトロな格ゲー風プレゼンの「メゾン・ジー・シモーヌ(MAISON J. SIMONE)」まで、盛りだくさんの8ブランドです。

3月15日(水)
12:00「テンダーパーソン」

 3日目は「テンダーパーソン(TENDER PERSON)」でスタート。1994年生まれのビアンカ=デザイナーとヤシゲ・ユウト=デザイナーが、文化服装学院在学中の2014年に立ち上げたブランドで、過去に2度ショーを行っており、東コレではこれが初。「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞により、渾身のショーを実現しました。今シーズンは明るい気持ちだけでなく、ものづくりに伴う苦しみや、私生活での厳しい経験と向き合い、ホラーなムードを込めたストリートスタイルを披露。テーラードジャケットの肘などにはプロテクターをあしらい、過去の辛い経験をプロテクティブするようなムードを感じます。一方で、フランケンシュタインやピエロなどのキャッチーなグラフィックや、レインボーカラーのクロシェ編みといった明るいモチーフもありました。シグネチャーの炎のモチーフは、ジャケットの裾やパンツのウエストのカッティング、赤から黄色へと移り変わるカラーグラデーション、腕周りに重ねた生地のシェイプなど、多様なクリエイションに落とし込み、ダークな世界観の中で際立ちます。ショー後、涙をこらえて言葉を探すヤシゲ=デザイナーと、明るい笑顔のビアンカ=デザイナーの対照的な姿を見て、素敵なデュオだなと思いました。(美濃島)

13:00「ヨウヘイ オオノ」

 「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」はファッションとデザインの祭典「東京クリエイティブサロン2023」との取り組みで、プレゼンテーション形式でコレクションを発表。会場には、大野陽平デザイナーが制作したシュールなオブジェやユニークな置物などを陳列します。これは大野デザイナーにとって「平凡だが、どこか愛おしいもの」なのだそう。今季はそういった自身の生活観や人生観を見つめてコレクションを制作し、素朴な「どこにでもありそうな古着」から着想しています。例えば、よくあるチルデンニットは「ヨウヘイ オオノ」のアイコニックなマントシルエットに仕立てたり、古着屋に必ずあるバンドTはそのままTシャツ型のバッグになっていたり。素朴でチープなものから着想を得ても、しっかりとインパクトのある、洗練された衣服になっています。またブランド初のシューズも登場。シューズブランド「セレナテラ(SELLENATELA)」の榎本郁栄デザイナーとともに作ったブーツやパンプス、フラットの3型で、履き心地も意識したのだとか。前シーズンの国立科学博物館で見せた壮大なショーから方向転換し、よりパーソナルで大野デザイナーの等身大を反映した今季のコレクションに、心地よさを感じました。(大杉)

14:00「メゾン・ジー・シモーヌ」

 「メゾン・ジー・シモーヌ(MAISON J. SIMONE)」は、セントラル・セント・マーチンズ(CENTRAL SAINT MARTINS)を卒業し、「ジャックムス(JACQUEMUS)」「ザラ(ZARA)」などでスタイリストを務めたジュード・フェラーリ(Jude Ferrari)デザイナーが2019年に立ち上げたウィメンズブランドです。今季は、スーパーヒーローとヴィランをミックスしたコンセプトで、パワーショルダーのボディースーツをはじめ、女性の強さを引き立たせるコレクション。アメコミのグラフィックやビタミンカラーのマーブル模様など、色と柄もインパクト抜群です。プレゼンではコンセプトを発展させて、格闘ゲームのような世界観を演出。ピコピコ音楽を背に、モデルたちがゲームキャラになりきってファイティングポーズをとったり、コレクションとリンクしたオリジナルの格ゲーをプレーできたりと、非常にユニークでした。なお、同僚との格ゲー対決は惜敗しました。(美濃島)

