3月13日に2023-24年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が開幕しました。18日までの6日間で、全58ブランドがコレクションを披露します。ここでは、取材チームの記者2人を中心に、全43ブランドのファッションショーをリポート。最終日は、渋谷にNYを再現し、デニムへの愛とさらなる可能性を示した「タナカ(TANAKA)」、風雨の中ユニークなショーで沸かせた「ドコモ × リコール(DOCOMO × REQUAL≡)」、新境地を見せた大トリ「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」など、6ブランドを紹介します。
13:00 「サヤカアサノ」「アキ マスダ」
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坂部三樹郎デザイナーが開講するファッションスクール「me」で学ぶ「サヤカアサノ(SAYAKAASANO)」「アキ マスダ(AKI MASUDA)」が合同ショーを行いました。会場は、渋谷ストリームの稲荷橋広場です。「サヤカアサノ」の今季のキーワードは“いとおしさ”。タオルケットをそのまままとったようなドレスや、寝起きのように乱れたパジャマルック、脱ぎかけのジャージーやロンTなどで、ルーズな雰囲気に感じるいとおしさを表現しました。「アキ マスダ」は、モチーフの面白さが際立ちます。豹をストレートに表現したボディースーツや、流れ星をかたどったボリューミーなドレス、植物の無数にツタをはわせたワンピースなどを披露しました。生憎の雨模様でショーは20分ほど遅れましたが、最後にあいさつしたデザイナー2人の表情は晴れやかでした。(美濃島)
13:30 「ドコモ × リコール」
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PHOTO:KO TSUCHIYA
PHOTO:KO TSUCHIYA
PHOTO:KO TSUCHIYA
土居哲也デザイナーが手掛ける「リコール(REQUAL≡)」の会場は、直前の「アキ マスダ / サヤカアサノ」と同様の渋谷ストリーム稲荷橋広場。雨と強風の野外(待ち時間含め、1時間以上立ちっぱなし……)で30分押しのショーに、フォトグラファーブースでは、「早くして!」「寒いよー」といろいろな言語で悲鳴が上がっていました。雨の日の屋外ショーは、室内でのプランBがあるといいなと純粋に思いました。観客のわれわれも東コレ最終日の疲労と寒さで心身共にピークでしたが、今季も「リコール」らしいウィットに富んだショーが見れました。今日は「リコール」の最新コレクションと、ドコモとの協業による「TOKYO ARUKI SMARTPHONE COLLECTION」を披露するショーでした。スマートフォンを見ながら歩くモデルたちの間を、スマホのアイコンや絵文字などをモチーフにしたルックのモデルたちが通り抜けるという演出です。吹き出しのようなクッションを重ねたドレスを着たのは、Awesome City Club(オーサムシティクラブ)のボーカルのPORIN!社会問題となっている歩きスマホへの注意喚起のメッセージを伝えました。ショーは、歩きスマホが問題視される街中を舞台にしたい、というこだわりがあったそう。「リコール」のメインコレクションでは、中綿を入れたネクタイ風マフラーや毛布を使ったコート、スカートなどがキャッチー。取材仲間たちと寒さに耐えた時間と、ユニークな演出を合わせて、記憶に残るショーになりました。(大杉)
15:00「ヘヴン タヌディレージャ アントワープ」
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「ヘヴン タヌディレージャ アントワープ(HEAVEN TANUDIREDJA ANTWERP)」は、インドネシア・バリを拠点とするヘヴン・タヌディレージャ(Heaven Tanudiredja)=デザイナーによるブランド。2018年に東コレに参加し、5年ぶりに戻ってきました。タヌディレージャ=デザイナーはジョン・ガリアーノ(John Galliano)の下で舞台スタッフを務めた経験もあり、アクセサリーも得意としています。今季は体の神経を伝達するニューロンに着想し、丸くトゲトゲしたニューロンの造形で、モノトーンのミニマルなエレガンススタイルをアレンジしました。ニューロンをネックレスとして採用したり、大量に複製してドレスにあしらったり、スパンコールを敷き詰めた生地のザラついた質感に発展させたりと、多彩な手法でコレクションに浸透させます。コレクションをバリで発表したこともあったそうですが、「東京の方が自由なムードが漂っている。僕にとってのベストは東京だ」と戻ってきた理由を語りました。(美濃島)
