時計界屈指のデザイナーとされるジェラルド・ジェンタ(Gerald Genta)の名前を冠した同名のブランドが復活する。手掛けるのは、スイス・ジュネーブにある「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のウオッチ・メイキング・アトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン(La Fabrique de Temps)」。このアトリエのトップを務める伝説の時計師ミシェル・ナバス(Michel Navas)時計アトリエ最高責任者らが、ジェンタの妻でビジネスパートナーでもあったエヴリン・ジェンタ(Evelyne Genta)の協力も得ながら、ブランドを再興する。ジェンタが1970〜90年代に数多く発表した、複雑機構の時計をインスピレーション源とする高級時計を今後発表するようだ。
ジェラルド・ジェンタは1931年、スイス・ジュネーブ生まれ。「オメガ(OMEGA)」の“コンステレーション”や、「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の“ロイヤル オーク”、「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」の“ノーチラス”、「IWC」の“インヂュニア”、「ブルガリ(BVLGARI)」の“ローマ”など、現在も大人気のモデルのデザインを手掛けてきた先駆けであり、現段階では最高の時計デザイナーだ。
彼が立ち上げた自身の名前を冠したブランドは、「オーデマ ピゲ」の“ロイヤル オーク”や「ブルガリ」の“ローマ”のように、円形と正多角形を組み合わせたデザインが特徴。日本のクォーツ時計とは異なる魅力を備えるべく複雑機構に特化し、1980年にはスケルトンのミニッツリピーター、94年にはグランドソヌリ(定時に時を音で知らせる機構および、この機構を搭載した時計)で注目を集めた。同時に84年にはディズニーとコラボレーションするなど、遊び心を忘れず、既成概念を打破することも信条としていた。当時は他ブランドのためにムーブメントも開発しており、「カルティエ(CARTIER)」の“パシャ”にはミニッツリピーターとパーペチュアル・カレンダーの機構を搭載したムーブメントを提供。最終的には仕掛け時計のオートマタから、エロティックなジュエリーウオッチまで、その才能をあらゆる時計で発揮したオールラウンダーだ。2011年、80歳でこの世を去っている。
この「ジェラルド・ジェンタ」ブランドは1996年、シンガポールを拠点とする時計専門店ネットワークのアワーグラス(HOUR GLASS)が過半数株式を取得。2000年には「ブルガリ」が買い取り、時計を何本か発表したが、長らく休眠状態だった。
「ルイ・ヴィトン」のウオッチ・メイキング・アトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」は、妻のエヴリンに同アトリエが保有する未公開のデザインを含むアーカイブを開放。彼女の意見を踏まえながら、ミニッツリピーターやトゥールビヨンなどの複雑機構を搭載した時計を少量製造する。