15:00「ヘオース」

 2021年デビューの「ヘオース(HEOS)」が初のショーを披露。手掛けるのは、日本の大手アパレルやコレクションブランドで経験を積んだ中国出身の暁川翔真デザイナーです。今季は母国の環境汚染などに思いをはせ、自然界の葬式をイメージしたそう。黒や赤、白を使ったダークな印象の服が続きますが、素材は麻やシルク、ウールなどで仕立てており、軽やかです。ランウエイを照らした光を紫にしたのは、“縁起のいいことの前触れ”を意味する“紫気東来”という言葉からヒントを得たそう。終わりがあれば、新しい始まりが待っている。そんな希望を込めていたと知り、ミステリアスに感じたショーが一気にポジティブな印象に変わりました。(大杉)

16:00「クイーン アンド ジャック」

 東コレ初参加の「クイーン アンド ジャック(QUEEN&JACK)」は、上野の国立博物館・表慶館でショーを行いました。同ブランドは“ラグジュアリーな制服“をコンセプトに、2022年春夏シーズンに“コスチュームライン”を始動。サブカル的な人気のある日本の学生服を、イタリア産の素材と職人技でアレンジしたアイテムを提案しています。これまではコスプレ用としてのニーズが高く、顧客は中国が中心。そのコスチュームラインから、よりモードなクリエイションに挑戦するため、小池優子デザイナーを起用して初のコレクションラインを制作しました。序盤は、ベーシックなセットアップにサスペンタースカートを巻き付けたスタイルなど、アイテムの組み合わせで新鮮味を演出。後半は、セーラー服を再解釈してレース付きのケープコートにしたり、ブレザーをカッティングとパターンでエッジを効かせたり、ダウンにスワロフスキーをぜいたくにあしらったりと、クリエイションのギアが徐々に上がっていく、見応えのあるショーでした。(美濃島)

18:00「アタッチメント」「ヴェイン」

 「アタッチメント(ATTACHMENT)」と「ヴェイン(VEIN)」が、2回目となる合同ショーを東京・新国立競技場で開催しました。前半の「ヴェイン」は黒のみで表現する画家ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages)と、光を取り込む彫刻家アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)に着想。ディテールやシェイプでバランスの変化を加えながら、両アーティストの作品のエッセンスを色彩やプリントで表現します。後半の「アタッチメント」は、ビジュアルアーティストのロニ・ホーン(Roni Horn)が思い描く“人と自然の距離感”をコレクションに取り込み、ニュアンスカラーのミニマルなテーラリングが連続。榎本光希デザイナーが手掛ける二つのブランドのコレクションを、一つのランウエイで包括的に行き来させることで、広いスケールのクリエイションを披露しました。(大塚)

19:00「ヴィヴィアーノ」

 中国出身で東京を拠点にするデザイナーのヴィヴィアーノ・スーによる「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」は、ファッションコンペ「東京ファッションアワード」を受賞し、約6年ぶりとなるショーを東京で開催しました。毎シーズン花の鮮やかな色彩にヒントを得ながら、ダイナミックなドレスに定評のあるブランドです。今季は“Aspects of Love”をテーマに、コレクションを通して愛の形を表現。ピンクのランウエイには、ピンクとレッドの2色のチュールをミックスしたドレスや、ハート型のキルティングコートなどが登場しました。またデザイナーは祖母に愛されて育ったそうで、イギリスのおばあちゃんの家にありそうなゴブラン織の家具から着想した花柄のドレスも印象的。ボリュームのあるドレスには、バラグラバやラバーブーツを合わせて、甘い要素だけではない、力強さも感じさせます。ドラマチックで華やかなショーでした。(大杉)

21:00「ヨーク」

 海外進出を目指すため「最後の東コレ」と決めた「ヨーク」のショーは、国際フォーラムが舞台。パリへと続く“滑走路”をイメージした演出で、広大なスペースに巨大セットを組んだ。抽象画家ベン・ニコルソン(Ben Nicholson)の作品に着想し、“重ねる”要素を随所に盛り込んだ。色彩の重なりや、線とグラフィックの重なり、年代の異なるビンテージデニムの重なりなど、デザインや素材をクロスオーバーさせて日常着に心地いい違和感を加えた。アイテム単品の強さを意識した新たなデザインアプローチでブランドの世界観を拡張させ、海外への扉を開く。(大塚)

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