18:00 「ミューラル」
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PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
村松祐輔と関口愛弓デザイナーの「ミューラル(MURRAL)」が、2019年春夏シーズン以来となる東コレ参加。ブランド設立から10周年となる前シーズンのショーが開催1週間前に迫ったとき、「ああ、この瞬間が終わってしまうのか」と感じた儚さを、23-24年秋冬シーズンのテーマに設定しました。儚さの象徴として、肌に触れると消えてしまう雪をイメージ。2人で訪れた、富良野の雪景色をプリントしたドレスや、粉雪のようなニットのラメ、グローブやクロッグには雪原を歩いた後のようなパールがつきます。ベージュやアイボリーのウールを4層に重ねてニードルパンチしたオリジナル素材は、まるで抽象画のように美しいグラデーションで、優しさと儚さがじわりとにじみ出します。縦長シルエットを意識したエレガントなテーラリングやドレスを主役に、得意の刺しゅうや装飾で味付け。前半はオールブラックのシックなドレスとテーラリングで、中盤にかけて徐々にパステルカラーが加わっていき、最後には何色にも染まるホワイト一色へと変化します。10年で培ったロマンティックな世界観はそのままに、色味やディテールの引き算で、ストーリー性は一層鋭く深まったように感じました。村松デザイナーは「10周年を終え、今季は11年目というより、新たな1年目という気持ち」と語り、新生「ミューラル」は「“外柔内剛”の女性像を目指したい」と、熱く、熱くスピーチを続けました。この四字熟語は、外見は柔らかく、心がしっかりしていることを表します。今シーズンは、まさに“外柔内剛”という言葉がすっとなじむコレクション。大人になった「ミューラル」のクリエイションは、まだまだ進化しそうです。(大塚)
19:00 「タナカ」
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ユニクロのデザインチーム出身のタナカサヨリデザイナーが手掛けるブランド「タナカ(TANAKA)」が、「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」選出を受けて初のランウエイショーを行いました。会場に入ると、聞こえてくるのは雑多な街の生活音。ジャズピアニストが着席して演奏を始めると、碁盤の目状の会場をさまざまな人種、年齢のモデルがずんずんと行き交います。そう、ここはタナカさんが拠点とするニューヨーク。アイコンであるデニムアイテムにはストリートアートクルーFAILEの作品がパワフルに載り、エレガントなサテンのブラウスも色とりどりのモザイクプリントが鮮やか。“これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ服”というコンセプトのもと、古着のリメイクも取り入れました。例えばベースボールジャケットは、肩が少し張り出すような強いシルエットになっている点が今っぽい。平和を象徴するハトの染め柄や、デニムに貼り付けたドライフラワーのモチーフなどで社会へのメッセージも感じさせつつ、エネルギッシュに前向きなパワーに昇華していくところが頼もしい。「デニムだけのブランドとは言わせない!」という意気込みも感じさせる、迫力あるショーでした。(五十君)
20:00 「ケイスケヨシダ」
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吉田圭佑デザイナーによる「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」は、最終日のトリに相応しい力強いショーで、今季の東コレを締めくくってくれました。会場は、デザインとアートの祭典「東京クリエイティブサロン2023(TOKYO CREATIVE SALON)」との協業で、渋谷駅西口タクシープールの地下で開催。ファーストルックは、シルバーのボタンが光るブラックのジャケットのセットアップ。モデルは、着想源の一人だった、ブランドのファンである17歳の少年を起用していました。少年の、修道女のような気品溢れる人物像がヒントになったそうです。続く、マキシ丈のコートに白シャツのルックは、エレガンスでストイックな雰囲気。そしてラストルックには、水原希子が登場!オールブラックのマキシコートをクールに着こなしていました。今季のスタイリングは、パリを拠点にするスタイリスト、レオポルド・デュシュミン(Leopold Duchemin)が担当しており、全体を通してキャッチーさがあり、ブランドのステージをワンランクアップさせたように感じました。(大杉)