アディダス(ADIDAS)の2022年12月通期決算は、売上高が前期比6.0%増の225億1100万ユーロ(約3兆2331億円)、営業利益は同66.3%減の6億6900万ユーロ(約960億円)、純利益は同70.4%減の6億3800万ユーロ(約916億円)だった。なお、継続事業の純利益は同82.9%減の2億5400万ユーロ(約 359億円)だった。
22年1〜9月の売り上げは好調に推移していたものの、カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)とのパートナーシップ解消以降の第4四半期の売上高が、前年同期比1.3%増(現地通貨ベースでは1%減)の52億500万ユーロ(約7473億円)となった。同社はこれについて、「『イージー(YEEZY)』事業終了に伴うマイナスの影響が約6億ユーロ(約861億円)あったため」と説明した。
地域別で見ると、同社が新規顧客獲得のための主要マーケットとして位置づける中国では、コロナ禍のロックダウンの影響で、通期の売上高は前期比30.8%減の31億7900万ユーロ(約4563億円)と大きく落ち込んだ。
中国を除くアジア太平洋地域は同2.8%増の22億4100万ユーロ(約3217億円)、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)は10.1%増の85億5000万ユーロ(約1兆2273億円)、北米は25.3%増の63億9800万ユーロ(約9190億円)、中南米は45.9%増の21億1000万ユーロ(約3030億円)と好調だった。
今年1月に現職に就任した元プーマ(PUMA)のビョルン・グルデン(Bjorn Gulden)最高経営責任者(CEO)にとっては厳しい船出となった。グルデンCEOは、「23年は今後のビジネスの基盤を築くための転換期になるだろう。成功するために必要な材料はそろっているが、商品、消費者、小売パートナー、そしてアスリートという私たちのコアに今一度焦点を戻す必要がある」とコメントした。
さまざまな憶測が飛び交う「イージー」関連商品の在庫問題について、今後の方針は未定だという。在庫が販売できなかった場合には12億ユーロ(約1723億円)の損失となる可能性もある。グルデンCEOは、「私が来る以前の話だが、(イェとの事柄が発生した時点で)多くの商品が製造ラインに乗った状態だった。もし製造を止めれば、工場の1万人の従業員が仕事を失っていただろう。そのためアジアからのオーダーは全て履行した」と語った。
在庫処理の方法については、廃棄するか、シリアとトルコの被災地へ寄付するか、リサイクルするかなど、数え切れないほどの提案があったという。グルデンCEOは、販売する場合にはそのままの状態で売られるべきであり、異なる商品として扱うのは誠実ではないと考えている。また、イェとのパートナーシップは解消したものの、商品が売れればイェは当初の契約に沿ってロイヤリティーを受け取ることになる。現状ではどの選択肢にも課題はあるが、より被害の少ない方法を検討していくという。「正直、この商品で利益を生み出すことはないだろう。むしろ、選択によっては多くのコストがかかるだろう」とグルデンCEO。
もう一つの課題である中国市場については、プーマでの実績を元に、現地の経営陣に裁量権を与え、ローカライズした商品の企画や生産のリードタイムの短縮化を目指すという。
業績回復に向けては、好調のパフォーマンスカテゴリーが鍵になると見ている。ライフスタイルカテゴリーの22年の売上高が前期比5%減だったのに対し、パフォーマンスカテゴリーは同19%増だった。まずプロから高価なテクニカル商品に対する信頼を得て、それをもとに一般商品で稼いでいくのが「レシピだ」とグルデンCEOは説明する。同氏はまた、「イージー」に置き換わる商品の開発は難しいが、“サンバ(Samba)”や“ガゼル(Gazelle)”、“スペツィアル(Spezial)”などの定番商品には伸び代を感じていると述べた。