「WWDJAPAN」が半年に一度、全国の百貨店や商業施設、注目ブランドに商況や売れているブランド・アイテムなどを尋ねる「ビジネスリポート」の通り、ラグジュアリー・ブランドの躍進が続いている。一方の国内勢などは、ラグジュアリー・ブランドよりも手頃な価格の商品を販売しているにも関わらず、コロナ前の水準に戻せないブランドも。なぜ、ラグジュアリーだけがこんなに好調なのか?ラグジュアリーの取材歴が長いベテラン記者2人が分析する。前編は、コチラから。
向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクター(以下、向):産業革命前に創業したブランドでは、手仕事が当たり前というかデフォルトで、みんな脈々、着々と続けています。大量生産のラグジュアリーってあんまり聞かないですよね?ラグジュアリーにとって、手仕事、クラフツマンシップは絶対に欠かせない要素です。そしてこれも歴史同様、一朝一夕で「明日から始めよう」と思ってできることではありません。
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):そうですね。クラフツマンシップで言えば、最近はやはり「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」です。クリエイティブ・ディレクターのマチュー・ブレイジーは、「このブランドは、1人のデザイナーではなく、複数の職人から生まれたブランド」と捉え、現職に就任して最初に全ての職人と直接話をしたそうです。それがデザイナーと職人の良好な関係性に繋がり、今の快進撃が始まっています。職人との関係性が悪化して同職を辞したと言われる前任のダニエル・リー(Daniel Lee)とは対照的なのかもしれません。
一方のダニエルも、新天地の「バーバリー(BURBERRY)」は母国のブランドだから、前職よりも良好なデザインとクラフツマンシップの関係性に期待したいですね。
向:特にイタリアのレザーと、パリのオートクチュールは、業界を代表する手仕事です。
村上:でも歴史同様、消費者はそこまでクラフツマンシップを感じ取って商品を選んでいるのでしょうか?
向:「エルメス(HERMES)」を筆頭にラグジュアリー・ブランドは職人を連れて、日本で展覧会を開きますよね?その現場を取材すると、日本人がすごく熱心に質問している姿を見かけます。職人に「何時間働いているんですか?」とか、「やりがいはなんですか?」などと話しかけている。日本人は、職人に対する関心が強い国民と聞きます。
村上:なるほど。関心があるから、製品から何かしらを感じ取っている。
向:と思います。特にラグジュアリー・ブランドのグローバルビジネスが始まって30〜40年の今は、新たなタームに入っていると思います。あらためて職人の手仕事にもう一回フォーカスしたり、これをあらたな価値に変えていこうという挑戦が始まったりしています。
村上:なるほど。それを2023-24年秋冬ミラノ・コレクションでは強く感じたんですよね。
向:そうですね。一度は低迷したミラノのブランドが再び「元気だな」と思って。手仕事を価値に変えようと学生から国までが動いています。イタリアのラグジュアリー・ブランドはフランスのメゾンのようなオートクチュールの歴史がありません。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」以外は、モノ作りや職人、産地にフォーカスすべし、と自覚しているのでしょう。
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