連載 エディターズレター:VIEWS ON WWD U.S.

10年で売上高が6倍に成長したラグジュアリーブランドは?【エディターズレター:VIEWS ON WWD U.S.】

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※この記事は2023年03月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

 どうしても話題の多い「グッチ」「バレンシアガ」「ボッテガ・ヴェネタ」に目が向いてしまいがちなケリングですが、一番注目すべきは「サンローラン」なのでは?と思う今日この頃です。

 こちらの記事でも個人的に注目したのは、「サンローラン」の伸び率です。見事に「グッチ」と「バレンシアガ」に話題を持っていかれ、1行しか言及されていませんが、明らかに優秀な業績です。

 

 「サンローラン」って、あまり前年を落としている印象がないんですよね。気になって過去5年間の実績を遡ると、さすがにパンデミックの2020年は前年を割りましたが、21年はその落ち込みを跳ね返す伸びを見せていて、22年の売上高は17年の倍以上に拡大しています。

 アンソニー・ヴァカレロがエディ・スリマンから引き継いだのが16年春。“引き継ぎ年”の16年も翌17年も2ケタ成長を続けていますから、20年を除けば久しく2ケタ成長を続けています。ちなみにヴァカレロが引き継いだ当時は、「ボッテガ・ヴェネタ」の方が売上高が上でした。

 さらに気になるのが、近年コレクションを取材した担当者に「ベストコレは?」と聞くと、ほぼ「サンローラン」が挙がるんです。メンズもウィメンズも。

 特にトレンドがストリートから“キレイな服”に移るとなると俄然強いです。「シャネル」や「ディオール」もそうですが、創業者がデザイナーとしてレジェンドだと、アーカイブは豊富だし、ブランドとしての“正統性”や“王道感”もある。もしオートクチュールが復活したりしたら、喜んで資産つぎ込む富裕層は多いと思いますし、業界も盛り上がります。ケリングには是非ここに投資してほしい!

 でも、ラグジュアリー売り上げで大盛り上がりの日本の百貨店の高伸長率ブランドでは、ほとんど挙がって来ないんですよね。ここでも話題は「ボッテガ・ヴェネタ」。決算資料には22年は日本は2ケタ増と書いてあるのですが、日本は他のブランドも軒並み2ケタ増なので、目立たないということでしょうか。

 派手さやニュース性に頼らず、持続的に成長する「サンローラン」の秘訣は何か。CEOに井口記者がグイグイ切り込んでおりますが、驚くようなことはしてなさそうですね……。でも、ブランドのDNAを守り、適切なタイミングで適切な戦略を実行することこそ、一番難しかったりします。この10年で6倍成長でしたか……。

 それでもまだまだ「グッチ」の3分の1の規模です。伸び代は十分大きいです。

VIEWS ON WWD US:「WWDJAPAN」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙です。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。そんな米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説します。

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